武田信玄に大敗した徳川家康、自戒をこめたみじめな姿
孫会長兼社長は、今回の決算会見では、「反省」という言葉を何度も繰り返した。内容によってはわずかな笑顔を見せるシーンもあったが、ここまで神妙な面持ちで、1時間30分近い会見を行ったのは珍しい。毎回、意気揚々と語るarmについても、「今日は反省がメインの発表会。前向きな話は抑える」とし、「順調に推移している」と、ひとこと述べるに留まった。
会見の冒頭では、たとえ話から切り出すことが多い孫会長兼社長だが、今回の会見では、徳川家康の顰像(しかみぞう)の絵をスクリーンに映し出した。
徳川家康の顰像は、三方ヶ原の戦いにおいて、武田信玄に大敗した家康が、そのときの状況を反省し、それを忘れないために、自分のみじめな姿の絵を描かせ、これを生涯、離さなかったと言われるものだ。
「家臣からは、この戦に出ていくと負けることになる。守りを固めて籠城した方がいいとの進言があったが、それでは、武士の沽券に関わるとして、徳川家康は、城を出て武田信玄の軍勢と戦った。しかし、大敗して、命からがら逃げてきた。このことをしっかりと反省し、戒めとして覚えておきたい。三方ヶ原の戦いでの大敗を忘れないために、描かせたものである」と自ら説明。「今日は、反省を込めて語りたい」と、自らの姿勢を、この絵に重ね合わせて説明を始めた。
また、会見の狙いを補足するように、「私は、社会人になって一度も上司を持ったことがない。部下の報告を受ける立場ばかりであったが、報告する内容が悪いのに、実態よりも悪くないと表現した報告を聞くと、より怒りが増す。その経験を何度もしてきた。今日は、実態が悪いということを正面から説明すべきであり、素直に正直に報告する」とも述べた。
そして、「大きな利益を出した時にはやや有頂天になる自分があった。いまとなれば大変恥ずかしく、反省している」と語り、会見をスタートした。
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