ワークスモバイルジャパン主催の中小企業向けオンラインDXセミナーに登壇したのは島根県で製麺業を営む出雲たかはしの代表取締役社長 高橋大輔氏、同じく島根県でDXコンサルティングを行なう必ず楽しい代表取締役社長 高橋朋恵氏。中小企業におけるデジタル導入の課題と解決事例について講演した。
手軽に始められるように業務ルールを策定
出雲たかはしは創業73年の麺製造企業。社員数は35名で平均年齢は41歳だが、内訳は20~70代と幅広いのが特徴だ。名産の「出雲そば」をはじめ、ラーメン、パスタなどの麺を製造している。年商は5.1億円。
同社は現在、LINE WORKS、kintone、Googleアプリなどを活用し、どこからでも情報共有ができる体制を築いている。kintoneでは生産管理、商品管理、出荷管理、営業管理に使用しており、LINE WORKSは社員間のチャット、掲示板、欠勤届け、アンケートなどに活用している。
こうしたデジタル導入の効果もあり、2021~2022年は過去最高の売り上げと利益を達成した。同時に、業績を高めながら時間外労働の20%削減にも成功している。
同社のビジネスは、主力の出雲そばの需要が年越しそばでピークになる12月の売り上げが突出している。「12月の時間外労働の急増を、パート社員を増員するなどして乗り切っているが、業務を計画的に行ない、省力化することが欠かせない。そのためには、情報共有のスピードアップがポイントだ」と、高橋大輔氏は語る。
繁忙期の業務効率化を図るため、現場のデジタル化を進めた。たとえば、デジタル化前の生産管理は、ラインごとに製造ロットの管理表を紙で運用しており、それを毎日PDF化して保存していた。トラブル時は管理表の内容を1枚ずつ目で見て内容を確認する必要があった。
それが、現在はkintoneを使い、タブレット端末でどこでも入力、確認ができるようになった。工場内のWi-Fi環境や防水ケースに入ったタブレットへの投資が必要だったが、確実に効果は出ている。これ以外にも、さまざまなアプリが稼働している。
一方、社員間のコミュニケーションに役立っているのがLINE WORKSである。なかでも好評なのがスタンプだ。個人向けアプリのLINEと同じように使えるところが親しみやすく、誰でも気軽に使っている。
また、チャットで社員に一斉通知しても、LINE WORKSはその書き込みを誰が読んだかがわかる。同社に限らず、メールで業務連絡をしている企業は、誰が読んでいるかわからないため、重要な内容の場合は結局電話で確認するなどの二重通知をしているケースが多い。LINE WORKSなら既読者が個別に確認できるため、その後のアクションがしやすい。管理部門の業務を大きく効率化できる。
手軽に始められるよさはあるものの、確実に業務効率化を進めたいと考えた高橋大輔氏は、LINE WORKSの導入に際して運用ルールを策定し、社員に公開した。運用ルールには、例えば「LINE WORKSは既読機能があるため、返信はしてもしなくてもよい」と記載してある。
「上司の書き込みを読んで、既読スルーするのは印象が悪いからと、送った全員が『確認しました』と返信を入れてしまうことが想定された。それでは、膨大な数の返信書き込みがタイムラインを埋めつくしてしまう。そのような無駄を減らせるように、会社としてルールを定めている」(高橋大輔氏)
欠勤届をデジタル化して採用活動にも貢献
同社では、欠勤届の運用も悩みの種だった。従来は各社員が紙の欠勤届に書いて直属の上司に申請し、承認された書類が社長である高橋大輔氏にも回ってくる。同時に、社内のホワイトボードにも書き込むなど、非常に手間が多かった。
そこで、LINE WORKSで「欠勤表(遅刻、早退含)」というグループを作り、全社員で共有するグループカレンダーを運用することにした。これによって紙の運用から脱却し、社員が各自のスマートフォンから欠勤する日を書き込むことができるようになった。管理サイドでは、特に工場長が社員の欠勤予定を考慮したラインの編成を検討することができるため、生産計画を立てやすくなっている。
さらに副産物も生まれている。この欠勤届デジタル化の取り組みを、同社の採用サイトに掲載したところ、先進的な取り組みが評価されて採用にもつながっているという。
加えて、LINE WORKSのアンケート機能も利用している。「新製品の低糖質パスタのパッケージデザインに悩んでいて、候補のデザイン案を社員投票にかけることにした。その結果、3つのパターンのうち、1つに絞ることができた。社員のフリーコメントも書き込んでもらえるため、社員全員で商品を作り上げることができたと思っている」(高橋大輔氏)。コミュニケーションだけでなく、生産性の高い活動にもLINE WORKSは活用されている。