目白大学メディア学部 Z世代が伝えたい東日本の魅力
「つなぐ旅~東日本~ ひがしにほんトラベルガイド」では、東日本地域の、魅力あるスポットやこれから旬を迎える最新の情報など、幅広く東日本地域の観光情報を発信しています。
Twitterや記事による観光情報発信以外にも、様々な取り組みがなされていますが、そのなかのひとつに、動画やライブ配信による情報発信があります。今回は、そのメニューにある1本の動画について、詳しくご紹介したいと思います。
現役大学生による若者に向けた東日本の魅力を伝える動画
「つなぐ旅~東日本~ ひがしにほんトラベルガイド」のサイトバナーのトップにある「Live & Movie」メニューをクリックすると、アスキーとの共同配信で行われている生放送動画のアーカイブ、各連携自治体のPR動画に交じって、「#桜で繋がる東日本~Cherry Blossoms in East Japan~」と題した東日本連携プロモーション動画が見つかります。
実はこの動画を制作したのは目白大学のメディア学部に籍を置く現役の大学生たち。
「つなぐ旅~東日本~ ひがしにほんトラベルガイド」を運営しているさいたま市は、東京都新宿区に本部を置く目白大学と包括連携協定を結んでおり、これまでにも折に触れて様々な施策を協働で行ってきました。
令和元年には「さいたま市の見沼田んぼ桜回廊を紹介する動画」制作、令和3年には、「さいたま市誕生20周年記念の観光PR動画」制作と、これまでは、主にさいたま市の魅力をPRするための動画制作が行われてきましたが、令和3年末に、「つなぐ旅~東日本~ ひがしにほんトラベルガイド」が稼働したのを機に、令和4年は、対象を東日本の連携都市全体に広げたPR動画を制作してもらうことにしました。
扱うテーマは「桜」。ターゲットは「若者」層。
果たして、Z世代とも呼ばれる令和の若者は、自分たちと同世代に向け、東日本の魅力をどう伝えようと考えたのでしょうか。
今回は、この動画制作の裏側を、制作を担当した学生諸氏、並びに動画制作の指導に当たった目白大学の牛山佳菜代教授、西尾典洋准教授に伺いました。
メディア多様時代に即した学びを得られる目白大学 メディア学部
目白大学は、東京都新宿区中落合に本部を置く私立大学。新宿キャンパスのほか、さいたま岩槻キャンパス(埼玉県さいたま市岩槻区)、国立埼玉病院キャンパス(埼玉県和光市)と、3つのキャンパスがあります。
今回のプロジェクトに参加したのは、新宿キャンパスの牛山ゼミ、西尾ゼミに籍を置くメディア学部の学生たち。
指導にあたったのは、地域メディア論等を専門とする牛山佳菜代教授と、映像制作技術を専門とする西尾典洋准教授です。
メディア学部は、「メディアは媒体というだけでなく場でもある」との考え方に基づき、テレビや雑誌などの媒体のみならず、イベントやアプリなども含めて、その作り手側にしろ分析にしろ、メディアを使った社会貢献や、メディアと社会のつながりを学ぶ学部として2018年に新設されました。
学部で扱う"メディア"のとらえ方は広く、細分化されたジャンルを深く、というよりは、社会文化的な側面から幅広く"メディア"学を学べる学部となっています。
牛山先生は、地域メディア論、メディア・コミュニケーション論、インターンシップが専門。牛山ゼミは、多様なメディアを活用した企画の立ち上げ方と問題解決の方法について学び、地域や企業、他大学との連携など、多岐にわたるプロジェクトを通し、地域におけるメディアの役割と、SNSなども含めた新たなメディア活用の知識と能力を高めるためのゼミを行なっています。
一方、西尾先生の専門分野は、映像制作技術。西尾ゼミでは、テレビやインターネットなどで魅力ある映像コンテンツを企画・発信できる人材育成を目標とし、映像コンテンツ、撮影、企画制作を実技を通して学ぶことができます。
学内に大きなスタジオセットやオペレータールームなども完備し、ケーブルテレビの情報番組「めじTV」といったゼミ生だけで作るオリジナル番組の制作も行なっています。
大学生による東日本PR動画はどうやって作られたのか?
