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岡山大、カドミウムの集積が少ないイネの育成に成功

2022年08月24日 06時15分更新

文● MIT Technology Review Japan

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岡山大学の研究チームは、イネのカドミウム低集積の分子機構を解明し、カドミウム集積を抑制する遺伝子を同定。同遺伝子をコシヒカリに導入することで、収量と食味に影響を与えることなく、低カドミウム集積イネを育成することに成功した。

岡山大学の研究チームは、イネのカドミウム低集積の分子機構を解明し、カドミウム集積を抑制する遺伝子を同定。同遺伝子をコシヒカリに導入することで、収量と食味に影響を与えることなく、低カドミウム集積イネを育成することに成功した。 研究チームは、世界各国のイネ品種のカドミウム集積量を調べ、品種によってカドミウムの集積が大きく異なることに着目。インドで3000年前から栽培されていてカドミウム集積が最も低い在来品種について、関連遺伝子を同定した結果、「OsNramp5」という遺伝子が重複して存在していることを明らかにした。 OsNramp5はカドミウムとマンガンの輸送体で、この遺伝子の重複はカドミウムとマンガンの根細胞内への取り込みを増加させる。そのため、地上部へのカドミウムの転流をマンガンが競合して阻害し、地上部へのカドミウムの集積が減少するという。 さらに、この遺伝子を繰り返し交配でコシヒカリに導入し、収量と食味、カドミウムの集積量に与える影響を調べた。すると、この遺伝子の導入は収量や食味に影響を与えず、精米中のカドミウムのみが6割近く減少することがわかった。 カドミウムはイタイイタイ病などを引き起こす有毒の重金属である。これまでにイネのカドミウム集積に関与する遺伝子がいくつか同定されてきたが、これらの遺伝子を破壊してカドミウムの集積を低下させると、生育や収量にもマイナスの影響が出てしまうため、育種には使えなかった。今回の研究で同定した遺伝子を世界各国のイネ品種に導入すれば、安全でカドミウムの少ないイネの育成に貢献できるという。 研究成果は、学術誌ネイチャー・フード(Nature Food)のオンライン版に8月18日付けで掲載された

(中條)

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