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kintoneパートナーセレクション 第8回

kintoneはお客様のDXを10年間支えられる

kintoneの大規模SI案件で成長し続けるコムチュアのこだわりとは?

2023年04月21日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ 写真●曽根田元

提供: コムチュア

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 エンタープライズ向けのkintoneのSI案件を多く手掛けているコムチュア。その売上実績は、kintone開発会社としてはちょっと聞かない規模の金額だ。大規模な環境でkintoneをプラットフォームとしたシステム開発をする場合、どんな考え方や開発工程が必要になるのだろうか? 長らくコムチュアでクラウド事業をリードしてきた中谷隆太氏にお話を伺った。

コムチュア 取締役 クラウドソリューション事業部長 兼コラボレーション本部長 中谷隆太氏(肩書きは2023年2月の取材実施時のもの)

プラットフォームでの開発に専念 ベンダー連携も重視

 コムチュアは1985年1月に創業した老舗の独立系SIerだ。近年、M&Aを多く手掛けて事業所が増え、今は東京、名古屋、大阪、福岡に拠点を展開している。社員は新人200名を加え、1818名にもなる。

 コムチュアは独立系の強みを生かし、時代にフィットしそうなところに先駆けている。メーカー系と異なりハードウェアを持っていないので、躊躇せずにSaaSやPaaSなどのクラウドも手掛け始めた。

 システム開発の話になった時に、クラウドサービスのアカウントを売るだけでは、儲からないのでは? と考えてしまいがちだが、「そんなことはない」とコムチュアの取締役でクラウド事業全体をリードしてきたいる中谷氏は語る。

「私たちは逆で、いわゆるプラットフォームでの開発だけをしています。kintoneであれば、アカウントを売っているわけではなくて、kintoneでのアプリケーション開発を主軸にしています。ベンダー連携をすごく重視していて、しっかり一緒に組んで、案件のクロージングまでお手伝いします。そして、そこから組み立てるような開発工程を、当社で行なうというビジネスモデルに徹しています」(中谷氏)

クラウドでのシステム開発は業務フローの前さばきが必要

 近年のクラウド移行の状況は追い風となり、クラウドソリューション事業は順調に伸びている。その理由はどこにあるのだろうか。お話を伺っていると、開発の進め方にこだわりがあった。

 「従来の開発手法で、顧客側から出されたRFP(提案依頼書)を受け取ってそのまま進めると、案件が失敗する可能性が高くなります」と中谷氏。それは、顧客自身も業務を正確に理解していないことがあるからだという。「そこで、本当にこのRFPが正しいか、1回ひも解きませんか?と提案します。エンドユーザーにヒアリングさせてもらうと、本当に必要なRFPが作れるようになるのです」(中谷氏)

 コムチュアのクラウド事業には、顧客の業務をヒアリングし、業務を可視化させるコンサルチームがある。

「たとえば、クラウドサービスを入れたいというお客様の場合、どんなツールがいいのかわかっていない場合があります。そこを可視化するチームを作りました。クラウドを採用する前にBPMの手法を用いて、デジタルプロセスフローを作ったり、業務の可視化を行ないます」(中谷氏)

 チームのメンバーは、元々SEとしてプログラム開発をしていた人たち。1年ぐらいの期間をかけて、シフトチェンジしたそう。さまざまなプロセス管理ツールを使うスキルを身に着けてもらい、業務分析をしているのだ。

「kintoneは規模が小さいからSIで儲からない」は間違っている

 クラウドソリューション事業ではいくつものクラウド製品を扱っているが、kintoneはグローバルクラウド2製品に次いで3番目と大きな割合を占めている。 2015年1月からkintoneを扱いはじめ、サイボウズオフィシャルパートナーを表彰する制度である「CYBOZU AWARD」では2018年から2021年まで、4年連続でSI賞を受賞するほどに成長した。

「kintoneを採用したのは、私の独断です。当時、たまたま行った講演で、(サイボウズ代表の)青野さんが、いわゆるメイドインジャパンの製品で、海外に行きたいと言ったのです。日本でそんなことをいう人がいるのか、と本当に驚き、この人と仕事したいなと思ったのがきっかけです」(中谷氏)

 2015年4月にはまずサイボウズと一緒にNotesの移行ツールを開発している。元々、コムチュアはグループウェアが得意でNotesを扱っていたためだ。全盛期は約200人のNotes部隊を抱えていたという。

 Notesからの移行案件は規模がとても大きく、サイボウズ事業部の売上は毎年120%くらいで成長を続けている。今期に関しては優に130%は超えるそう。 商流もほぼプライム案件で受けている。「この規模のSIerとしては、珍しいと思います」と中谷氏。通常はもっと規模の大きい大企業の下に入ることが多いのだが、95%以上をプライムで手掛けているというのはすごい。

 2022年度も多数の案件を手掛けたが、顧客の6割が企業規模1000名以上だ。いわば中堅や大企業と言われる規模。これに対応するコムチュアのkintoneの部隊も70~80人くらいとのことで、こちらも大きい。

