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骨の再生につながる幹細胞「骨内膜幹細胞」を発見=長崎大など

2023年05月03日 07時11分更新

文● MIT Technology Review Japan

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長崎大学、テキサス大学、ミシガン大学アナーバー校、東京医科歯科大学の研究グループは、骨の成長と再生に貢献する幹細胞「骨内膜幹細胞」を発見した。身体の成長に伴う骨の伸長や骨折後の治癒には骨の幹細胞が大きな役割を果たしていると考えられていたが、小児期や成長期に働く骨の幹細胞の存在は明らかになっていなかった。

長崎大学、テキサス大学、ミシガン大学アナーバー校、東京医科歯科大学の研究グループは、骨の成長と再生に貢献する幹細胞「骨内膜幹細胞」を発見した。身体の成長に伴う骨の伸長や骨折後の治癒には骨の幹細胞が大きな役割を果たしていると考えられていたが、小児期や成長期に働く骨の幹細胞の存在は明らかになっていなかった。 研究グループは、若齢マウスの大腿骨から幹細胞を含むすべての骨格系細胞(軟骨細胞、骨芽細胞、骨髄間質細胞、骨髄脂肪細胞、骨の幹細胞など、骨に関連する細胞の総称)を集め、シングルセル解析によって、骨格系細胞全体の多様性を一細胞レベルで明らかにした。その後、データ分析の手法を使って骨格系細胞を形成する起源となる骨の幹細胞を含む集団を推定。この細胞集団では「Fgfr3(Fibroblast Growth Factor Receptor 3:線維芽細胞増殖因子受容体3)という遺伝子が強く発現していることを確認した。 Fgfr3を発現する細胞を赤色蛍光分子で可視化し、細胞の動きを追跡したところ、Fgfr3を発現する細胞は、骨髄内面の皮質骨に沿って並んでいる骨芽細胞に接するように存在していたという。加えて細胞培養などによる解析を試みた結果、この細胞が何度も繰り返し増殖する自己複製能を持ちながら、軟骨や骨、脂肪に分化する多分化能を持つ骨の幹細胞であることが分かった。研究グループはこの幹細胞を「骨内膜幹細胞」と名付けた。 一方、動物実験の結果から、この幹細胞が骨肉腫を発生させる起源となることも明らかになったという。 研究成果は4月25日、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。今回の発見によって、今後、骨再生療法への応用や骨肉腫の治療法開発が期待できるとしている。

(笹田)

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