パナソニックからフルサイズミラーレス機の最新モデル「LUMIX S5Ⅱ」が発売される。2020年に登場した前モデル「S5」は、バランスが良いスタンダードモデルで評価の高い一台。今回のモデルチェンジでどのように進化したのかは興味深いところだ。
2月16日に発売予定。WEB直販価格はボディーのみ24万7500円。写真のレンズ「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」とのレンズキットは28万1160円。さらに「LUMIX S 50mm F1.8」を追加したダブルレンズキット(29万9970円)もラインナップされている。
撮像素子も画像エンジンもデザインも一新で
フルサイズカメラの完成形に
ボディーサイズは全体的に数ミリ程度のアップはあるが、ほぼ同等。ただ手にして感じたのがグリップのホールド感の変化だ。形状が少し細身になり、シャッターボタンの角度も改良され、格段に握りやすくなっていた。それほど小型軽量とはいえないサイズだが、このグリップのおかげで長時間撮り歩いても苦にならなかった。
ボディーサイズは134.3(W)×102.3(H)×90.1(D)mm、重量はバッテリーとメディア1枚で約740g。前モデルは132.6(W)×97.1(H)×81.9(D)mm、重量714gだったので少しサイズアップしている。
グリップの形状が改良されたおかげで、ホールド感が向上している。
上面や背面のダイヤルやボタンの配置も変わりなく、形状が異なり指先の感覚で確認できる上面の3つボタンや、AFモードや測距エリア切換を統合したファインダー右横のレバー&ボタン、上面左肩のドライブモードダイヤルなど、前モデルから受け継がれた優れた操作性は相変わらず快適だ。
ファインダー右横にモードダイヤルと電源スイッチ、左横にはドライブダイヤルを備え、シャッターボタンの後ろには3つのボタンが並ぶ。
3つ並んだボタンはストロークの深さ突起の有無など、それぞれ押し心地が異なる。このアイディアを思い付いた人は偉大だ。
背面の操作系も前モデルと同じ配置なので、買い替えても迷わず使うことができる。
AF-S/C/MFの選択レバーと、AF測距エリアの選択ボタンが同じ位置にあり、AF関連の設定をスムーズにおこなえる。
単独のドライブダイヤルを備え、単写や連写、セルフタイマーなどを即座に切り換えられる。
とはいえボディー周りで変更点はある。まずストラップの取り付け部がボディーと一体型の構造に変更された。従来の三角環の金具では動画撮影に音声を同録する際に、音が気になる場合もあるので、その為の配慮だろう。
ストラップは金具を使わず、直接ボディーに取り付けるように変更。その為か後コマンドダイヤルも少し小型になった。
背面のAFセレクターも突起のないフラットな形状に変更し、長時間操作しても指先が痛くならないのが嬉しい。さらに斜め方向の入力にも対応した。実際に操作してみるとAF測距点の移動がよりスムーズになっている。
AFセレクターはフラットな形状になり、上下左右に斜めを加えた8方向に対応した。
またファインダー部には冷却ファンとヒートシンクが搭載され、前モデルでは30分だった動画の連続記録時間が無制限になった。側面端子のHDMIがTypeAに変更したことと合わせ、動画撮影派には嬉しい進化だ。
冷却ファンはファインダーの下部から吸気し、側面から排気する構造。ファン動作は温度による自動調整に、手動でON/OFFの設定も可能。
側面の端子類、上段がマイクとヘッドフォン、下段はTypeA のHDMIとUSB-C (USB3.2 GEN2)。
EVFも解像度が236万ドットから368万ドットに、倍率も0.74倍から0.78倍に向上している。前モデルでも特に視認性に不満は無かったが、見比べてみると表示の滑らかさで違いを感じることができる。
ファン搭載の為、大きくなったファインダー部だが、EVFのスペックも368万ドット、倍率0.78倍に向上。アイセンサーの位置も下部から上部に変更されている。
メディアはUHS-Ⅱ対応のSDデュアルスロットを採用。バッテリーは前モデルと同じ「DMW-BLK22」で共用ができる。公称の撮影可能枚数はファインダー撮影時で470枚から370枚と減少しているが、実際にRAW+JPEGで街中をスナップで撮り歩いてみると、416カット撮影することができたので、スタミナは標準的といえるだろう。
静止画/動画ともにバックアップ記録が可能なSDのデュアルスロット。
バッテリーは共通だが、前モデルでは付属されていた充電器「DMW-BTC15」(1万1800円)は別売になった。
像面位相差で迷わない高速AFに
新エンジンで画質もUPだ
機能面の進化でもっともアピールしているのが、LUMIXシリーズ初の像面位相差AFの搭載。従来のAFより動体の追従性能が向上した。実際に撮影してみると、向かってくる電車など規則的に動く被写体なら問題なく追随してくれた。
