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絶滅危惧鳥類からiPS細胞を樹立、保全研究で前進=環境研など

2022年10月31日 06時40分更新

文● MIT Technology Review Japan

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国立環境研究所などの共同研究チームは、独自に開発した手法を用いて、日本国内に生息する絶滅危惧種である、ヤンバルクイナ、ライチョウ、シマフクロウ、ニホンイヌワシからiPS細胞(人工多能性幹細胞)を樹立するのに成功した。絶滅危惧鳥類のiPS細胞を樹立した報告は世界で初めてであり、絶滅危惧種保全研究の新展開が期待される。

国立環境研究所などの共同研究チームは、独自に開発した手法を用いて、日本国内に生息する絶滅危惧種である、ヤンバルクイナ、ライチョウ、シマフクロウ、ニホンイヌワシからiPS細胞(人工多能性幹細胞)を樹立するのに成功した。絶滅危惧鳥類のiPS細胞を樹立した報告は世界で初めてであり、絶滅危惧種保全研究の新展開が期待される。 研究チームは以前、転写活性を高めた「Oct3/4」を含めた6つの初期化遺伝子を使用して効率的にニワトリのiPS細胞を樹立させており、今回はこの手法を発展させた。死亡個体から取得したヤンバルクイナ、ライチョウの体細胞と、新生羽軸(新しく生えてきた羽の羽軸)から取得したシマフクロウ、ニホンイヌワシの体細胞に、転写活性を強化したOct3/4を含めた7つの遺伝子(ニホンイヌワシは8つ)を同時に導入。これらの野生鳥類のiPS細胞を樹立した。 絶滅危惧種を含めた野生動物では、生体を使った実験は困難である。神経細胞や肝細胞が取得できれば、感染症や汚染物質によるリスクを試験管内でより高度に評価できるが、現実に取得できる体細胞は皮膚または筋肉由来の細胞が中心となる。皮膚や筋肉などの細胞からiPS細胞を樹立できれば、樹立したiPS細胞を神経細胞や肝細胞に分化させることで、実験によるリスク評価が可能となる。 研究論文は、コミュニケーションズ・バイオロジー(Communications Biology)オンライン版に2022年10月24日付けで掲載された

(中條)

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