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超強磁場中で結晶の「のびちぢみ」の計測に成功=電通大など

2023年04月10日 06時13分更新

文● MIT Technology Review Japan

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電気通信大学と東京大学などの共同研究チームは、室内発生世界最強の1000テスラ級電磁濃縮超強磁場発生装置を使い、600テスラの超強磁場下で結晶の「のびちぢみ」の瞬間的な計測に成功。遷移金属酸化物であるコバルト酸化物(LaCoO3)中の新しい磁気(スピン)超流動状態の兆候を見い出した。

電気通信大学と東京大学などの共同研究チームは、室内発生世界最強の1000テスラ級電磁濃縮超強磁場発生装置を使い、600テスラの超強磁場下で結晶の「のびちぢみ」の瞬間的な計測に成功。遷移金属酸化物であるコバルト酸化物(LaCoO3)中の新しい磁気(スピン)超流動状態の兆候を見い出した。 研究チームは今回、独自開発の超高速ひずみ計測技術を導入することで、瞬間的に発生した超強磁場中でLaCoO3結晶の「のびちぢみ」を一瞬かつ一発で計測。これにより、LaCoO3における「磁気励起子」の超流動状態の兆候を600テスラの超強磁場下で初めて確認した。LaCoO3の磁気励起子の粒子的かつ波動的なふるまいには謎が多く、固体物理における最大の難問の一つとされている。 今回の成果はLaCoO3の基本的な性質を明らかにするもので、コバルト酸化物を用いた微小なスイッチなどのデバイス開発に大きく役立つ知見になるという。また、超高速ひずみ計測法は超伝導体から金属まであらゆる固体に適用できるので、今後も1000テスラ級の超強磁場において新たな電子状態や相転移などが発見できると期待されるとしている。 今回の成果は国際学術誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2023年4月4日付けで掲載された

(中條)

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