「IR Day 2023」でビジネス・プラットフォームBAのデータ活用を披露
「循環型デジタル・エンジニアリング企業」を目指す三菱電機の取り組み
2023年05月31日 09時00分更新
三菱電機グループを支えつつ、情報システム・サービス事業を成長させる
ビジネス・プラットフォームBAは、2つの役割を持つ。1つは、これまでにも触れてきた、三菱電機グループ全体を下支えする「循環型デジタル・エンジニアリング経営基盤」の構築である。
循環型デジタル・エンジニアリング経営基盤の構築では、いくつかのポイントがある。
1つめは、顧客に納入したシステムやコンポーネントから生まれたデータを三菱電機グループに集約、そのデータを分析、活用し得られた課題やニーズをもとに、コンポーネント、システム、統合ソリューションを進化させ、提供価値を継続的に高め、顧客とともに社会課題を解決する循環型デジタル・エンジニアリング企業への変革を進めることだ。
経営基盤では、高度DX人材、技術サービス開発プラットフォーム、事業運営のためのグローバルオペレーション&メンテナンスを中心とした各種サービスを提供。DXイノベーションセンターが中心となって進める事業DXに関する各種開発や施策と、ビジネス・プラットフォームBAが中心となって進める業務DXに関する各種開発や施策の推進によって、この経営基盤を拡充するという。「3年後を目標に、体制や手法を構築し、データを整備し、分析するための人材育成を実施する。今後は、基盤開発、データ整備、人材育成への取り組みが鍵になる」(三谷氏)とした。
循環型デジタル・エンジニアリング経営基盤で提供するサービスは、市場動向調査サービスや営業活動用サービスなどの「ニーズ探索・コンサルティング」、データ分析基盤サービスやビジネスモデル検討サービスなどの「データ分析・事業構想」、PoC環境(データ)活用サービスや高度DX人財活用サービスの「価値創出」、技術・サービス開発プラットフォームやWebAPI連携基盤活用サービス、アジャイルプロジェクトマネジメントサービスなどによる「統合ソリューション実現」、そして、販売促進サービスやソリューション展開サービス、グローバルO&Mサービス、データマネジメントサービス、IT人財活用サービスなどの「価値の提供・拡充」で構成される。
「これらのサービスを活用することによって、各BAにおける新たな事業開発を短期間で行なうことができる。また、データマネジメントサービスやグローバルO&M(運用・保守)サービスにより、統合ソリューションの運用を効率的に行なえるようになる。それぞれの事業本部は、本業である価値創出活動に注力できる」(三谷氏)とした。
ビジネス・プラットフォームBAのもうひとつの機能は、経営基盤の構築ノウハウを生かした情報システム・サービス事業の成長である。「循環型デジタル・エンジニアリング経営基盤の構築スキルやノウハウを活かし、情報システム・サービス事業における循環型デジタル・エンジニアリング事業の割合を拡大していく」とした。
具体的には、製造業向けDXソリューション、IT・OTセキュリティソリューション、サービス提供型事業に取り組む。製造業向けDXソリューションでは、三菱電機の業務DXで蓄積された各種業務プロセスやシステム構築手順などをもとに、製造業向けにコンサルティングやシステム導入、グローバルO&Mサービスを提供する。
IT・OTセキュリティソリューションにおいては、三菱電機グループに導入したセキュリティ基盤の構築ノウハウを活用し、顧客のセキュリティ監視、対策業務の代行事業を拡大する。インダストリー・モビリティBAが持つE&F(エナジー&ファシリティ)ソリューションやOTセキュリティソリューションを統合ソリューションとして事業化することも目指す。「三菱電機が持つOTの強みと、セキュリティベンダーの技術を組み入れながら、OTとITのデータを統合した監視や分析強化、OT資産の自動管理が行なえる。リスクアセスメントからセキュリティ機器導入、運用保守までをワンストップで提供する」(三菱電機 専務執行役 インダストリー・モビリティBAオーナーの加賀邦彦氏)という。
循環型デジタル・エンジニアリング事業は2030年には4割強へ
ビジネス・プラットフォームBAの情報システム・サービス事業は、インフォメーションシステム事業推進本部が担当する領域となる。「これまではコンポーネント、システムを中心に事業展開をしてきたが、これからは統合ソリューションを追加していくことになる。サービス提供型事業では、既存パッケージ製品のサブスクリプション事業化などを推進していきたい。また、海外売上比率が低いが、海外事業を展開している事業本部とともに海外に進出することを考えている。事業拡大に向けては、必要に応じて、M&Aも検討していくべきだと考えている」(三谷氏)とした。
ビジネス・プラットフォームBAの2022年度実績は、売上高が1347億円、営業利益は87億円。2023年度見通しは売上高が1400億円、営業利益は70億円、営業利益率は5.0%。2025年度には売上高2000億円、営業利益率9%を目指す。
また、情報システム・サービス事業のうち、循環型デジタル・エンジニアリング事業が占める割合を2022年度の15%超から、2030年度には40%超に拡大する長期的な方針を示す。さらに、デジタル関連特許の出願率を2025年度には30%に拡大。AI関連出願比率を13%以上に高めるという指標も明らかにした。
ビジネス・プラットフォームBAの取り組みを総括して、三谷氏は「全社DXでは、社会課題の解決に向けて、グローバルでの顧客、パートナーとの共創が今まで以上に必要となる。統合ソリューションから創出されるデータをさらに活用し、循環させることで、多くの社会課題の解決に貢献する循環型デジタル・エンジニアリングの実現に向けて、ビジネス・プラットフォームBAとDXイノベーションセンターが連携。経営基盤を継続的に拡大、進化、高度化し、顧客、パートナーとより深くつながることを目指す」と述べた。