元ウォーカー総編集長・玉置泰紀の「チャレンジャー・インタビュー」番外編
小松美羽が岡本太郎と対峙した霊性とマンダラの集大成
川崎市岡本太郎記念美術館で2022年6月25日、小松美羽「岡本太郎に挑むー霊性とマンダラ」が始まった(8月28日まで)。24日の内覧会では、開催を記念して、小松のライブペインティングが、同美術館の屋外にそびえる岡本太郎の母の塔前で行われ、かつては彼女の画集制作にも関わり、折に触れて活動を見てきた筆者も駆けつけた。
梅雨のさなかの好天で非常に暑くなる中、1時間に及ぶパフォーマンスだったが、小松は「岡本太郎さんを尊敬している。私は全国の神社など、様々な場所の力を得てきたが、岡本太郎さんも、様々な現場に行って落とし込んでいる。その場所で連携を感じたものを落とし込む。ライブペインティングも、私はパフォーマンスではなく神事としてやらせて頂いていて、この場所(母の塔の前)でやらせて頂いて、初めて、岡本太郎さんに挑んだ気がした。温かいものを感じながらやれた」と手応えを語っていた。
東寺に奉納される『ネクストマンダラ‐大調和』を初披露
展示は全5章からなる。初期から中期作品から最新作まで、絵画・立体作品約100点が集められた。その中で、中心は4章の会場の中心にあって、全体を大きな渦に巻き込むかのような岡本太郎の《渾沌》(1962年)。その周りをストーンヘンジのごとく囲む黒曜石は長野県長和町の黒曜石体験ミュージアムから提供されている。長野県出身の小松美羽に、星糞峠の、およそ87万年前の噴火でできた黒耀石は大きな霊感を与えた。旧石器時代には、ふもとに石器工場のような遺跡が、縄文時代には、峠の付近で黒耀石を掘り出した鉱山のような大規模な遺跡が残されており、縄文文化が岡本太郎と小松を結んだ。
小松は「真ん中に岡本太郎の彫刻と黒曜石があるが、黒曜石は長野県産。黒曜石は縄文文化と関係が深い。まさに、マテリアルと出会うという事。神獣さんは大きなテーマだが、そこには、尊敬しつつ感謝を込めながら封印していく、という事がある。私は封印の起きた縄文時代を尊敬しながら、この部屋を作った」とコメントしている。
1章 線描との出会い:死、自画像、エロティシズム
2章 色彩の獲得:大いなる「目」との邂逅(かいこう)
3章 開かれた「第三の目」:存在の律動(リズム)
4章 霊性とマンダラ:「大調和」の宇宙(コスモロジー)
5章 未来形の神話たち:抽象と象徴の冒険
また、同じ4章の部屋には、真言宗立教開宗1200年を記念して、小松が制作した奉納画『ネクストマンダラ―大調和』の金剛界、胎蔵界二幅一対が展示されている。この作品は表装後2023年に東寺に奉納されるが、本展では掛軸として表装される前の、約4m×4mの超大作が初披露されている。
この日、会場を訪れた真言宗総本山教王護国寺東寺長者、飛鷹全隆氏は「知恵と慈愛で描かれている。小松美羽さんは、今の時代では特異な存在。私は、夕方から夜にかけて、制作現場で、大日如来の真言を唱えた。溢れ出る霊性を感じる。来年の大法会を楽しみにしている」と喜びを話した。
岡本太郎美術館の土方明司館長は今回の企画展について以下のように説明している。
「テーマの霊性とマンダラは、岡本太郎と小松美羽の二人を結びつける。岡本太郎はパリに滞在して民俗学を学び、パリ大学でマルセル・モースに師事した。(そういった観点から、)彼は、日本で正当に評価されなかったものに光を当ててきた。たとえば沖縄、そして縄文時代の美。ある意味ブームの火付け役とも言える。神秘、霊的なものへの感性。日本の基底にあるものを、日本中を調べて歩いた。小松美羽さんも、神秘、霊的なものを感知する。普段目に見えないもの。神聖なもの。小さい頃から見ているもの。神獣。今回のマンダラは集大成と言えるだろう。ライブペインティングも、岡本太郎の母の塔が見守るなか、美術の始原性を感じさせてくれた」
また、今回の企画展では写真撮影が可能。ただし、動画撮影、フラッシュ撮影、三脚・自撮り棒・ジンバル等の器材の使用は不可。
他の主要展示作品
開催概要
展覧会名:「小松美羽展 岡本太郎に挑む―霊性とマンダラ」
Miwa Komatsu Transparent and Chaos:Spirituality and Mandala
会 場:川崎市岡本太郎美術館 企画展示室
会 期:2022年6月25日(土)~2022年8月28日(日)
開館時間:9時30分~17時(入館16時30分まで)
休館日 :月曜日(7月18日を除く)、7月19日(火)、8月12日(金)
観覧料 :一般1000(800)円、高・大学生・65 歳以上800(640)円、中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金
※日時指定事前予約性:本展の観覧(会期中の常設展も含む)には、事前予約が必要(年間パスポート、招待券、障がい者手帳所持者、中学生以下を含む)。オンライン予約を行う環境が無い人のため、各日とも若干の当日受付枠を用意しているが、来館時にすでに当日受付が終了している可能性もあり、また、事前予約の人が優先のため、入館まで相当の時間を待つことがある。
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