この日、話を聞かせてくれたのは、牛山ゼミを代表して、3年生の髙橋悠真さんと宮本真鈴さん。牛山ゼミ生は、本プロジェクトでは主に企画制作を担当。
一方、西尾ゼミを代表して話を聞かせてくれたのは、4年生の粕谷壮さんと原瑠菜さん。西尾ゼミ生たちは、牛山ゼミ生から出されたアイデアを基に、実際に動画を制作するチームとしてプロジェクトに参加。
──まず、動画を制作するプロジェクトの立ち上がりからお話を聞かせてもらえますか?
宮本真鈴さん(以下 宮本) 最初に、牛山先生から、さいたま市との協働プロジェクトで、東日本連携の取り組みの一環として、桜をテーマにして、グルメなどの要素を取り入れた東日本の魅力を伝える動画をつくってほしいという依頼をいただいたという話しがありました。
宮本 牛山ゼミでは、これをどういった動画にするかという企画部分を担当するということだったので、ゼミ生10名がそれぞれ10個ずつアイデアを出し合って100個のアイデアを持ち寄りました。
100個のアイデアを基に、3つのグループに分かれて、実現可能性や動画制作チームの負荷なども考慮しつつ、面白そうなアイデアを取り入れた企画の形に落とし込んでいって、スタートしてから2ヵ月くらいで3つの企画書をつくり、プレゼン形式で発表したあと、西尾ゼミに引き継ぎました。
髙橋悠真さん(以下 高橋) 「桜」をテーマにするといったオーダーや、ターゲットが若者層であるといったこと以外は特に縛りなく自由にアイデアを出せたので、取り組んでいて楽しかったですね。みんないろんなアイデアを出してきて。
とはいえ、このゼミに入って最初に参加したプロジェクトだったので、ゼミ生同士、お互いのこともよく分からないような状態で始まったので、プロジェクトを通して理解し合えた部分も大きかったのかなと思います。
──アイデアを出す段階で意識していたことなどはありますか?
宮本 個人的に、「西日本でなく、東日本の魅力発信」なんだ、という部分は意識した点でした。あと、ゼミの最初のこのプロジェクトで、「軸をぶらさないことが大事」なんだってことが学べたのはすごく勉強になりましたね。そのことは、次に取り組んだプロジェクトでも大事にしていこうと心がけるようになりました。
──それでは、動画制作を担当した西尾ゼミでは、どういった形で進めていったのでしょう?
