ピットウォーク中にレースシムで走りを見せた冨林選手
ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankookの第3戦 SUGOスーパー耐久レースin岡山が10月15~16日に岡山国際サーキットで行なわれ、ASCII.jpが応援する冨林勇佑選手の39号車「エアバスターWinmax RC350 55ガレージ TWS」は、ST-3クラス3位フィニッシュを果たした。
今季からST-1~ST-5クラスは、指定された1戦のみ“不参加”となり、ST-3クラスは9月のもてぎ大会がこれに該当した。これにより、39号車メンバーにとっては7月末のオートポリス大会以来、約2ヵ月半ぶりのレースとなった。
そんな岡山大会では、土曜日と日曜日にピットウォークが開催されたのだが、そこに一際目を引くものが登場した。ZENKAI RACINGのレーシングシミュレーターが設置され、eスポーツ出身の冨林が、その走りを披露していた。
グランツーリスモで世界チャンピオンになり、eスポーツからリアルレースの世界にきた冨林。特に昨年から今年にかけての活躍は目覚ましいものがあるのだが、デルタの田中代表は「こういう時だからこそ、一度原点に戻ることが重要だ」と、eスポーツ出身ドライバーであるということを、改めてアピールしていくというのが狙いだ。
その効果は大きく、冨林がシミュレーターに乗り込むと、周囲には多くのファンが集まり、その走りに釘付けになっている姿がみられ、これをきっかけにシミュレーターに興味を持つ人もいたようだ。
ライバルの先行を許してしまった予選
今季は52号車クラウンRSの先行を許し、逆転チャンピオンのためにも岡山大会で高得点がほしい39号車。予選ではエース冨林が先陣を切ってタイムアタックに向かう。
まずはAドライバー予選を冨林が担当。セッション序盤からペースを上げてタイムアタックに入っていき、1分40秒035をマークしたが、ライバルの52号車はそれを0.2秒上回るタイムを記録。結果的に冨林はAドライバー予選3番手でセッションを終えた。
もっとも警戒しなければいけない52号車の先行を許した39号車だが、タイム差を考えるとBドライバー予選で逆転は十分に可能。今回は伊藤がBドライバーとしてマシンに乗り込み、タイムアタックに出かけた。
各コーナーを限界まで攻めていくアタックを披露した伊藤鷹志だったのだが、最終コーナーを立ち上がったところで、コントロールラインの位置を見誤ってしまい、実際のラインの300mほど手前の位置でアクセルを抜いてしまった。これによるタイムロスも影響して、1分41秒290のベストタイムで6番手。総合ではST-3クラス5番手という結果になった。
ただ、そのミスがなかったとしても上位進出は難しい状況だったのは確か。翌日の決勝で少しでもポジションを上げるため、デルタの田中代表をはじめ、チーム・ドライバーたちは頭を悩ませていた。
波乱のスタートになった決勝レース
表彰台獲得も最終戦は厳しいものに
今回の岡山大会は、全体を2つのグループに分けて、それぞれ3時間耐久でレースが争われるというフォーマットで開催され、そのうちST-3クラスが出走するGr.2は午前8時30分と非常に早い時間からのレーススタートとなった。
5番グリッドから逆転を目指す39号車は、石井をスタートドライバーに起用し、レース展開に応じてドライバー交代をしていく作戦をとった。
フォーメーションラップ中にST-5クラスの1台がクラッシュを喫し、エクストラフォーメーションラップとして、そのままセーフティカーが先導。予定よりも約15分近く遅い8時45分にグリーンフラッグが振られてレースがスタートした。
39号車の石井は序盤から積極的に前のマシンに勝負を仕掛けていき、2周目のアトウッドコーナーで25号車フェアレディZに並びかけると、バックストレート終わりのヘアピンでオーバーテイクし4番手に浮上した。その後も、表彰台圏内を走る3台を追いかけていったが、ここで予想外の事態が起こる。
スタートから約1時間が経過しようとしたところで、52号車と15号車フェアレディZが接触。これにより15号車がヘアピンのグラベルにストップしてしまった。
ちょうど、この時に39号車はセクター3に入るところを走行しており、デルタ田中代表はすぐにピットインを決断。石井はそのままピットに入り、伊藤にドライバーを交代した。ちょうどこの瞬間、フルコースイエロー(FCY)となり、全区間追い越し禁止で速度制限が設けられると同時に、ピットインもできなくなる。39号車はそれを見越して、FCYが導入される直前でピットインをしていたため、大きなアドバンテージを得ることに成功したのだ。
しかし、アクシデント車両の回収が難航してしまい、セーフティーカー先導状態に切り替えられた。このタイミングでライバルの車両も1回目のピットを終えたため、39号車はトップには立てたものの、背後にライバルたちがいる状況ということで、FCYで得たアドバンテージが消える形となってしまった。
38周目を迎えるところで、レース再開となると、伊藤は必死に逃げようとするが、好ペースでライバルが接近し、39号車は瞬く間に3番手へ後退し、ライバルとの差も離されてしまった
ここのわずかな望みをかけて、チェッカーまで残り1時間を切った47周目に2回目のピットストップを行ない、エースの冨林が乗車。トップとの差は41秒あったが、少しでも前に近づこうと、粘り強く周回を重ねた。
しかし、その差はなかなか縮まらず、結果的に3位でフィニッシュ。前回に続いて表彰台は獲得したが、チャンピオン争いを考えると、痛い敗戦となった。
関係者コメント
デルタモータースポーツ 田中延男 代表
1回目のピットのタイミングは本当に絶妙でした。クラッシュの映像が飛び込んできて、すぐに石井に無線で指示して、本当にギリギリのタイミングで入ることができました。あれで、一瞬“勝った!”と思ったんですけど……、その後の流れが良くなかったですね。ただ、52号車にポール・トゥ・ウィンをされなかったので、最終戦での逆転の可能性が残りました。鈴鹿はできる限りのことをやって、チャンピオン獲得を目指します。
関係者コメント
冨林勇佑選手
特にコメントすることは……ないです。52号車が速すぎたというだけでした。特に誰かがミスをしたわけでもなく、できることをやったのですが、相手が強かったですね。あとは強いて言えば、SC導入で僕たちがFCYでトクをした分が帳消しになってしまったこと。次回の鈴鹿もキツいかもしれませんが、開幕戦は速かったので、そこに期待をしていきたいなと思います。ポイント的には自力のチャンピオンはないので、とにかく前だけを走って、奇跡を願うだけです。
関係者コメント
伊藤鷹志選手
予選では自分がコントロールラインを間違えて、アクセルを抜いてしまったことで、タイムが出なくて、それで運命を変えてしまったところがあったので、申し訳ないことをしてしまいました。今後はそういうつまらないミスをしないようにしたいです。決勝の自分のスティントを振り返ると、もうちょっと52号車を抑えるべきだったなと思います。それも踏まえて、鈴鹿は“勝つ”それだけです。
関係者コメント
石井宏尚選手
僕のスティントとしては、スタート直後の25号車をもうちょっと早く攻略したかったなという思いがあります。ライバルたちはその辺を早く処理できますけど、僕に関してはそこの経験が少ないので反省点かなと思いますし、次に活かしたいです。最終戦の鈴鹿は、とにかくやるだけなので、全部を出し切りたいです。
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