折りたたみスマートフォンメーカーと言えばサムスンの名前が真っ先に思い浮かびますが、日本ではモトローラも過去に「razr」を出していましたし、ファーウェイは「Mate X」や「Pokcet」シリーズを海外で展開中、さらにシャオミ、OPPO、vivoなどが中国で製品を出しています。しかし、世界で最初に折りたたみスマートフォンを発表したメーカーを覚えているでしょうか。それは中国の新興企業、「Royole(ロヨレ)」です。
Royoleは2018年10月31日に世界初の折りたたみスマートフォン「FlexPai」を発表しました。サムスンが折りたたみスマートフォンを発表したの同年11月7日ですから、それより約1週間も早かったのです。しかしFlexPaiはディスプレーを曲げたヒンジ部分の半径が大きく、折りたたみ構造としての完成度は低いものでした。
FlexPaiの後にサムスンが「Galaxy Foldシリーズ」、ファーウェイが「Mate Xシリーズ」をリリースするとFlexPaiへの注目度は一気に下がってしまいました。そこでRoyoleは閉じたときに隙間をなくしたゼロギャップモデルの「FlexPai 2」を2020年9月に発売。しかし時すでに遅く、折りたたみスマートフォンの小さな市場はサムスンとファーウェイの後継機が市場を寡占し、Royoleの入り込むすきはありませんでした。
Royoleは負けじとカメラをポップアップ式にした後継モデル「Royole F3」を開発しました。同モデルは2022年1月にラスベガスで開催されたCESの「CES 2022 Innovation Award」を受賞。しかし新型コロナウィルスの影響もあってビジネス環境は厳しさを増し、Royoleは2021年末時点で資金繰りが悪化し、現在は会社の存続も危ぶまれています。そんな事情からか、Royole F3は市場に出てくることはありませんでした。
このRoyole F3、実はレンダリング画像だけで製品は開発されていないのではないかという疑惑もありました。ところが2022年9月に、ひょんなことからそっくりな製品が販売されていることが判明。ディスプレーを山型に折る構造、背面の上にある2つの四角い窓などはRoyole F3のデザインと同じです。このようなディスプレーを独自に開発するメーカーがあるとは思えませんから、ベースモデルはRolye F3であることは間違いないでしょう。
この製品はラグジュアリースマートフォンを展開するVERTUの「VERTU Fold 3」。実はVERTUはFlexPai 2も自社ブランドの「VERTU 5G Foldable」として過去に発売しました。その関係からRoyoleのモデルを今回も自社製品に採用したのでしょう。
VERTU Fold 3の主なスペックはディスプレーが7.2型(1620x1520ドット)、チップセットはSnapdragon 765Gでメモリー8GBにストレージ256GB、バッテリーは3500mAhでカメラは4800万画素+1600万画素超広角、フロントカメラは2000万画素です。ラグジュアリー製品らしく本体を覆う革の種類が豊富で、高級感ある仕上げとなっています。
フロントカメラは最近ほとんど見なくなったポップアップ式ですが、これで折りたたみディスプレー全面を表示エリアとすることができます。写真を撮るときは本体を折りたためばメインカメラを自撮り用にも使えるので、フロントカメラはこの程度のもので十分なのでしょう。
VERTU Fold 3の価格は4万2800元(約85万8000円)、ヒマラヤクロコダイルレザー版が10万9800元(約220万円)。価格はさすがVERTUというべきか、超高級品レベルになっています。Royoleの第三世代目となる折りたたみディスプレイをぜひ試したいのですが、現時点ではVERTUのこの製品を買うしか方法はありません。Royoleのニュースを中国のネットで検索すると思わしくない上方ばかりしか見当たらず、RoyoleからF3が出てくることは期待できないでしょう。せめて中国に入国できればVERTUの店でFold 3に振れることができるのですが、果たしていつになるでしょうか。
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