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私→WRC 第35回

RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感

2023年02月11日 15時00分更新

文● 荏崎ろあ(@roa_ezaki) 編集●ASCII

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普段はレースクイーン、ラリーではメカニック
世界的イベントで荏崎ろあが羽ばたく!

 皆さんこんにちは、レースクイーンの荏崎(えざき)ろあです。前回から時間が経ってしまいましたが、今回はラリージャパン 2022のDAY2(11/11)から最終日(11/13)までの様子をメカニック視点でお伝えしていきます。まだ前半の記事を見ていないという方は、ぜひ前半から読んでくださいね(現役RQの荏崎ろあ、WRC・ラリージャパンで世界戦のメカニックデビュー!)。

SUPER GTではレースクイーン、ラリーではメカニックの荏崎ろあです!

 DAY2は深夜? 朝? の3:30には起床して、4:30にサービスパークに到着すると、まだ豊田スタジアムも真っ暗。普段レースクイーン業務で早朝集合することも多いのですが、やはりメカニックの朝はそれとは比較にならないほどの早さです。11月でも早朝はかなり冷え込んでいて、連日作業で疲労が溜まった身体にはこたえます。

朝から多くの人で賑わった豊田スタジアム

 朝イチのサービスAは15分間です。ウェルパインモータースポーツのプジョー・208R2は、6:36にサービスインで、6:51にサービスアウトします。今回のサービスは、前日のSSがキャンセルでまったく走行していないため、タイヤは外さず簡単なチェックのみです。

チーフメカニックの早水さんにいろいろ教えてもらいながら作業をしました。決して怒られているわけではありません

 私は車内に積んであるスペアタイヤを追加でもう1本積む作業をしました。気温や天候によって積むタイヤの本数も種類も変わります。前日のDAY1はSSが1本のみだったので、スペアタイヤは1本にして車両を軽くして臨んでいたのです。SSが1本だけなら、2本以上のパンクでリタイアするリスクも少ないので、2本のスペアタイヤは必要ない、という判断です。

 本日DAY2からは本格的にラリーも始まり、SSの本数や距離も長くなるので、リスクを考慮してスペアタイヤ2本積みにしたのです。

 今回もタイヤマーキングの作業があるので、サービスを途中で抜けてタイヤチェックポイントに向かいます。相変わらずタイヤの重さには苦戦しましたが、ボンネットピンを締める作業には慣れてきました。

一仕事終えたけど
ラリーの1日は始まったばかり

 朝のサービスが終わったら朝食です。とはいえ、この時点でまだ7:00なので今日は長い1日になりそうです。

ラリージャパンは毎日長い1日です

 いよいよスタートしたSS2では、ヒョンデワークスのダニ・ソルド選手の「i20N Rally1」が突然炎上。ハイブリッドシステムから出火したと見られる車両火災は火の回りが早く、車両はすぐに全焼となってしまいました。また、WRC2カテゴリーでチャンピオン争い中のカエタノ・カエタノビッチ選手も心霊スポットで有名な伊勢神トンネルを超えた瞬間の右コーナーでクラッシュ。シュコダ・ファビアRally2 Evoは、ロールケージにもダメージを負う全損状態でリタイアとなりました。

 このようなことがあって、ウェルパインモータースポーツを含む後続車の下位カテゴリー車両はSS2がキャンセルになりました。そして、このSS2でスケジュールが遅れたことにより、SS3もキャンセルに。7台しかタイムを記録できていない状況でSS4に進むこととなりました。

全然走れてないので、無傷でサービスパークに帰ってきました

 キャンセルが多く、ドライバーたちもフラストレーション溜まりそうだなあと思っていたら、SS4はなんと一般車両がコースへ侵入したために中断キャンセル。期待の若手であるサミ・パヤリ選手のシュコダ「ファビアRally2 Evo」がコーナーを抜けると、正面から白いブルーバードが逆走してきたのとのこと。コレは考えただけでも恐ろしいです。ありえない事態です。もちろんFIAのコース管制担当も大激怒。後続車のクルーたちがそのままサービスパークに戻ることがアナウンスされました。

