海外で人気のあるハイレゾストリーミングサービスのQobuzがTHXを採用した空間オーディオ対応に動いた。Qobuzは国内未参入だが、高音質配信のサービスとして海外では人気のあるサービスだ。
THXのプレスリリースによると、ストリーミングサービスのQobuzは「THX Spatial Audio」技術でミックスした24bitの楽曲を8月11日に配信し始めたという。配信したのは3曲で、Circuit des Yeuxの「Double Dare」、Anat Cohenの「Calling Vic Juris」、Dinosaur Jr.の「Whenever You're Ready」だ。
Circuit des YeuxのHaley Fohr氏は、これに関して「THX Spatial Audioのハーモニクスとフィードバックが跳ね返って共鳴するさまは、まるで竜巻の目の中にでもいるような感覚を感じる。この曲が恐怖を物語るものだとすればTHX Spatial Audioによってそれは増幅されている」と語っている。
また、Calling Vic JurisのAnat Cohenは「この曲はアコースティックデュオとして録音し、クラリネットとギターを追加した。THX Spatial Audioは曲が進むにつれてその勢いを加速させ、特に3分半のところではクラリネットのトラックが何層ものギターの上を舞い上がる。このオーディオフォーマットによってアコースティックとエレクトリックの両方の世界を表現することができた」とする。
THX Spatial Audioは2018年にアナウンスされたフォーマットで、MPEG-Hを利用したオブジェクトベースの空間オーディオフォーマットだ。MEPG-Hは「ソニーのSony 360 Reality Audio」も採油しているフォーマット。オブジェクトベースのフォーマットとしてはほかにDolby Atmosなどがある。なお、Qobuzの競合である海外の高音質ストリーミング配信サービス「TIDAL」は、Dolby Atmosにも対応している。
なお、THXの発表ではヘッドホンリスニングを推奨しているように読めるので、マルチスピーカーではなく、2ch再生に特化した技術であるかもしれない。THX Spatial AudioではHRTF(頭部伝達関数)によるサウンドのパーソナライズにも対応していることから、ヘッドホン・イヤホン向けの再生でもさらなる展開が期待できるかもしれない。
ちなみにQobuzとTHX との協業は今回が初めてではない。THX初のコンシューマー製品であるスティック型DAC「THX Onyx」を発売した際には、プロモーションでも協業したそうだ。これはTHX Onyxを購入するとQobuzが3ヵ月間利用できるというもので、(海外においては)まだ有効である。
今回の配信が主にヘッドホン向けであることやスティック型DACでの両者の関係から、今回のTHXとQobuzの協業は単に空間オーディオ流行に乗じたというだけではなく、THXがコンシューマー分野に動いていく布石とも考えられる。そういう意味ではこれも進みつつある業界再編成の動きの一つなのであろう。
この連載の記事
-
第300回
AV
インド発の密閉型/静電式ヘッドホン? オーディオ勢力図の変化を感じた「INOX」 -
第299回
AV
夏のヘッドフォン祭 mini 2024レポート、突然のfinal新ヘッドホンに会場がわく! -
第298回
AV
ポタフェス2024冬の注目製品をチェック、佐々木喜洋 -
第297回
AV
なんか懐かしい気分、あなたのApple WatchをiPodにする「tinyPod」が登場 -
第296回
AV
逆相の音波で音漏れを防げる? 耳を塞がないヘッドホン「nwm ONE」──NTTソノリティ -
第295回
AV
NUARLのMEMS搭載完全ワイヤレス「Inovatör」(旧X878)の秘密とは? -
第294回
AV
AirPodsで使用者の動きからBPMを認識、それを何かに応用できる特許 -
第293回
AV
次世代AirPodsにはカメラが付くらしい、じゃあ何に使う?(ヒント:Vision Pro) -
第292回
AV
OTOTEN発、LinkPlayの多機能ネット再生機「WiiM」とSHANLINGの「EC Smart」を聴く -
第291回
AV
ビクターの新機軸、シルク配合振動板の魅力とは? HA-FX550Tを聴く -
第290回
AV
HDTracksがMQA技術を使ったストリーミング配信開始へ - この連載の一覧へ