大阪大学と神戸大学の研究グループは、肝がんを発症させる新たな仕組みを解明した。肝がんや大腸がんでは、Wnt(ウィント)シグナル経路が異常に活性化する症例が多い。今回の研究ではWntシグナルの異常と肝がんの関係を明らかにした。
大阪大学と神戸大学の研究グループは、肝がんを発症させる新たな仕組みを解明した。肝がんや大腸がんでは、Wnt(ウィント)シグナル経路が異常に活性化する症例が多い。今回の研究ではWntシグナルの異常と肝がんの関係を明らかにした。 研究グループは、Wntシグナルによって発現する遺伝子をさまざまながん種で比較しながら探索する手法を開発し、肝がん固有のがん発症因子「GREB1」を同定した。GREB1はこれまで、性ホルモンシグナルの異常から発生する乳がんや前立腺がんで発がんに関わっていることが分かっていたが、今回の研究で性ホルモンに依存しない肝がんにも関係することが分かった。 詳細な解析からは、Wntシグナルが異常に活性化すると、肝臓の成熟度を維持する際に重要な役割を果たす因子である「HNF4α」が、Wntシグナルと協調してGREB1の発現を促進することが分かった。さらに、発現したGREB1はHNF4αと協調し、肝がん細胞の増殖を促進するいう。HNF4αは、正常な肝臓らしさを保ち、がん化を抑制すると考えられていたが、GREB1と協調することで肝がんを発症させることが明らかになった。 研究成果は6月22日、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)誌にオンライン掲載された。Wntシグナルが活性化している肝がんは、免疫チェックポイント阻害剤が効きにくいことから、がん化の仕組みの解明と治療薬の開発が期待されている。今回の成果によって、新たな治療法の可能性が示されたとしている。(笹田)