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「変化の時代にビジネス成果を上げる」がテーマ、「Oracle CloudWorld Tour Tokyo」開催

トヨタ、イトーキ、デジタル庁が登壇、日本オラクル年次イベント基調講演

2023年04月17日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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イトーキ:「オフィス3.0」事業の実現に向けOracle Cloud ERPを採用

 続いて登壇したのは、オフィス家具メーカーとして知られるイトーキの代表取締役社長、湊宏司氏だ。湊氏は、2021年8月まで日本オラクルの副社長や最高執行責任者(COO)を務め、2022年3月に現職に就いた経歴の持ち主だ。

イトーキ 代表取締役社長の湊宏司氏

 イトーキは1890年(明治23年)創業の、133年目を迎える老舗企業だ。事務用品の輸入販売や製造からスタートし、戦後になってスチール製のオフィス家具や家庭用学習机などの製造と販売を開始、さらに現在では新しい働き方の提案やオフィスコンサルティングにまで事業の幅を拡大してきた。

 湊氏は、オフィス家具を製造/販売するプロダクトベースのオフィス1.0から、空間ベースのソリューションを展開するオフィス2.0を経て、現在は働き方ベースのオフィスDX事業を推進するオフィス3.0に取り組んでいる、と語る。

イトーキが考えるオフィス向けビジネスの進化。かつての1.0(商品販売)から現在は2.0(空間ソリューション)に進んでおり、次は3.0(オフィスDX)を目指す

 「オフィスは生産性を追求するためにある、という目的はずっと変わらない。ただし、時代ごとに最も効率が上がるかたち、最も管理しやすい環境は変化し続ける。たとえば高度成長期やバブル期は、個々人が決まったことをきちんとやり遂げることが重要であり、“島形対向”にレイアウトした固定席が最適だった。しかし、現在のオフィスはイノベーションやウェルビーイングなどが大きなテーマであり、生産性を上げるにはまた別のレイアウトデザインが求められる」(湊氏)

 そして、オフィスの生産性を高めるのはレイアウトや家具のデザインだけではない。湊氏は、これからの時代には「ITとAIが不可欠」だと述べ、「オフィス空間にこれらの要素をどう組み込むかが、私たちにとってのDXになる」と定義する。これがオフィスDX事業、つまり「オフィス3.0」だ。

 ITやAIの活用例としては、たとえばオフィス家具や椅子にIoTセンサーを組み込むことで、社員の移動履歴やフロアの使用率などを計測したり、空間デザイナーが年間5000枚程度作成するオフィスレイアウトの3D CADデータをAIで分析し、「生産性やモチベーションが上がるレイアウトはどんなものか」「間仕切りを外すことで光熱費をどのくらい削減できるか」といったことを試算するサービスも開発を進めているという。

上のレイヤー(オフィス)で取得したデータを下のレイヤー(ERP/EPM)に取り込み、集約して、さまざまな目的/部門で利用可能にするイメージ

 生産性向上に向けた業務の効率化、標準化、簡素化、自動化などをテーマに、、イトーキでは基幹システムに「Oracle Fusion Cloud ERP」を採用してクラウドシフトを進めている。湊氏は「わたしが(2022年に)転職してきたとき、イトーキの社内システムは、経産省の『2025年の崖』レポートで指摘されているレガシーそのものだった」と振り返る。

 「まず初めに、良いものがあればSaaSを採用したいと考えた。イニシャルコストが抑えられる、1部門からでもスモールスタートできる、四半期ごとのアップグレードで最新技術を活用できるといったメリットがあるからだ。Oracle Fusion Cloud ERPを採用したのは、海外で実績があること、セキュリティの面からも高い堅牢性が実現できることが理由だった」(湊氏)

 湊氏はもうひとつ、イトーキ独自の業務プロセスにも処理を合わせやすいという点も選択理由に挙げた。長い歴史を持つ会社であるため、取引の中では「手形」や「FAX」といったものも現役で使われている。Oracle Fusion Cloud ERPはSaaSだが、IaaS/PaaS(OCI:Oracle Cloud Infrastructure)上で開発した独自アプリケーションと連携させることで、そうした独自プロセスも柔軟に処理できる。

