このページの本文へ

九大、大腸がんを再発させる「休眠状態の」がん細胞を発見

2023年03月10日 08時58分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

九州大学の研究チームは、大腸がんの細胞に増殖が遅い休眠状態の細胞が存在し、その細胞が後に大腸がんを再発させていることを明らかにした。大腸がんは患者数が多く、抗がん剤による治療を受けた後に再発して予後不良となる例も多い。

九州大学の研究チームは、大腸がんの細胞に増殖が遅い休眠状態の細胞が存在し、その細胞が後に大腸がんを再発させていることを明らかにした。大腸がんは患者数が多く、抗がん剤による治療を受けた後に再発して予後不良となる例も多い。 がん細胞の中にはさまざまな種類の細胞があり、そのうちのがん幹細胞ががんの増殖や再発を起こす。再発を防ぐにはがん幹細胞を完全に殺さなければならないが、実際には再発する患者が後を絶たない。研究チームは抗がん剤が増殖の速い細胞にはよく効くが、増殖が遅い休眠状態の細胞にはほとんど効果がないことに着目。がん幹細胞のうち、休眠状態に入っている細胞が抗がん剤治療終了まで生き抜き、後に再発させていると予想した。 研究チームは、実際の大腸がん患者の生理的環境を再現したモデルを用意し、モデルの大腸がん細胞を1細胞RNA-seq法で解析。その結果、がん幹細胞の中に2種類の亜集団が存在していることを確認した。一方が増殖の速いがん幹細胞で、もう一方が休眠状態のがん幹細胞だ。休眠状態のがん幹細胞には「p57」という遺伝子が特異的に発現していることが分かった。 休眠状態のがん幹細胞の中のp57遺伝子を発現する細胞を除去した上で抗がん剤治療を試みたところ、除去しなかった場合に比べてがんの再発を高い確率で抑えられることが分かった。この結果から、従来の抗がん剤治療の後に大腸がんが再発する主要な原因がp57発現細胞にあることが判明した。 研究成果は3月8日、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)誌にオンライン掲載された。今後はp57発現細胞の研究をさらに進め、従来の抗がん剤治療だけでは不可能だったがんの根治を目指すとしている。

(笹田)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