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マイクロソフト「Empowering Japan's Future」で語られた、DX競争力を高める“5つのポイント”

「日本企業のDX成功には『開発者体験』が必要」日本CTO協会・小野氏

2022年12月27日 08時00分更新

文● 指田昌夫 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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「デジタル化だけ」に注目が集まる現状、「2つのDX」が必要

 2022年11月16日に日本マイクロソフトが開催したビジネスイベント「Empowering Japan's Future」は、米マイクロソフト CEOのサティア・ナデラ氏が4年ぶりに来日、講演したことで話題となった。

 ナデラ氏の講演に続き、壇上では日本マイクロソフト 執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏が、日本CTO協会 理事の小野和俊氏を招き、「日本企業がDXに成功するために必要な要素」についてディスカッションした。

ビジネスイベント「Empowering Japan's Future」において「日本企業がDXに成功するために必要な要素」を語るディスカッション

日本マイクロソフト 執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏、日本CTO協会 理事(クレディセゾン 専務執行役員 CTO 兼 CIO)の小野和俊氏

 小野氏はクレディセゾンでCTOとして自社のDXを主導する傍ら、国内90社の会員企業を擁する日本CTO協会の理事も務め、日本企業のデジタル変革を支援する活動も行っている。

 岡嵜氏は最初に、データを引用しながら日本企業がDXを加速させるための課題を取り上げた。米国や西欧諸国と比較して日本は時間あたりの労働生産性が低いこと、日本はエンドユーザー企業に所属しているIT技術者が少なくSIer側に多いことなどを挙げたうえで、「人材が少ないなかで企業はDXをどう進めたらいいか悩んでいる」と指摘する。

 マイクロソフトでは、DXを成功させるためのキーワードとして「テックインテンシティ(Tech Intensity)」という言葉を掲げている。「クラウド、AIなどの技術を正しく適用し、かつそれを扱える人材、組織を整える。そしてそれを安心安全に使っていく。それがテックインテンシティだ」(岡嵜氏)。

「テックインテンシティ(Tech Intensity)」とは(マイクロソフトブログより

 小野氏もマイクロソフトのこの考えに同意し、「デジタル化」だけに注目が集まる今の状況を問題視する。

 「日本CTO協会でも『DXには2つの意味がある』と定義している。1つは企業のデジタル技術による変革で、一般的に『企業のデジタル化』といわれている部分。もう1つは、先端開発者が働きやすく、高速な開発ができる環境があるかという『開発者体験』の向上だ。この2つを一体で実現することで、はじめてDXは加速し、成功すると考えている」(小野氏)

デジタル時代の企業には「2つのDX」が不可欠と説明する

 小野氏はさらにこう続けた。「仮に企業がデジタル化を進める際に、デザイン思考で業務プロセスの再構築を図ろうとしても、開発者の環境にDevOpsやマイクロサービスアーキテクチャなどの考え方が実装されていなければ、素早い開発や改善を行うことは難しい。日本CTO協会では、開発者の環境改善がデジタル経営に非常に重要だということを訴え続けている」。

DX競争力を高めるガイドライン「5つのポイント」とは

 日本CTO協会では、企業のDXを進めていく競争力を示すガイドラインとして「DXクライテリア」を定めている。これは、デジタル技術を経営に生かしていくために企業が取り組まなければいけない5つのテーマを整理したものだ。

 「正しい尺度がないと、企業は例えば『エンジニアの数が何人だから』といった、本来の指標でない数字でDXの進展を把握しようする。そうした誤解を解き、『技術の観点からDXの進展を図る指標』を作った」(小野氏)

 小野氏が説明した、DXクライテリアの5つのポイントを要約すると、次のようになる。

(1)組織文化と見えない投資:従来の組織階層にとらわれない、心理的安全性の高い開発環境の実現と、開発者体験という目に見えない部分への投資の価値を認めること。

(2)タスク型ダイバーシティ:職能に閉じた組織でなく、プロジェクトに応じてさまざまな職種の人が集まる組織をつくること。ITスタートアップはタスク型ダイバーシティが高いが、組織が大きくなるにつれ下がる傾向がある。

(3)メリハリのあるIT戦略:コモディティ化した非競争領域は、自社開発をする意味がないことを理解し、標準的なツールを利用する。そのぶん、競争領域に開発力を集中させる。

(4)組織学習とアンラーニング:組織には評価のための数字を追うのでなく、事実を基に洞察を得て学び、改善するサイクルが必要。また、古い常識や成功体験を捨て、学び直す「アンラーニング」を採り入れる。

(5)自己診断と市場比較:以上4点を具体的な質問から客観的に診断し、自社の立ち位置を明らかにする。

 小野氏は実際に、デジタル事業を展開している日本企業37社に対して、このDXクライテリアによるスコアリングを行った結果を紹介した。点数の平均値は「320点中165.8点」、達成率は「51.8%」だった。

 「回答企業には日本CTO協会のメンバー企業がやや多いなど、DXに対して前向きな企業に寄っている可能性がある。そのため、この平均値を超えていれば、自社のDXは競争力がある状態だといえる」(小野氏)

 ただし小野氏の感覚では、日本企業全体を見たときに「達成率が50%を超える企業は、5%程度しか存在しないだろう」と見ているという。

日本CTO協会による調査より。達成率50%程度であれば「2つのDX」についての競争力があると考えられる

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