業務を変えるkintoneユーザー事例 第160回
ITがわからなくても使える。感動すると人ってやる気が出る
受け身なユーザーがなぜ意欲的に?災害支援の法則から考えるkintone活用法
2022年10月14日 09時00分更新
時間が掛かりすぎる災害への対応をkintoneに一本化
さて、余ったマンパワーを次のkintoneアプリ化開発に向けようとしたところ、災害は突然やって来た。2019年8月末、九州に線状降水帯が発生して各地で氾濫が起き、HuMAも佐賀県大町市に出動することになった。続けて、千葉県に台風15号が上陸し大きな被害を出し、さらには長野県千曲川も氾濫した。どちらにも派遣が決定され、事務作業は倍増した。
「災害支援は一様ではありません。台風や地震、河川の氾濫など色々なパターンがあり、とてもいつもの事務員だけでは足りません。被災した時には、HuMAのサポートチームが、在宅でサポートしてくれます。しかし、なかなかうまくいきません。それぞれのボランティアが、自分の得意なツールを使うからです」(高取氏)
応募フォームはGoogleフォームやメールを使い、宿泊稼働表は電話やメールで情報収集後、Excelを作成していた。文書のひな形や見本はDropboxに補完し、名刺管理はEightやLINEに散在。紹介状は複写式の手書きで、フィードバックは担当者にExcelをメールしているという状態だった。
ファイルの最新版がどれかわからず、全部突き合せて異なる箇所を見つけてコピー&ペーストするという作業にすごく時間がかかっていた。そこで、サポートチームに助けを求めたところ、2人が手を上げてくれた。「困っている人を助けるのがHuMAらしさです」と高取氏。
その2人の協力を得て、災害派遣時の事務作業をほとんどkintone化した。応募フォームから宿泊稼働表、ひな形の補完、健康チェック、名刺管理、紹介状、フィードバック、メンバー表、業務日報、物品管理など、kintoneに1本化したのだ。
「物品申請」アプリでは、すべてを1画面で把握できるように工夫した。ラベル機能で、どういう処理をしたら、この書類が完結するのかといったことを見える化したのだ。物品の受け取り日を入力すると、要望中から受け取り済みに自動変更されるなど、半自動処理も設定した。派遣者から機能改善のリクエストがたくさん寄せられ、できるだけ早くアプリの改修をした結果だという。
「派遣スケジュール」アプリでは、ボランティアのメンバーを管理している。HuMAの会員は勤務医や看護師など病院に勤務している人が多く、長期間は休めない。2泊3日ぐらいで、入れ替わるのだが、メンバーの抜け漏れが出て空白が開いてしまうと、サポートが途切れてしまう。引き継ぎもできなくなるので、必ず前の派遣者と次の派遣者のスケジュールを被らせている。
遠くから来る場合は交通機関や宿泊する際の宿も管理しなければならない。宿が満室で分散する場合は、物資の置き場所も考える必要がある。
「この派遣スケジュールの管理が、とっても大変でした。そこで、いつ誰がどこに来るのかという情報を自分で入れてもらうアプリを作りました。一覧表になって、すぐにわかるようになったのです。次は、使ってもらう工夫が必要です。まず楽になるよ、とアピールしました。メリットがないと人は使ってくれませんので」(高取氏)
見れば操作方法がわかる、わからなければいつでもサポートするとアピールし、みんなに使ってもらえるように努力したそう。できるだけ簡単に使ってもらえるように、可能な限り自動転記して入力箇所を減らした。また、アプリを使ってもらうための「使い方」アプリを作り、解説PDFをダウンロードできるようにした。
kintoneの使い方に慣れてもらうために、説明会も開催した。まずはkintoneにログインするといった課題からチャレンジしてもらったそう。HuMAには20代から80代までと幅広い年齢層の人がいるので、みんなにきちんと使えるようになって欲しいを考えているのだ。
基礎編が終わった人たちからは、もっと難しい課題を求められたので、模擬訓練の講座も作った。フィリピンに大型台風が上陸したという設定で、kintoneアプリに必要な情報を入力する訓練を行なった。参加者からフィードバックをもらい、改良を重ねることで、みるみる使い勝手がよくなったという。
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