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Sansanが決済領域に参入 月次決算の加速を目指す

法人カードの三重苦を解消する「Bill Oneビジネスカード」登場

2023年05月31日 10時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

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 2023年5月30日、Sansanはインボイス管理サービス「Bill One」の新サービス「Bill Oneビジネスカード」を発表した。Bill Oneは請求書の受領を代行してくれる、クラウドインボイス管理サービス。今回、新たに決済領域に参入することで、企業の経理業務をさらなる効率化を目指す。

月次処理の加速を目指すBillOne 3年で著しく成長

 インボイス管理サービスのBill Oneは2020年5月にリリースされ、コロナ化で急成長してきた。さらに現在でもその勢いは変わっていないという。

「コロナ禍における請求書の代理受領のニーズを受けた追い風かと思いましたが、コロナが落ち着きを見せつつある中でも、受注スピードは衰えず、今なお受注金額は過去最高記録を更新し続けています。リリースから3年間で、ARR(年次経常収益)は27億円、導入社数は1300社を超え、請求書の総請求金額は年間16兆円規模にまで到達しています」とSansan 代表取締役社長/CEO 寺田親弘氏は語る。

Sansan 代表取締役社長/CEO 寺田親弘氏

 現在、Bill Oneが目指しているのは、月次決算の加速。年次決算とは別に、経営管理に必要な毎月の決算のことで、いかに早く締められるかが、日本企業を強くするためには重要なことだという。

意外とアナログな業務課題が残る法人カード

 そんな中、近年増えてきているのが、法人カードの利用だ。コロナ禍以降、BtoB決済にもキャッシュレス化の波が押し寄せており、企業がクラウドサービスをクレジットカード決済で利用することも増えてきた。

 今回リリースする「Bill Oneビジネスカード」はBill Oneユーザーであれば無料でバーチャルカードとリアルカードを枚数の制限なく発行できる。バーチャルカードであれば、即時に利用を開始できるのが特徴だ。

「Bill Oneビジネスカード」はバーチャルカードとリアルカードの両方を用意

「企業間決済の手段としてもっとも多いのが請求書払いですが、 近年クレジットカードによる決済も急速に広まっています。法人カードは一見、請求書よりも処理が簡単に見えますが、実はアナログな業務課題が多く存在しており、月次決算の加速を阻害する要因となっています」とBill One Unit ゼネラルマネージャー 大西勝也氏は語る。

Bill One Unit ゼネラルマネージャー 大西勝也氏

 法人カードの業務フローとしては、まずカードを利用したい人は上長に購買申請をする。承認を受けたら、経理担当者にカードの利用を申請。経理担当者から承認が下りたら、管理者が利用者にカードを貸し出し、利用者はカードを利用する。利用後は経理担当者に領収書や請求書といった証憑を提出する。経理担当者は証憑とカード会社から発行される利用明細を照合し、事前の購買申請に沿ってカードが利用されてるということを確認する。その確認後にやっと会計処理が行なえるという流れになっている。

 課題は大きく3つあるという。1つ目が「アナログ業務」で、証憑の回収や目視での確認といった業務が残っているそう。Sansanの調査によると、法人カード利用の課題として、利用明細と証憑との照合に時間がかかると答えた人は過半数の51.8パーセントとなっていた。次いで、証憑の回収に時間がかかると 答えた人が34.8パーセントとなっていた。

 これは、取引先名が異なることが原因の一つとなっている。例えば、AmazonなどのECサイトで買い物をする場合、カードの利用明細には加盟店であるAmazonの名前が書かれているが、証憑には出店している店の名前が記載されている。そのため、カードの利用明細を見ても、その商標と紐づいているのかがわからないのだ。

 しかし、手掛かりは金額と日付しかないので、経理担当者は明細を目視で確認し、同じ日付と金額が記載されている証憑を探さなければならない。会社の規模が大きいと、その手間も比例して大きくなる。

 さらに、カードの利用明細はあるものの、それに紐づく証憑が提出されていないということもよくあること。その際も、1件1件、利用者へリマインドを行なう必要がある。Sansan調べでは、この管理業務に月平均で4.7日も費やしているという。1日でも早く締めたい月次決算の大きな障害になってるのだ。