AF-Cの追尾AFで向かってくる電車の運転席に測距点を合わせ連写(メカシャッター秒7コマ)で撮影。使用レンズ「LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6」・絞りF8・シャッタースピード1/200秒・ISO200・以下追記がなり限り共通・ホワイトバランスオート・フォトスタイル=スタンダード・JPEG FINE。
上の一連の写真からGIFアニメを作成。こうして見ると、しっかり追随してくれるのがわかる。
連写はフル解像度のRAW+JPEGでメカシャッターは秒7コマ、電子シャッターなら秒30コマでAF追随撮影が可能だ。バッファも増強されUHS-1のSDカードでもメカシャッターは228枚、電子シャッターは200枚(ともにRAW+JPEG)まで連続して撮影し続けることができた。
ただし積層型撮像素子ではないので電子シャッターでは動体歪みが発生する。また前モデルの高速連写機能「6K/4Kフォト」(1800万画素相当で秒30コマ、800万画素相当で秒60コマの画像からJPEGで書きだしが可能)では搭載されていたプリ連写が省かれてしまったのは残念だ。
メカシャッター(写真上)と電子シャッター(写真下)の連写撮影の比較。比較的抑制されてはいるが、多少の歪みは発生する。
AFの認識機能は人物と動物(鳥も含む)に対応している。試しに動物認識をONにして飛んでいる鳥を電子シャッターの秒30コマ連写で撮影してみた。食い付きや急な動きへの追随などはフラッグシップの高速モデルに及ばないものの、スタンダード機のAF性能としては高速だ。
秒30コマ連写で飛んでいる鳥を撮影した写真からGIFアニメを作成。距離があって被写体が小さめなのはお許しを。使用レンズ「LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6」・絞りF5.6・シャッタースピード1/3200秒・ISO1600。
上の連写写真の中の一枚を拡大してみた。しっかりとピントが合い、何かを加えているのも確認できる・・・・なお野生動物への餌やりは禁止!
画素数は変わらず2420万画素と最近のフルサイズ機としては控えめだが、細部を拡大して見ても精細な解像感で画質に不満は感じない。また色乗りの良い発色や明暗差の強い状況でも滑らかに再現される階調が好印象だ。
動物認識で撮影したスズメ。拡大して見ると、コワいくらい毛並みやクチバシが精細に解像されている。使用レンズ「LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6」・絞りF8・シャッタースピード1/200秒・ISO200。
ヌケのよい発色のおかげで、建物の赤と空の青さの対比が良い感じ。「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」・絞りF8・シャッタースピード1/200秒・ISO100。
上の写真と同じ建物を、場所を移動して半逆光で撮影。反射で照らされた明部も粘り強く再現され階調の豊富さがわかる。「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」・絞りF8・シャッタースピード1/250秒・ISO100。
高感度は常用でISO51200、拡張で204800まで設定ができる。実際の撮影した写真を見るとISO6400程度までは高感度であることを感じさせず、ISO12800を超えるとノイズ処理による解像感低下はあるが、細部の描写を気にしなければ常用を超えるISO102400でもシーンによっては実用レベルだ。
感度別に撮影した写真の一部を等倍に拡大して比較。左上からISO1600・ISO3200・ISO6400・ISO12800・ISO25600・ISO51200・ISO102400(拡張感度)・ISO204800(拡張感度)。「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」・絞りF5.6・ノイズ処理標準。
ISO12800で撮影、ノイズは目立たず解像感も保持されている。「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」・絞りF5.6・シャッタースピード1/15秒・ノイズ処理標準。
ISO25600で撮影。厳密に見れば少しノイズ処理による解像感低下はあるが、さほど気にならないレベル。「「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」・絞りF5.6・シャッタースピード1/15秒・ノイズ処理標準。
常用感度最高のISO51200で撮影。解像感は少し低下したがノイズは上手く抑えられている。「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」・絞りF5.6・シャッタースピード1/25秒・ノイズ処理標準。
拡張感度のISO102400で撮影。光量が豊富な状況なら十分実用できる画質だ。「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」・絞りF5.6・シャッタースピード1/640秒・ノイズ処理標準。
