先日、シャオミが中国で発表したコンセプトモデル「Xiaomi 12S Ultra Concept」に驚いた人も多いのではないでしょうか? このモデルはなんと背面にカメラのレンズを装着できるスマートフォンなのです。現実的にあってもよさそうで、なかなか出てこなかった「レンズ交換式スマホ」ですが、シャオミならなんだかやってくれそうだと期待が持てます。なお、実際にこのモデルは10台程度製造され、撮影テストも行なわれたとのこと。
とはいえ、レンズを装着するにはしっかりしたマウントが必要です。コンセプトモデルを見るとたしかにカメラ部分を覆う全体の円形台座の円周部分にレンズを固定できるマウントが見えますが、スマートフォンの本体側の強度がもつかちょっと心配になります。この形状を見ると、ベースとなる「Xiaomi 12S Ultra」のカメラ部分の円形台座デザインは将来のレンズ交換式モデルへの布石だったのかもしれません。
それでは実際にライカのレンズを装着できるシャオミのスマートフォンは、市場に出てくるのでしょうか? その可能性は非常に少ないと筆者は考えます。最大の理由は「ライカとコラボした」という点です。ファーウェイがライカと組んだことでスマホのカメラ技術を著しく向上させ、一時は世界シェア1位になるなど製品品質とブランド力を高めました。シャオミのスマートフォンも数年内に他社が追いつけないほどのカメラ技術を搭載するかもしれません。
シャオミにとってライカとの協業は世界1位を狙うために必須なのです。しかしそのコラボがレンズ交換式スマートフォンの登場を阻害する原因になるとも考えられるのです。
高いカメラ性能を持つシャオミのスマートフォンに、ライカのレンズが装着可能になったとして、ではどれくらいのユーザーが実際にライカのレンズを購入して利用するでしょうか? デジタルカメラのレンズはスマートフォン以上に性能差があり価格はピンキリです。そしてライカのレンズはとても高価なのです。価格比較サイトでライカのレンズの価格を見ると10万円以下のものは見当たりません。レンズ数本揃えればそこそこの中古車が買えてしまうレベルです。ライカのレンズは一般的なコンシューマー向けの製品ではないのです。
そしてライカのレンズを装着できるスマートフォンとなれば、質感も上質なものが求められるでしょうし、耐久性や信頼性も重要視されます。そうなると今のシャオミのスマートフォンにレンズマウントを取り付けたくらいではバランスの取れない製品となってしまいます。かといってハイレベルな要求を満たせば本体価格は数十万円になるでしょう。コンシューマー向け製品を作っているシャオミの製品の中では、異質なモデルとなってしまうのです。
マイクロフォーサーズなど、ほかのレンズが装着できるスマートフォンであれば、価格はもう少し抑えられるかもしれません。しかしライカとコラボした上に最高の写真体験を提供するスマートフォンとなれば、やはりライカのレンズが装着できるべきでしょう。シャオミとしては高級スマートフォンブランドを新たに作り、そちらで販売するという道も考えているかもしれません。
過去の例を見れば、実はノキアが似たようなジレンマを解決したことがありました。ノキアは高級仕上げの携帯電話「8000シリーズ」を販売していましたが、消費者の「もっと高級なものを」という声に応えるには製造コストなどを考えると対応はできません。
そこで高級携帯電話部門としてプレミアム携帯電話メーカー「VERTU(ヴァーチュ)」を立ち上げました。VERTUは本体に金や銀、プラチナを採用。ディスプレーはサファイアグラスで覆い10キーの下にはボールベアリングを入れて、耐久性と快適な感触を両立。また本革やダイヤモンドで本体を覆うなど、コンシューマー向けの製品では不可能な贅沢、かつ本物志向のラグジュアリーモデルとして富裕層に受け入れらました。世界に数台しかない数億円のモデルを出したこともあったほどです。
しかし、携帯電話はIT製品であり、2年もすれば技術が陳腐化してしまいます。購入後末永く使うということができないため、ユーザー離れがおきて2017年に倒産。2018年に中国資本で再スタートを切っています。
VERTUの例を見るとシャオミがレンズ交換式の本格的な「カメラスマホ」を出すために別ブランドや別会社を立ち上げることは現実味があります。ですが、よくよく考えてみればシャオミのコラボ先はカメラメーカーであるライカです。つまりライカ自らがシャオミのスマートフォンをベースに、ライカブランドのレンズ交換式のスマートフォンを出すという可能性も十分あるかもしれません。
ライカはすでにシャープ「AQUOS R7」ベースのスマートフォン「Leitz Phone 1」を日本で出しています。ライカがスマートフォン市場に参入したということは、数年でこの事業を終わりにするような安易な考えではなく、10年先までを見越しているとも考えられるでしょう。
Xiaomi 12S Ultra Conceptを今の時期に見せたのは、シャオミとライカのコラボレーションを改めて世間に広げたいという考えと、ライカのレンズがスマートフォンで使える時代が遠くない時期に来るということを示唆したかったのかもしれません。シャオミが過去に披露したコンセプトモデルの多くは市場に出てきませんでしたが、レンズ交換式スマートフォンは何らかの形で出してほしいですね。
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