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化学産業に3兆ドルの設備投資が必要、温暖化回避で

2022年09月14日 14時21分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学グローバル・コモンズ・センターとシステミック(Systemiq)は9月13日、4℃の地球温暖化を回避するためには、世界の化学産業は経営を劇的に転換させる必要があるとの研究報告書を発表。世界の化学産業が年間生産量を倍増させ、2900万人の新規雇用を創出し、持続可能な世界経済に貢献するための道筋を示した。

東京大学グローバル・コモンズ・センターとシステミック(Systemiq)は9月13日、4℃の地球温暖化を回避するためには、世界の化学産業は経営を劇的に転換させる必要があるとの研究報告書を発表。世界の化学産業が年間生産量を倍増させ、2900万人の新規雇用を創出し、持続可能な世界経済に貢献するための道筋を示した。 今回の報告書は、化学産業がプラネタリ・バウンダリーズの範囲内で活動を続けるためには、化学製品の供給側と需要側の双方において、抜本的な転換が必要であることを明らかにしている。プラネタリ・バウンダリーズとは、地球環境システムを安定化させている9つのプロセス(気候変動、生物多様性、窒素・リン循環など)について、人類が持続的に発展していくために超えてはならない限界値である。主な内容は以下の通り。 ・化学製品はほぼすべての川下産業で使用されており、バリューチェーン全体での化学製品による地球温暖化ガス排出を低減しなければ他の業界はネットゼロ(実質ゼロ)を実現できない。 ・川下産業において再利用、リサイクルや、地球温暖化ガス排出の少ない代替品に切り替える等の循環型経済が進むことにより、化学製品の総需要が2050年までに31%削減されることがあり得る。 ・化学製品の供給側においては、化石燃料・原料からの転換と、生産工程や製品廃棄時に排出される二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収・貯留技術の拡大が必要となる。 ・大気中の二酸化炭素やバイオマスからプラスチックを製造し、廃棄時の二酸化炭素を地中に固定化することにより、世界の化学産業は2040年代前半までにネットゼロを達成し、2050年には地球温暖化ガスの吸収源となることもできる。 ・既存生産設備の改修と新規生産設備の導入のために、2050年までに世界で約3兆ドルの累積設備投資が必要となる。 報告書はさらに、移行原則を定めた世界的憲章の制定や、ネットゼロ化学製品の市場を萌芽させるための有志企業連携の結成など、システムを転換するための10の主要なアクションを提案している。2022年10月10日には、移行を実現するために産業界、顧客、政策立案者、投資家が何を必要としているかを議論するためのオンラインディスカッションを開催する予定。

(中條)

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