auに聞く、サーキットの通信環境はどうなる?
次はau側にサーキットと通信環境の問題を聞いてみた。今でこそ富士スピードウェイなどは普通に5Gが入るようになったが、つい数年前までは「サーキット=通信環境は絶望」という認識だった。パドック周辺で4Gが入ればいいほうで、グランドスタンド以外の観戦スポットは圏外になるのは当たり前。今でもサーキットによってはグリッドウォークでホームストレートに出るとTwitterのテキストすら上がらないという場合もある。最近では電波の悪さに業を煮やし、衛星通信のStarLinkを持ち込むチームもいるほどだ。
筆者もモバイル業界の編集者という立場を活かして、何度もサーキットでのアンテナ整備を訴えたのだが……。そんな不満をぶつける前に、なぜSUPER GTに参戦し続けるのかをKDDI ブランド・コミュニケーション本部 ブランドマネジメント部 佐伯凌汰氏に聞いた。
「スポーツを通じてお客様と接点を作るというのが非常に大事だと思ってます。auショップやTVCMなどである程度接点はあるのですが、届かない部分もあります。そこをTOM'Sとそのファンのみなさんのチカラを使って接点を増やすということを軸にやっています」(佐伯氏)。スポーツをスポンサードするメリットはわかるのだが、なぜ日本ではメジャーとは言い難いモータースポーツなのだろうか?
「我々の前身としてIDOという会社がありまして、トヨタさんと自動車電話などのサービスを展開してきたんです。自動車と通信って昔から切っても切れない関係なんですよ。それもあって、モータースポーツに参加していますし、弊社内で唯一“au”がつくスポーツチーム(au TOM'S)だったりします。auをあまり知らない人がチームやドライバーから我々を知ってもらうこともありますね」(佐伯氏)。
通信キャリアということもあり、「繋ぐ」をテーマにチームとファンを繋ぐイベントも開催した(前述の銀座でのイベント)。そして、今回売り切れたというauファンシートも、応援用の大型フラッグと旗振り係を導入し、より熱を上げて応援できるようになった。だが、今年のクルマに貼ってあるauのロゴが小さくなっている気がするが……。
「実は意図的に小さくしています。我々が前に出て行くよりもTOM'Sさんやドライバーの方たちを立てていきたいということもあり、あくまでも我々は後ろからのサポートということで、小さくしました。昨年まであった“5G”のロゴも、もうだいぶ認知されただろうということで今年はなくなっています。もっと全体のサービスを見ていただきたいなと」(佐伯氏)
5Gの話が出たところで、最近のサーキットの現状を聞いた。SUPER GTだと「Grooview Multi」、スーパーフォーミュラだと「SFGo」といった、モバイル回線を使ったリアルタイムで情報を追えるアプリが出ているが、回線速度のせいでラグがあったりしてなかなかもどかしいのも事実。
「富士スピードウェイに関しては2019年くらいから5Gの整備を始めていて、一部ですがミリ波も吹いています。開幕戦の岡山国際サーキットも全エリア5G化が終わりました。今秋以降はスポーツランドSUGO以外は全域5Gエリア化する予定です」(佐伯氏)
5Gは速度ばかりが注目されるが、同時多数接続も大きなメリット。とくにイベント会場のような人が集まる場所でこそ威力を発揮する。そういう意味でサーキットの5G化はユーザーの利便性が大きく向上するだろう。さらにサーキットは遮るものが少ないのでミリ波も飛びやすい。スポーツランドSUGOも、この先永遠に5Gにしないというワケではなく、順次5G化の対象になるようだ。なお、auではSUPER GTのようなビッグレースのときはアンテナ車などを派遣する、といった取り組みをしている。
5GのSA化やミリ波のエリアも気になるが、来年にはほとんどのサーキットで電波問題は解消されそうだ。5Gやスマホを活用したサービスがもっと出てくれば、モータースポーツ観戦がより快適に、そして盛り上がることが期待できるだろう。auとモータースポーツの取り組みに今後も注目してほしい。