北京や杭州、深センなど、中国の一部都市の小中高校でAI教育が始まり、その話題がしばしば報じられるようになった。まずは今春以降にあった授業の様子を紹介しよう。
バイドゥ版のテキスト生成AIや画像認識AIを子供たちが試す
北京の中国人民大学付属小学の講堂で実施された、AIについての授業はこんな感じだ。若い教師がChatGPTの百度(バイドゥ)版のようなテキスト生成サービス「文心一言」を大きなスクリーンに見せて実演してみせた。
また画像認識の仕組みとして、果物の画像がある中でリンゴをリンゴと認識させるには形状や色などの特性を繰り返し教え込む必要があるといった話など、各種AIの紹介や動きについて説明するというものだった。ChatGPTは中国では公式には使えないが、文心一言やアリババの「通義千問」など、中国製テキスト生成AIがリリースされたことで教育現場でも紹介できるようになった。
学校名からもわかるように、中国人民大学付属小学は試験的な取り組みができる選ばれた学校であり、北京の学校すべてでこうした内容が教えているわけではない。しかし北京市内でAI授業をするための教師向け講習会や、同大学付属学校とテンセントやアイフライテックなどの中国AI大手との情報交換会があるなど、AI教育のノウハウの共有と改善は少しずつ進められている。
音声認識とIoTを組み合わせたキットでその利便性を体験する
つづいて、浙江省・杭州はアリババの企業城下町だ。また、杭州市は中国のゼロコロナ体制時に活躍したQRコードサービス「健康コード」を開発し導入した、IT導入に積極的な自治体である。AI教育についても自治体をあげて導入を決めて、AIに関するテキストも作っている。
杭州銭江外国語実験学校の6年生向けの例を見よう。あらかじめ用意されたキットを使って、モデルルームにあるような部屋の中がわかる模型の家を組み立てる。家には扇風機をイメージしたファンがあり音声認識で起動する。これで音声認識とIoTをセットで学んでいき、スマートホームを理解しつつ人工知能技術がもたらす利便性を体験するというものだ。
ほかにも顔認証や自然言語処理、翻訳、ChatGPTのようなテキスト生成AIがどういったものでどういう原理で動くかを知り、情報社会における責任やセキュリティーの意識を高めていく。実験学校だけに先進的な教育を試す学校なのだろう。
内陸部の都市ではAmazonのAWSがAI教育をサポート
内陸の寧夏回族自治区・銀川は、さまざまなスマートプロジェクトを実施している都市で、AI教育では中国でありながらAmazonのAWSがサポートしている。銀川市第三十一中学校に作られた人工知能体験センターという広々とした教室では、生徒たちがAIを搭載した小さな無人車両を組み立て、コースの無人走行の実現を目指すという授業が実施されている。銀川もまた「学生たちにAIの発展とAIの応用について理解させ、一連の体験と学習活動を通じて子供たちのコアリテラシーの向上を促進し、子供たちが将来のテクノロジーの発展によりよく適応できるようにする」ことを当面の目標に掲げている。
北京、杭州、銀川と地域とケースを異なる地域を紹介したが、他にも中国の省都クラスの都市の学校で取り組みが見られる。AIについてはまだごく一部の学校で始まった程度だが、農村の学校にまでパソコン室をはじめとして多様な情報機器が入り、コロナ禍ではそれらを活用したように、AI教育も時間をかけて中国中の学校で導入されることになろう。
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