SaaS型ERP「S/4HANA Cloud PE」やベストプラクティス、移行支援メソッド&ツールなどをまとめて提供
中堅中小企業の成長と変革を支援、「GROW with SAP」国内提供開始
2023年07月13日 07時00分更新
深刻さを増す人手不足、業務変革とデジタル化は「待ったなしの状態」
SAPジャパンでS/4HANA Cloud PE担当の事業部長を務める阿部洋介氏は、日本の中堅中小企業が直面する「人手不足」の課題から説明した。
中小企業庁の「中小企業白書」によると、中小企業の売上高はパンデミック前の水準を回復しつつあるが、それ以前からの課題である人手不足は深刻さを増している。雇用を増やす対応を取る企業もあるが、労働人口全体が減少している状況下において、新規雇用だけに頼るのは難しく、業務そのものの見直し、デジタル化による生産性向上といった対応が「待ったなしの状態」(阿部氏)になっている。
「実際に、限られた人員の中で現行業務と並行して変革に取り組まなければならない中堅中小企業のお客様からは、SAPに対しても変革支援の依頼をいただいている。また基幹業務システムの領域においても、従来のように多くの人員を割いて導入や保守運用を行っていくのではなく、限られた人員でより早く刷新し、簡単に運用し、深く活用したいという要望が出てきている」(阿部氏)
それを実現するためのオファリングがGROW with SAPだと、阿部氏は説明する。
GROW with SAPを構成する製品/サービスの中で、阿部氏は特に、クラウドERP移行のメソドロジーとツールを提供するSAP Activateを取り上げて紹介した。ここには、SAPがこれまで培ってきたSaaS型ERP導入と活用のノウハウが詰め込まれているという。
「この方法論とツールがあることで、中堅中小企業の限られた人数のIT担当者であっても、効率的なシステム導入と運用を実現することが可能になっている。現在は“Fit-to-Standard”という概念を提唱するベンダーが増えたが、合わせるべきStandardの内容の提供、その実現に向けた支援の度合いにはばらつきがある。SAPでは、SaaS型ERPに最適化した700超の業務プロセスをStandardとして公開しており、お客様はシステム導入の検討段階で、どのようなビジネスプロセスでシステムが動くのかを確認できるようになっている」(阿部氏)
さらにツールについても、たとえばSaaSの定期バージョンアップにおいて自社への影響範囲を確認するツール、テストの自動化ツールなどを用意しており、運用の省力化/省人化が可能だと説明した。「あるお客様ではIT担当者1名で、バージョンアップ後の影響確認とテストの作業を1~2週間で実施できるようになっているそうだ」(阿部氏)。
日本市場の展開においてはパートナーとの協業が重要になる。阿部氏は日本独自の取り組みとして、S/4HANA Cloud PEに特化したパートナーコミュニティを立ち上げており、パートナー間の情報交流もできる場を設けていること、SAPから製品や技術の情報だけでなく営業活動のノウハウを伝える勉強会を実施していることを紹介した。またグローバルで展開しているGROW with SAP認定パートナー制度についても、今年後半には国内で立ち上げる予定だとしている。
なお阿部氏は国内パートナーの拡大目標について、S/4HANA Cloud PEのパートナーは現在数十社だが「可能な限り短期間で2倍、3倍にしたいと考えている」と述べた。