米国での撮影取材と並行して日本で番組編集、数十TBクラスの映像アーカイブ保管などフル活用!
「映像制作のインフラであり“生命線”」FKPartyがDropbox Businessを選んだ理由
「僕らからすると、Dropbox Businessはもはや『制作のインフラ』になっています。Dropboxが止まると今のようなスピードでは制作できなくなるでしょうし、ほかのツールで代替するのもほぼ不可能かな、と。そういう意味で本当にDropboxは『生命線』として使わせてもらっています」(FKParty 藤田圭介さん)
日々大容量のデータを取り扱う映像制作の現場。ABEMA(AbemaTV)の番組制作をはじめ、LDH、エイベックス・グループなどのライブ/イベント関連映像、自治体や企業のPR映像など、幅広い映像制作を手がけるFKPartyでは、1年ほど前から制作メンバー間での映像データのやり取りにDropbox Business(Advancedプラン)を採用しており、今ではそれが“生命線”にすらなっているという。
海外で撮影した映像を日本で受け取りスピーディに番組化する、東京以外に住むメンバーも含めてTB(テラバイト)クラスのデータを共有しクラウド上で共同作業を進める、数十TBの映像データをクラウドにアーカイブしどこからでも取り出せるようにするなど、Dropbox Businessをフルに活用して機動力の高い映像制作を実現しているFKParty。同社 代表取締役の藤田圭介さん、IT担当の取締役である三木孝庸さんに話をうかがった。(※取材実施:2022年4月、内容は取材時点のものです)
「ITリテラシー」と「スピード感」がバリューの制作会社
FKPartyは、フリーランスのビデオグラファー(映像作家)/VJとしてミュージックビデオなどを制作していた藤田さんが、2013年に立ち上げた制作会社だ。前述したような幅広い映像/番組制作、広告制作などを手がけており、取引先はおよそ100社。数年前、藤田さんの学生時代の友人だった三木さんが参加し、同社のIT環境全般の高度化を推進するとともに、新規事業のアドバイザーやプロジェクトマネジメントを行っている。
「もともとは音楽系の仕事が多く、たとえば倖田來未さんのライブのオープニング映像や、EXILEや三代目J SOUL BROTHERSのライブ用映像、ドキュメンタリー映像などを制作しています。ただし近年はABEMAの仕事が増えていて、現在はだいたい2割くらいがABEMAでしょうか」(藤田さん)
ABEMAとの仕事では、番組制作はもちろん、サムネイル画像やポスターといったクリエイティブ制作、さらには視聴データのアナリティクスなども手がけているという。
数ある制作会社の中でFKPartyの強み、バリューは何なのか。藤田さんに尋ねると、「ITリテラシー」と「スピード感」だと答えた。藤田さんは映像の仕事をしつつ、Macのハードウェアをカスタマイズするショップにいた経歴を持つ。三木さんも、Web制作のベンチャーを立ち上げるなどITへの造詣が深い。
「そもそも映像業界はアナログな世界なんです。今でこそMacで編集するようになりましたが、以前はバイク便でテープの受け渡しをして、リニア機と呼ばれるテープデッキで編集作業をしていました。なので何ギガ、何テラというデータの単位がわからない、ネットワークのスピードがわからないという人も多い。その結果、IT周りで困ったことがあると連絡が来るようになって。Macの調子が悪い、ネットワークが遅い、じゃあとりあえず藤田に聞こう、と(笑)」(藤田さん)
もうひとつの「スピード感」については、「24時間365日やっている感じ」という制作の即応力が売りだ。取材撮影から配信までの日数が限られている番組制作に加えて、「3日後のライブでこういうスポット映像が欲しいんだけど、できないかな?」といった急ぎの依頼が舞い込むこともある。他社が「時間的に無理」と断るような仕事も受けられる、そうしたスピード感も大切にしている。
「大まかに言うと、映像制作は企画、撮影、編集、音効といった作業を経て完成します。大きな案件であれば複数のスタッフが分業して進めますが、FKPartyの場合は1人で全部スピーディにこなして、完パケ(最終納品物となる映像)まで行くケースが多い。今のYouTuberがやっているようなスタイルをいち早くやってきた、“何でもやる人たち”って感じですね」(藤田さん)
大容量データを確実に受け渡せなければ「スピード」は実現できない
FKPartyの強みである「スピード感」を実現するうえで、Dropbox Businessは重要な役割を果たしている。「作業できるメンバーはいるけど、必要なデータがないから作業できない――。そういうボトルネックを徹底的に排除したいと思っています」と藤田さんは語る。
