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筑波大など、メタンをメタノールに効率よく変換する触媒を開発

2023年04月11日 15時55分更新

文● MIT Technology Review Japan

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筑波大学と九州大学の共同研究チームは、メタンを酸化してメタノールを得るための触媒として、新しい鉄錯体を開発した。この錯体には、メタンを内部に捕捉することで効率よくメタンを酸化するだけでなく、生成したメタノールの過剰酸化を防ぐ機能がある。研究チームは同触媒を用いて、水溶液中でのメタンからメタノールへの直接変換に成功した。

筑波大学と九州大学の共同研究チームは、メタンを酸化してメタノールを得るための触媒として、新しい鉄錯体を開発した。この錯体には、メタンを内部に捕捉することで効率よくメタンを酸化するだけでなく、生成したメタノールの過剰酸化を防ぐ機能がある。研究チームは同触媒を用いて、水溶液中でのメタンからメタノールへの直接変換に成功した。 メタンは酸化が最も困難な炭化水素であり、温和な条件下でメタンをメタノールへ効率的かつ選択的に変換する方法はこれまで開発されていなかった。研究チームは、自然界に存在する、メタンを酸化する金属酵素の構造と反応機構から着想を得て、活性点(触媒上に分子が吸着して反応する場所)近傍に疎水性環境を有する鉄錯体を開発した。 この鉄錯体を触媒に用いた反応では、水溶液中において50ºC、約10気圧という温和な条件下で、メタンの酸化が進行。触媒回転数(反応によって原料を生成物へと変換した回数)は3時間で500回を超え、83%という高い選択性でメタノールを得られた。研究チームによると、触媒の活性点である鉄原子近傍に疎水性環境があることで、この中にメタン(疎水性物質)を捕捉するとともに、生成したメタノール(親水性物質)が水溶液中に放出され、活性点に接近して過剰酸化を防いでいるという。 研究論文は、ネイチャー(Nature)に2023年4月5日付けで掲載された

(中條)

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