キットレンズの標準ズームは前モデル同様「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」。一般的な標準ズームより広角側にシフトした焦点距離が特徴。20mmスタートのズームとしてはコンパクトで、風景やスナップなど幅広いシーンで使いやすい。
「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」を装着した状態。最短時の全長は87.2mmとコンパクトなので収納もしやすい。
「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」の広角20mm(写真上)と一般的な標準ズームの24mm(写真下)の画角を比較。写る範囲はもちろんだが、遠近感の違いも重要。絞りF5.6・シャッタースピード1/250秒・ISO100。
「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」の望遠側60mm、絞りF5.6で撮影。それほど明るいF値ではないが、被写体に近寄ればそれなりにボケてくれる。シャッタースピード1/250秒・ISO100。
「LUMIX S 50mm F1.8」が付属するダブルレンズキットも注目。やはりフルサイズ機にはボケを求めるユーザーも多いはず。手頃なサイズ感で標準ズームより2絞り以上明るいF値のボケが味わえる単焦点レンズが、通常のレンズキットに2万円ちょっとプラスするだけで手に入るのは超絶お得だ。
「LUMIX S 50mm F1.8」を装着した状態。300gと軽量なので気軽にスナップを楽しめる。
「LUMIX S 50mm F1.8」で撮影。絞り開放でもピント部はしっかり解像されている。絞りF1.8・シャッタースピード1/3200秒・ISO100。
「LUMIX S 50mm F1.8」で撮影。明るい開放F値は暗い場所でも活躍してくれる。絞りF1.8・シャッタースピード1/60秒・ISO1600。
「LUMIX S 50mm F1.8」で撮影。目についた何気ない街中の景色を引き立ててくれるのも背景ボケの魅力。絞りF1.8・シャッタースピード1/125秒・ISO800。
小型軽量で寄りにも強い超広角ズーム
LUMIX S 14-28mm F4-5.6
3月16日に発売予定の「LUMIX S 14-28mm F4-5.6」(10万7800円)も魅力的なレンズである。超広角とは思えないほど小型軽量で、前枠にフィルター(77mm径)が装着可能なのもポイント。ズーム全域で最短15cmの近接撮影も可能で広角マクロも楽しめるLマウントユーザー注目の一本だ。
「LUMIX S 14-28mm F4-5.6」を装着した状態。重量345gとフルサイズをカバーする14mmスタートのズームレンズとしては驚異的な軽さ。
「LUMIX S 14-28mm F4-5.6」の広角側14mmで撮影。広い画角と強調された遠近感が超広角の面白さ。絞りF8・シャッタースピード1/250秒・ISO100。
「LUMIX S 14-28mm F4-5.6」の広角側14mm、最短撮影距離近くで撮影。主題は大きく背景も広く写るのが広角マクロの特徴だ。絞りF4・シャッタースピード1/640秒・ISO100。
「LUMIX S 14-28mm F4-5.6」の広角側14mm、太陽が直接写り込む逆光で撮影。さすがにゴーストは発生したが、フレアほとんど感じない。絞りF4・シャッタースピード1/640秒・ISO100。
手ブレ補正は動画の手持ち撮影時に効果を発揮する「アクティブI.S」を新搭載したことがアピールされてはいるが、静止画でもボディー単体で5段分、手ブレ補正搭載レンズと協調補正では6.5段分の効果が得られる。
キットレンズの「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」で試してみると、広角側の遠景なら1/2秒、望遠側近景でも1/8秒程度までは、かなりの確率でブレは防げたので、フルサイズ機としては十分満足できる補正効果だ。
主に動画撮影機能が強化された感のあるモデルチェンジだが、静止画メインのユーザーにとっても扱いやすい操作性や、解像感と階調に高感度も優れた画質、さらにお手軽な価格も含め、やはりバランスの良い一台だ。前モデルと同様にフルサイズで本気で写真や動画を撮りたいユーザーにとって、最適のカメラなのである。
「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」の広角側遠景でスローシャッターを手持ちでチャレンジ。少し怪しいところはあるが、頑張れば1秒でもブレずに撮れることもあった。絞りF11・シャッタースピード1秒・ISO1600。
「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」の望遠側近景(約1m)で撮影。1/4秒でもブレなかった一枚。ただし確率はかなり低い。絞りF5.6・シャッタースピード1秒・ISO2000。