Dropbox Businessの導入以前は、急ぎの仕事を頼まれた際に、たとえすぐに作業できるメンバーがいたとしても、データ容量が原因で断ることがあったという。数百GBクラスの映像データを、短時間で確実にやり取りできる方法がなかったからだ。
映像業界では、Webのファイルアップローダーサービスを使って映像データのやり取りをすることが多いという。たとえば100GBのファイルをアップロードするのに、100Mbpsの回線ならば2~3時間ほどかかり、受け取る側でも同じ時間をかけてダウンロードする。もちろん時間のロスも問題だが、それ以上に頭が痛いのは、その受け渡しが「確実ではない」点だという。
「アップロードもダウンロードも、目を離したら途中で止まっていたりするわけですよ(苦笑)。そうするとまたイチからやり直しで何時間かかかり、『ああ夜中になっちゃった、どうしよう』と。それがものすごくストレスでした」(藤田さん)
最近は映像データもさらに大容量化しており、数TBクラスのデータを確実にやり取りできる手段が必要になっていた。三木さんは「大手の会社では自前でサーバーを立てて専用のシステムを入れているところもありますが、FKPartyの会社規模だとそこまでやるメリットはない。どう解決できるのかを、ずっと考えていました」と振り返る。
「アメリカで撮影、並行して日本で編集」という番組制作フローを実現
Dropbox Business導入の大きなきっかけになったのが、2021年、ABEMAからの依頼で制作した、アメリカでのバスフィッシング大会のドキュメンタリー番組制作だったという。アメリカでの撮影はパートナーのカメラマンが行い、その映像を日本で編集し、ABEMAの番組として配信するという流れだ。
「ただしその番組の納品日が、カメラマンが帰国する翌々日くらいの日程だったんです。帰国してからデータを受け取り、編集を始めるのではとても間に合わない。だったら、アメリカで撮影したデータをDropboxで同期してもらい、日本で並行して編集を進めよう、それで何とか間に合わせようという話になりました」(三木さん)
実はその前年、FKPartyではDropbox Businessの導入前にも同じ制作フローにチャレンジしていた。アメリカにいるカメラマンから、その日撮影した映像のファイル(正確には編集用の小容量データ=プロキシファイル)をファイルアップローダーで送ってもらい、並行して編集を進めようとしたのだ。このフローならば、短期間で番組が納品できるはずだった。
「このワークフローそのものは良かったのですが、やはりアップローダーでのファイル転送に問題がありました。アメリカにいるカメラマンは、撮影した映像ファイルを送信してから現場に行くんですが、帰ってきたらアップローダーが途中で止まっているんですよ。『うわー、これで作業が1日遅れた!』。そんなことが何日も続いて、これは無理だ、現実的じゃないと。結局は失敗に終わったんです」(藤田さん)
しかし、Dropbox Businessを導入済みだった翌年は「たぶん、いける」という自信があったという。カメラマンにはDropbox Businessのアカウントを渡し、あらかじめ用意した共有フォルダに、その日に撮影した映像ファイル(1日あたり20~30GB程度のプロキシファイル)を入れてくれればよいとだけ伝えた。結果、Dropbox Businessで共有された映像データは日本で待つメンバーへ確実に届き、この方法で番組制作はうまくいった。
「カメラマン用に簡単なマニュアルは作りましたが、何も特別なことをする必要はなく、話が早かったです。制作はとてもスムーズで、アメリカで撮った映像は、次の日には日本で編集が終わる。毎日それを繰り返して、カメラマンが帰ってくるころにはだいたい出来上がっていました。最後にきれいな映像ファイルを受け取って差し替えれば、ほぼ完成の状態。このフローを確立している制作会社は、まだそうないだろうと思います」(藤田さん)
●SPIRE ~Takumi Ito Bassmaster Classic 2021~(2021年、ABEMA)
ちなみに今年2022年には、同様の撮影/編集フローで3夜連続の番組も制作した。Dropbox Businessで共有されたプロジェクトファイルの総容量は3TB以上に及んだが、トラブルもなく制作が進んだという。
「最初は、Dropboxで扱うプロジェクトは500GBくらいまでが現実的で、それ以上のものはやはりハードディスクやSSDでやり取りしないとダメかな、と思っていたんです。ただ、やってみたら1TBでも意外に行けた。オフィスの回線を速くしたこともあって、1TBならば一晩で同期できる。そこから2TB、3TB……となし崩し的に大きくなり、今では4TB近いプロジェクトもDropbox上で完結しています」(藤田さん)
●RESPECTIVE ~アメリカで戦うサムライたち~(2022年、ABEMA)
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