パナソニックのZEBに対する取り組み
あらためてZEBとは、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。久辺の里のように延床1万平米未満の施設に対しては、平成28年(2016年)の省エネ基準から50%以上の削減を必達目標としています。
パナソニックがZEB化を進める背景には、世界的な脱炭素化の流れがあります。
2008年11月の洞爺湖サミットで国際エネルギー機関(IEA)が先進各国にZEBへの取り組み加速を勧告したのが始まり。日本政府は2015年のパリ協定で2030年度のCO2排出量を26%減としましたが、2021年4月に米国が主催した気候サミットでは46%減へと目標値をさらに引き上げています。
そんな中、ZEBは市場としての成長が期待され、矢野経済研究所は2030年に7000億円市場になるものと予測。パナソニックも市場に参入すべく、2019年10月、建物のZEB化を手助けする法人「ZEBプランナー」として登録し、施主をサポートする形でZEB化を推進してきたという流れです。
パナソニックの強みは、ZEB化に際して提案できる自社商品が多いことです。
1つはパッシブと呼ばれる断熱系設備。複層ガラスを始めとして、ひさしやファサードといった省エネのための日よけ設備も手掛けています。もう1つは電気設備。空調、照明、換気などは同社の得意分野で、給湯器や昇降機などは扱っていないものの、保守・運用は対応可能。
加えて、EMSによる電力使用量の見える化、太陽光などによる創エネの提案、さらにはセンサーを使った入退室管理など周辺サービスはお手の物。内側も外側もパナソニックで設備をそろえることでZEBプラスαの省エネ施設を目指せることも同社の特長だというわけです。
一方、他社製品が入ったとしてもZEB化は可能です。
たとえば久辺の里は、老人ホームの特性上、お風呂のお湯を絶やせないという制約があり、省エネ効果の高いエコキュートが導入できませんでした。一般的なガス給湯器を使っていますが、代わりに換気性能を大きく向上させたことで、全体としてはZEB Readyの要件を満たすことができています。
パナソニックがZEBプランナーとして目指すのは全国展開。これから5年で全国100ヵ所のゼロカーボンエリアを作るという内閣官房の示したロードマップに食い込みたい考えです。
同社では既存販売網として全国に200人の営業マンを抱えていることも他社に対するアドバンテージになるといい、今後の目標については、2022年度の受注金額20億円を、2030年度には11倍にあたる220億円まで伸ばすと語っていました。