原瑠菜さん(以下 原) プロジェクトのスタート時点から話は聞いていて、牛山ゼミの打合せにも何回か参加させてもらいました。参加はしていたんですが、企画・アイデアを出す作業は完全に牛山ゼミ生にお任せしていて、実質的に動画制作に入ったのは牛山ゼミから絵コンテをもらってからです。
3チームから1案ずつ絵コンテがアップされてきて、その中から自分たちが映像化できそうなアイデアをつなぎ合わせて、1本のストーリーに仕上げていくという形で、3ヵ月くらい掛けて進めていきました。
粕谷壮さん(以下 粕谷) 今回の動画制作では東日本のPRという動画の狙いと、若者向けというターゲットが大事だと考えていたので、その考えに沿って、牛山ゼミから出してもらった企画をアレンジしていくといった作業になりましたね。
粕谷 たとえば、移動の工程をすごろくゲームの「桃太郎電鉄」風に見せたいというアイデアが出ていたのを、3Dの電車モデルを走らせて表現したり、SNSでの友人とのやり取りを「インスタ(Instagram)」風に見せるために実際のインスタのインターフェースの動きなどを研究して似せたりといった工夫をしました。
粕谷 テーマとなる桜の映像は、動画内で取り上げている各自治体の用意したものを使わせてもらったのですが、桜の映像をつなげただけでは見続けてもらえないと考えて、インスタのような見慣れた画面に似たものを出して親近感を持ってもらうとか、3Dの電車の映像を挟んで飽きさせない工夫をしました。
原 大まかなストーリーは、SNSを通して友人に桜の美しさを伝え、そこから一緒に桜巡りの旅をする、というものなのですが、ベースのアイデアは牛山ゼミから上がってきたものを使い、そこからアレンジしていって、もし自分が旅行に行くならこういう行動を取るだろうという実体験なども踏まえながら映像化していきました。
漠然と映像編集するのではなく、誰に向けて、何を伝える、という枠を決めて取り組むというのが、実技的にも勉強になることが多かったですね。
粕谷 桜をテーマに東日本の魅力を伝える動画を作りたい、という、もともとのオーダーはさいたま市さんから、それを企画の形にするのは牛山ゼミ、その企画を形にするのが僕たち西尾ゼミという分業の形になっていて、これって実際の映像の仕事の進め方に近いんじゃないかなと思いましたし、今後、映像の職に就いたときに役立つ経験ができたのではないかと思っています。
──では、今回のプロジェクトで制作した動画に100点満点で点数をつけるとしたら何点ですか?
宮本 私は120点です! 牛山ゼミから3つのコンテを出させていただいたのですけど、できあがるまでは、そのうちの1本が選ばれて映像化されるのだろうなと考えていたんです。でも、実際に出来上がった映像を見たら、3本のアイデアがすべてミックスされてちゃんと1本のストーリーのある動画に仕上がっていてびっくりしました。あと、「桃鉄」の電車が3Dになっていたから(笑)。もともとあのシーンは、平面で表現することを考えていたので。
粕谷 あそこが一番苦労したんですよ(笑)。それまで3Dモデリングはやったことがなくて。詳しい友人に聞きながら、実際の電車の写真をネットで調べて3Dモデルから作って(笑)。でも、一番苦労したけど、一番作っていて楽しかった部分でもありますね。
高橋 僕の点数も120点です。僕はこれまで映像をつくるという作業に携わったことはなかったので、自分の考えたアイデアが映像という形になるという体験は、想像以上でした。それが100点満点に加えて20点分です。
粕谷 僕は、90……いや、85点くらいですね。電車の3Dモデルは、もうちょっと勉強する時間があれば、がんばってもっとリアルにできたんじゃないかなと(笑)。
原 私は、100点です。現状で出せる実力は十分に出せたかなと思います。さらに上を目指すなら、できれば今度は、素材から自分たちで撮影に行きたいですね。もちろん、いただいた桜の映像はとても素敵だったんですけど、自分たちで撮影することで、もっとターゲットに合った見せ方だとか、見せたい、と思える映像も取り込むことができるんじゃないかなと思います。
「育てて送り出す」という理念のもとに運営されている目白大学
目白大学で学ぶ学生は、牛山先生曰はく、「素直な学生が多く、吸収力は高い」。それが、学ぶ上でも教える身でも、双方にとって面白い学部になっている要因なのだそう。
メディア学部を卒業した生徒の進路は、メディア系企業に進む人が半分、一般企業に進む人が半分ほどの割合。とはいえ、一般企業に就職した学生も、広報や企画であったりと、学部で学んだ知識を生かす職種に就くことが多いのだとか。
目白大学には、「育てて送り出す」という理念があります。この動画制作に参加した学生たちがプロジェクトを通して学んだのは、決して技術や知識だけではないはず。牛山先生、西尾先生に育てられた彼らならきっと、社会に羽ばたいてからも、繰り返し東日本の魅力を発信し続けてくれるのではないでしょうか。