 結局、DAY2午前中も走行できたのは、トップカテゴリーであるRally1車両と、一部のRally2車両のみとなってしまいました。FIAのプライオリティのない下位カテゴリーのクルーは満足に競技することができないままサービスパークに戻る形となり、FIAの世界選手権の厳しさを感じました。

アクシデントだらけの午前中が終わり
ようやく午後から走れるように

 お昼近くになると梅本まどか選手から連絡があり、12:36にサービスインとのことです。今回のサービスBは40分。これまで通り車両のサービステントに誘導をして、作業に入ります。メカニックは3人なので、1人がジャッキアップしている間に、2人で左右片方ずつウマを掛けてタイヤ&ホイールを外します。

タイヤ交換もテキパキ作業します

 今回のセクションもウェルパインの走行順ではすべてSSがキャンセルとなっており、まったく全開走行をしていないため、大きく整備するポイントはありません。ただ、フロントガラスの汚れや窓の曇りは走行に支障をきたすので、念入りに磨きます。

 そのあとのタイヤマーキングでは、観客も朝に比べて増えており、タイヤチェックポイントにもたくさんお客さんが集まっていて、かなり緊張しました。苦手なボンネットピンを固定する作業も、視線が多かったからか少し手こずってしまい、恥ずかしかったです。朝は上手くいっていたのになぁ……。

 さて、サービスBを終えて、タイヤチェックを過ぎて豊田スタジアム出ると、クルーはSS5に向かいます。SS5はSS2のリピートステージで、伊勢神トンネルを舞台にしたコースです。午前中の炎上やクラッシュを受けて、コースを一部短縮して走らせるとのことです。村田選手/梅本選手にとってはこのラリージャパンでの初全開走行となります。

 結果としては無事に走り切ったものの、左フロントタイヤをパンク、ホイールを破損したとの連絡がありました。

ラリーではパンクやホイールの破損は珍しくありません(本人反省中)

 SS6はSS3のリピートステージで稲武の黒田ダムで、こちらも無事に完走。SS7の設楽町はSS4のリピートステージでしたがキャンセルに。SS4走行のときにMスポーツ・フォードのグレイグ・ブリーン選手がクラッシュし、ガードレールが破損された状態で安全性に問題がある、というのがその理由でした。

 最終的にウェルパインモータースポーツにとってのDAY2は、SS2、3、4、5、6、7の計6本のうち4本がキャンセルという不完全燃焼の1日となりました。

いろいろありすぎたDAY2も終了
RQの手作りディナーを食べて回復

 夕方にはDAY2最後のサービスCがあり、SS5で割れてしまったホイールの交換をしました。少し車両をぶつけてしまったようで、右のサイドのステッカーも削れていました。前回の全日本ラリーモントレー(群馬)では、ホイールを1本割っていたものの、車両は無傷でした。そのため、こんなにマシンやパーツが傷ついた状態で帰ってきたのを見るのは初めてだったので少しびっくりしました。

破損してないホイールは綺麗にします

 サービスCは45分で少し長めではありますが、忙しくなるなと感じました。いつも通り誘導して車両を上げます。ホイールの破損に加えて、各種センサー異常でエンジン内で噴いてる燃料が濃くなっているようです。

 この辺は私もどうしてこうなってしまったのか、どうすればいのか分からず見守ることしかできません。自分の分からない分野の作業があるとき、もっと知識を付けたいなといつも思います。

 でも、サービス作業が終わったら、レースクイーンの桐島しずくちゃんと瀬谷ひかるちゃんが夕飯を作ってくれてうれしい驚きです。なんと、水道のないサービスパークでデミ煮込みハンバーグを作ってくれました。現役レースクイーン(私も現役ですが)の手作りご飯は言うまでもなく美味しくて、最高の気分でDAY2を終えられました!

現役レースクイーン2人による「デミ煮込みハンバーグ」が! 絶品でした!

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