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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第692回

フランスの新興企業が開発したIoT向けチップGAP AIプロセッサーの昨今

2022年11月07日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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 久々のAIプロセッサーであるが、今回はフランスのGreenwaves Technologiesが提供するGAPシリーズチップを取り上げたい。ただ、その前に連載684回のアップデートというかニュースを1つご紹介しよう。

TSMCがBirenのBR100/BR104の生産を中断

 タイトルのとおりなのだが、10月24日のTAIPEI TIMES(台北時報)Bloombergが一斉に、TSMCがBiren TechnologyのBR100/104の生産を中止したことを報道した。

Biren TechnologyのBR100

 公式な情報ではないのでTSMC、Biren Technology共に今のところ一切リリースを出していないのだが、そもそも現在米国は中国に対して半導体技術の規制を厳しくしており、8月末には米国当局がNVIDIAにA100およびH100の輸出を停止することを要請したという報道があったほどだ。

 筆者が連載684回でも説明したように、BR100はNVIDIA A100を上回る性能を発揮するとBiren Technologyは主張しており、仮にこれを野放しにするとA100/H100の輸出規制の意味がなくなってしまう。このためにTSMCがBR100/104の製造を自主規制したということらしい。

BR100はA100を2.4~2.8倍上回る性能

 連載684回の最後で「こうしたハイエンドGPGPUにはピーク性能ではおよばないが、その分安ければ“Poorman's DGX”的な位置付けで売れそうには思う。」と書いたが、当面米国による中国向けの半導体技術の輸出規制が解けることはない。

 しかもウクライナ戦争に絡み、中国からロシアに電子機器が輸出されているという話が報じられている現状では、厳しくなることはあっても緩くなることは考えにくいことを考えると、BR100/104が近い将来に量産が復活する望みは非常に薄いだろう。

RISC-Vコア「だけ」のGAP8とGAP9

Greenwaves TechnologiesのGAP8

 ということで今週の本題はフランスのGreenwaves TechnologiesのGAP8とGAP9である。同社は2014年にフランスのグルノーブルで設立された。

 余談だがグルノーブルはアルプスの都と言う別名がある、要するにアルプスの山の中の都市であるが、STMicroelectronicsが工場をここに置いており(Google Mapで見ると見事にモザイクがかかっているし、もちろんストリートビューでも見えない)、その北西にはESRF(欧州シンクロトロン放射光研究所)が位置する。その脇にはGIANT(Grenoble Innovation for Advanced New Technologies)が、またSTMicroelectronicsのすぐ南東にはグルノーブル理工科大学があり、フランスにおける科学や電子産業の中心地の1つとしていいだろう。

 創業者であるDenis Mestdagh氏はSTMicroelectronicsのディレクターやST-Ericcsonの最高技術責任者、CEA(フランス原子力・代替エネルギー庁)の特別研究員などを歴任した後でGreenwaves Technologiesを設立、2019年まで最高戦略責任者を務めて離脱された。

 ただ共同創業者のLoic Lietar氏(最高経営責任者)とEric Flamand氏(最高技術責任者)、Joel Cambonie氏(開発部門責任者)は現在も同社におられる。2016年の時点では創業者4人を含めて10人のスタッフと5人のパートタイム研究者だった同社も2019年には25人のスタッフを抱え、現在は45人+1匹(Chief Mascot Officerだそうである)から構成される。

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