 今後は、前述した「オフィス3.0」の取り組みをコンセプトから実装へと移行させるほか、ESGの観点から、ERP Cloudを活用してCO2排出量の自動計算に取り組むと話した。

デジタル庁:ガバメントクラウドのクラウド最適化方針とOCIに求めるもの

 3人目として登壇したのが、デジタル庁 シニアエキスパート(クラウドコンピューティング)の山本教仁氏である。

デジタル庁 シニアエキスパート(クラウドコンピューティング)の山本教仁氏(右)

 OCIは、政府のガバメントクラウドの対象サービスのひとつに選定されている。ガバメントクラウドは、中央政府(1府2庁11省)や地方公共団体(1741団体)、準公共分野向け(医療、教育、防災等)のデジタル施策を推進するための、共通のクラウドサービス利用環境と位置づけられているほか、デジタル庁のデジタル施策推進に貢献する役割も担っている。

 「ガバメントクラウドでは、クラウドの利点を最大限に活用して、迅速性、柔軟性、セキュア、コスト効率の高いシステムの実現を徹底的に追求していく。そのためにはクラウドに最適化されたモダンなアーキテクチャ、具体的にはアプリケーションを構成するすべてのコンポーネントがマネージドサービスとして提供されていることが前提となる。それにより、インフラの構成をすべてコードで記述したり(IaC)、必要な機能を必要なときだけ利用できたり、OSレイヤーの管理がなくなるためセキュリティが向上したりする。さらに、クラウドコストの8割近くがコンピュートサービスに費やされているのが実情であり、コスト削減にも貢献する」(山本氏)

ガバメントクラウドは日本の政府、地方自治体、準公共分野の団体が共通利用する大規模クラウド基盤。デジタル庁では、クラウドのメリットを最大限発揮できるかたちでの利用を推進する

 また山本氏は、ガバメントクラウドの重要な要件のひとつとして「利用システムそれぞれの環境に独立性を持たせること」を挙げた。Oracle Cloudではテナンシーやコンパートメントといった技術でこれを実現可能であり、一方で複数環境のガバナンスもCloudGuardなどの機能を通じて統制できる。さらに「セキュリティは自動化が重要。さまざまなセキュリティサービスを出してもらいたいと考えている」と、OCIに対する要望を語った。

ガバメントクラウドでは、システム単位での独立性と全体へのガバナンスを両立させる必要がある

 クラウドにおけるベンダーロックインのリスクをどう考えるかという質問に対しては、個別にカスタマイズされてブラックボックス化しやすいオンプレミス環境とは異なり、クラウドではIaCによるインフラ管理が可能であり、ほかのクラウドサービスにも移行しやすいと述べ、「マネージドサービスを利用することで、むしろベンダーロックインが生まれにくい状況を生むと考えている」と指摘した。

 「10年前のクラウドといまのクラウドは大きく異なる。クラウドを仮想化の延長線上の技術だと思っている人は、古い考え方のままだ。クラウドとは“ITインフラストラクチャのソフトウェア化”のこと。これは大きなビジネス機会であり、エンジニアにとってはスキルを伸ばすいい機会にもなる」(山本氏)

* * *

 まとめとしてオラクルの三澤氏は、先行する他社に10年以上遅れてクラウドに参入したオラクルだからこそ、より新しいテクノロジーでOCIを設計し、それまでの「パブリッククラウドとミッションクリティカルシステムは相容れないもの」という常識を変えることに成功したと語った。

 さらに、旧来のERPビジネスは「フィットギャップを行ったあとの導入コストの高騰、アップグレード時のとてつもないコスト、インフラ運用の複雑さと見えないセキュリティコスト」という「ERP業界の悪しき習慣、悪習」があったと厳しく指摘。ピュアSaaSとして提供するOracle Fusion Cloud ERPは、そうした悪習や悪い仕組みから顧客を解き放つとして、「SaaSならではのスピード感を持ったビジネス変化対応力とAIの進化がもたらす価値を提供し、お客様の経営を支援していく。今後もクラウドの新たなテクノロジーを活用して、日本の未来に貢献したい」と締めくくった。

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