非効率なアナログ業務の負担が大きくなっている

 2つ目が「インボイス制度と電子帳簿保存法への対応」。インボイス制度とは、10月から始まる消費税の仕入税額控除に関する制度のこと。これまでは税込3万円未満の取引であれば、カードの利用明細があれば仕入税額控除が認められていたが、インボイス制度が始まると、金額を問わず、利用明細だけでは控除が受けられなくなる。そのため、すべての証憑を回収し、適格請求書の要件を満たしてるかどうかを判断しなければならない。

 また、2022年1月に改正された電子帳簿保存法では、紙の書類と電子の書類の両方とも法要件に従った保存が求められる。最近、クレジットカードの証憑は年次発行されるクラウドサービスの利用料など、紙と電子の書類が混在するようになっている。これらの書類を電子帳簿保存法に則って保存するためには、業務フローを見直す必要がある。

電子で受け取ったものは電子でしか保存できなくなった

 3つ目が「不正利用リスクへの対応」。カード番号とセキュリティコードがあれば誰でも使える法人カードは利便性が高いものの、社員の私的利用や適切でない購入先での利用など、カードを不正に利用される可能性がある。しかし、カードの利用額や用途を制限しようとすると、管理工数が発生してしまう。

「法人カードは決済が便利になるという一方、管理する経理担当者にとっては、このような三重苦が存在していました。そのため、法人カードの利用をためらっている企業も少なくはありません。企業の月次決算加速を支援しているBill Oneとして見逃すことはできません。この業務課題を解決することで、月次決算を加速できると考え、Bill Oneビジネスカードの提供を決めました」(大西氏)

初期費用、年会費、発行手数料がすべて無料 すでに200社で導入決定

 Bill Oneビジネスカードを導入することで、三重苦を解決できるという。まずは、アナログな業務をデジタル化することで業務を効率化する。Bill Oneにアップロードされた商標を、Sansanが培ってきたデータ化技術を基にデータ化し、カードの利用明細と照合してくれるのだ。金額が異なる場合は、アラートも出してくれるそう。この機能は独自のもので、現在特許申請中とのこと。今後は紙の領収書をスマホのカメラで撮影し、Bill Oneにアップロードできるような機能の開発も進めているという。

照合業務を自動化する

 2つ目の課題に対しては、もちろん、インボイス制度に対応する。カードを利用した後、受け取った証憑が適格請求書かどうかを確認する機能を10月のインボイス制度開始前までに実装する予定とのこと。その際、証憑は電子帳簿保存法の要件を満たした形で保存される。

 3つ目の不正利用リスクへの対応としては、カードごとに利用先や利用者、利用可能期間などを制限することで、リスクを極限まで低減できるという。利用上限額を設定できる法人カードは多いが、利用先まで制限できるというカードは多くないそう。

 Bill Oneビジネスカードでは、カードごとに特定ジャンルの利用先を排除できる。今後はカードごとに利用先を1か所のみに限定するといった機能も実装する予定とのこと。また、利用状況はリアルタイムで管理でき、不正な利用を検知することも可能。限度額を設定しつつ、今月の利用額も把握できるので、不正利用にも対応しやすい。

利用状況をリアルタイムで管理できる

 Bill Oneビジネスカードは初期費用、年会費、発行手数料がすべて無料。1企業あたりの利用上限は最大1億円となっており、高額なサーバー費用や広告宣伝費などに対しても利用できる。すでに、アデランスやクックパッド、TKPなど200社が導入を決定しているそう。提供は6月1日から。

初期費用、年会費、発行手数料が無料

 ビジネスモデルとしては、2つのマネタイズポイントがある。1つ目は、証憑のデータ化料金。Bill Oneはデータ化する請求書の枚数に応じて料金が決まるビジネスモデルで、ここにカードの証憑も請求書と同じ扱いとして追加されるというわけだ。もう1つが、加盟店などから支払われるカードの利用手数料となる。

 現在、すでに導入を決定している200社が利用する金額は月間6億円となっている。1年後には、この月間利用額を50億円、年間600億円にまで増やしたいと、寺田氏の鼻息も荒い。来期末のARRは、今期末目標の倍となる60億円以上を目指している。

Bill Oneのマネタイズポイント

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