「kintoneは規模が小さいからSIで儲からないビジネスだと言われていますが、私はそれは違うと思っています。確かに案件規模は小さいかもしれませんが、潜在的な市場は広いし、顧客のニーズも高い。なにより『kintoneはお客様のDXを10年間支えられる』ということがキーワードになると思います」(中谷氏)

エンタープライズのkintoneはしっかりしたガバナンスが重要になる

 大企業に向けたビジネスをする際は、ガバナンスをしっかりと定義して、本当にこのツールでいけるのか、という見極めが重要になる。そして、開発のスキームをしっかり作る必要もある。誰でも手軽に作れる、というのは聞こえはいいが、ガバナンスを効かせないと野良アプリができて、情シスの制御が効かなくなってしまう。

「開発ルールやマスターを決めるという入り口から、ガバナンスを持って入ることが重要です。最後には、そのサービスに関しての保守もあります。私たちの保守では、開発もします。kintoneの可能性を広げたいからです。やっぱりお客様ではできない開発は多く、開発がないとお客様から見て、kintoneは使いづらい、という風評になってしまうからです。私たちはそこから伴走します」(中谷氏)

 ここまでガバナンスにこだわるのはエンタープライズならではの特徴があるからだ。今でも、エンタープライズは従来のウォーターフォール型の思想が根付いており、中途半端に走らせると、すぐにギャップが出て失敗してしまうという。

「大企業はウォーターフォール型でベンダーに依存する傾向がありました。そこで、いきなり伴走型で一緒にやりましょうと呼びかけても、多くの場合、すぐには動けません。だから、前さばきをして、ガバナンスで定義し、kintoneのいいところを最大限に引き出すことが必要になります」(中谷氏)

 また、コムチュアでは、kintone単独の案件はほぼないという。kintoneを中心に、AzureのデータベースやウィングアークのようなBIツールを連携させることもある。最近は、CTI製品やMA製品と連携する事例が増えているそう。「kintoneはベスト・オブ・ブリードだと思います」と中谷氏は語る。

 多くのエンタープライズ企業では導入するサービスをコムチュア側で決めることはないという。もちろん、顧客側が選定している場合はkintoneのよさを訴求するが、要望によってはkintoneが適さないこともある。しかし、サービス選定は顧客が判断すべきだと考えているのだ。

「エンタープライズ企業のお客様に対しては、われわれが何かを決めるというよりは、お客様に横並びで見てもらいます。入り口で、たとえば3か月間PoCを実施し、kintoneだけでなく他のツールやサービスも必ず見てもらうようにしています。私たちに促されるのではなく、お客様が選ばなければダメです」(中谷氏)

社内IT人材の育成がその企業のDXにダイレクトに効く

 コムチュアは教育系の会社もM&Aしており、IT人材の育成も手掛けている。今流行のリスキリングに先駆けて、レガシー領域からクラウドビジネスへシフトチェンジする支援も行っているのだ。

「kintoneはDX革命を起こせるツールだと思っています。今までITを使ってこなかった人材が、課題の解決にあたってkintoneを触れるようになれば、DXに直結することは間違いありません。たとえば、今ある会社の支援をしており、半年で数千人がITを使えるようにしようとしています。学習コースは3つあるのですが、そのうちの一つにkintoneが入っています。日本でkintoneの認知度を高めるなら、このような教育活動が必要だと思います」(中谷氏)

 DXの走りの部分は企業側が行ない、その先のシステムの開発をSI側が担うという住み分けが必要だという。SIerの立場で、いかに企業のDXを支援できるか、というところに注力しているそう。

 加えて、独立系SIerとしての狙いもある。今後生き残っていくためには、顧客に近づき、長く付き合っていく必要がある。そのために、kintoneを買ってくれ、と言うのではなく、kintoneでDX人材を育てませんか、と提案するそう。

「ノーコードツールのkintoneなら誰でも自分たちで使えるようになります。自分たちで課題を解決できた喜びを感じることができれば、kintoneのファンが自動的に増えることになります」(中谷氏)

 最後、中谷氏は、今後の展開について伺った。

「SIerとしては、kintoneはしっかりと稼げるプラットフォームです。でも稼げるからやるのではなく、やはり日本のDX促進の一助だからkintoneをやるということです。これからもサイボウズと連携してSIのトップリーダーとしてkintoneファンを増やしていきたいです」と中谷氏は締めてくれた。

 kintoneは誰でも簡単にアプリが作れる、といったお手軽なイメージがあるが、それだけではエンタープライズのニーズに応えられない、と言うのは納得だが新鮮な意見だった。しかし、kintoneでもしっかりとガバナンスを効かせれば、10年使えるシステムが作れるというところにコムチュアの高い技術力を自信のほどを感じた。中小企業に強いkintoneだが、今後はエンタープライズでの活用も広まっていきそうだ。

■関連サイト

(提供:コムチュア)

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