iPhoneが発売されると深圳の電気街「華強北」がざわつき盛り上がる。今年9月のiPhone 14発売でもそうだった。これまでも新型iPhoneが発表・発売のたびに、華強北の一部が活性化することからメディアも取材に入る。それにしても今回はどうにも異常事態だった。「iPhoneの最高の時代は終わった」という声も出ている。
1つの産業と化していたiPhoneの転売
しかし、2022年は少し様相が異なるようだ
深圳の地価は中国でトップクラスに高い。販売スペースのテナント料は1カウンターで30万元(1元=約20円)もすると言われている。加えて中国のゼロコロナ政策によって、すぐ近くの香港と行き来ができなくなり、密輸が厳しく取り締まられていることから商品確保が難しく、近年は華強北のテナントから撤退する店が相次ぎ、もぬけの殻の状態になるフロアもある。ただiPhoneの発売は話は別だ。アップルの発表会で発売日が明らかになると、華強北は再び生き返ったと各メディアは伝える。
iPhone 14発表の1ヵ月前の8月には早くも情報が回っていて、新型iPhoneのモックアップを入手した業者もいて、ケースの量産を開始。いつでも売れるよう体制を整えていた。また「華強北で作れないものはない」とばかりにニセモノ業者も動いていたという。
そして発表会が行なわれるや、転売業者が一気に動き出す。転売業者は複数のチャネルディーラーに連絡を取り、一方で買い手となる顧客にも「iPhone 14は要らないか?」とコンタクトを取る。そして出所不明だが、本物のiPhone 14を仕入れる。ある転売業者はリリース後に高値になるだろうと、2週間後に転売するつもりで購入した。中国人だけでなく外国人の業者も混ざる。
これまでもiPhoneは中国の転売業者にとって打出の小槌だった。iPhone 4発売時は2万元、iPhone 6は2万8000元もの高値で転売し、1台で1万元近く儲けたという。そこまで行かなくても、当時は1台で5000~6000元、1ヵ月で30万元稼ぐことが当たり前で、絶頂期には100万元以上というとんでもない大金を得たともいう。そのため多くの人が並んで転売目当てで購入した。楚天都市報によれば、転売業者を集めて転売業務だけをする会社を立ち上げる人もいた。
「iPhoneがいい商材だとはここの誰もが知っている。新製品発売で波をつかむことができれば、生き残ることができるだろう。つまり華強北全体がiPhoneを売っているということ」と、ある業者は語る。
アップルが製品大量供給で転売業者が大損か
ネットではその不幸のニュースで盛り上がる
iPhone 14シリーズが中国で発売された9月16日には、各地で購入のための行列ができた。転売業者の見立てでは2週間くらい寝かせれば高くなるはずだった。時間単位で激しく転売相場が上下するなか、やがて相場は下がっていきついには発売数日後には定価よりも安くなった。つまり転売業者が初めて新型iPhoneで損をしたのである。
9月18日にはSNSで「転売ヤーがiPhone 14で100元損した」というフレーズが注目ワードになった。転売業者の不幸のニュースに、中国ネット世論が「いい話だ!」と盛り上がったのだ。このとき「iPhone 14が発売された日、ある転売業者は全機種を買い取り、累計300台以上を購入し、結果1日に数十万元の損失を出した」「購入した2台のiPhone 14 Pro Maxを定価より1600元プラスして転売業者に売り、2日後に定価より100元プラスして転売業者から買った。1500元×2台で3000元儲かった」などさまざまなエピソードが出てきた。
その理由はいくつかある。まず、アップルは中国市場でこれまでになく一気に大量の製品を供給した。それを知らなかった転売業者が仕入れ過ぎてしまったのだ。次にiPhone 14はiPhone 13から大きな違いがあるわけではないこと。その上で中華スマホこと、中国スマートフォンメーカーの高級モデルが台頭し、iPhoneユーザーの他社スマホへの乗り換えが起きているという理由がある。
加えて中国の景気が悪く、消費者がスマートフォンの買い替えやデジタル製品の購入をそもそも控えるようになったという理由もある。「転売ヤーの成績は今年は去年ほどよくなかった。来年はこの傾向が強まるだろう」と深度科技研究員院長張孝栄氏は華夏時報の取材に答えている。
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