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巨大ブラックホールを取り巻く降着円盤とジェットを初めて撮影

2023年05月16日 07時49分更新

文● MIT Technology Review Japan

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国立天文台などの研究者が参加する国際研究チームは、波長3.5ミリメートル帯で観測する地球規模の国際電波望遠鏡ネットワークを用いて、楕円銀河M87の中心部を詳しく観測。巨大ブラックホールを取り巻く降着円盤の撮影に初めて成功するとともに、ブラックホールが噴出するジェットの根元の構造をこれまでで最も高い視力で捉えた。巨大ブラックホールに落ち込むガスから膨大な重力エネルギーが解放される現場を、初めて直接的に捉えたものであり、ジェットの駆動メカニズムの解明に寄与することが期待される。

国立天文台などの研究者が参加する国際研究チームは、波長3.5ミリメートル帯で観測する地球規模の国際電波望遠鏡ネットワークを用いて、楕円銀河M87の中心部を詳しく観測。巨大ブラックホールを取り巻く降着円盤の撮影に初めて成功するとともに、ブラックホールが噴出するジェットの根元の構造をこれまでで最も高い視力で捉えた。巨大ブラックホールに落ち込むガスから膨大な重力エネルギーが解放される現場を、初めて直接的に捉えたものであり、ジェットの駆動メカニズムの解明に寄与することが期待される。 研究チームは今回、グローバルミリ波VLBI(超長基線電波干渉法)観測網(GMVA)と呼ばれる地球規模の国際電波望遠鏡ネットワークを主に用い、2018年4月14日から15日にかけてM87の中心部を詳細に観測した。今回の観測では、チリのアルマ望遠鏡とグリーンランド望遠鏡が新たにネットワークに加わったことから、従来のGMVAに比べて特に南北方向の解像度が4倍以上に向上し、波長3.5ミリメートルの観測でM87中心部のリング状構造を画像化することが可能になった。 2019年4月、波長1.3ミリメートル帯で観測する「イベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope:EHT)」プロジェクトの研究者らはおとめ座の方向約5500万光年の距離にある楕円銀河M87の中心に存在する超巨大ブラックホールの画像を史上初めて公開した。研究チームによると、今回、波長3.5ミリメートルの観測で測定されたリングの構造は、視直径が約64マイクロ秒角(0.017光年に相当)と波長1.3ミリメートルのEHTによる視直径より1.5倍ほど大きく、厚みもEHTによるものよりも厚く、シミュレーションによる検証の結果、EHTで撮影された光子リングの周りに広がる降着円盤であると結論付けたという。 研究結果は、ネイチャー(Nature)に2023年4月26日付で掲載された

(中條)

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