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細胞へのストレスによるがん発生の仕組み、東大などが解明

2022年06月08日 06時45分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学とマサチューセッツ総合病院の国際共同研究チームは、細胞に紫外線や低温刺激などのストレスを与えると、タンパク質とRNAからなる「凝集体(かたまり)」が細胞内にでき、タンパク質の設計図に異常が生じやすくなることを明らかにした。異常な設計図から作られたタンパク質はがんを発生・進展させることが知られており、同チームが今回発見した現象は、細胞にかかるストレスが、がんを発生させるメカニズムの一つであると考えられる。

東京大学とマサチューセッツ総合病院の国際共同研究チームは、細胞に紫外線や低温刺激などのストレスを与えると、タンパク質とRNAからなる「凝集体(かたまり)」が細胞内にでき、タンパク質の設計図に異常が生じやすくなることを明らかにした。異常な設計図から作られたタンパク質はがんを発生・進展させることが知られており、同チームが今回発見した現象は、細胞にかかるストレスが、がんを発生させるメカニズムの一つであると考えられる。 研究チームによると、上記の凝集体は、人間のDNAの中で特に活発に読み出されている、タンパク質の設計図部分を巻き込んで核小体周辺に集合させ、複数の設計図部分を空間的に近づけてしまうという。そのため、複数のDNA損傷部位が互いに近づき、間違えた末端同士がつながって、2つの遺伝子が融合した異常な設計図が作られてしまうリスクが高まることになる。 がん細胞が持つ異常なDNAの中でも、2つの異なるタンパク質が融合して異常な働きをもつタンパク質に変質してしまう現象の原因となるDNAの異常は「遺伝子融合」と呼ばれ、がんの発生や進展、病態に深くかかわっている。複数のDNA切断末端同士が空間的に近づいていると、遺伝子融合が起こりやすいと考えられるが、DNAの異なる領域同士が近づく現象が、何をきっかけとして、どのようにして起こるのかはわかっていなかった。今回の研究成果は、米国科学雑誌、モレキュラー・セル(Molecular Cell)のオンライン版に6月2日付で掲載された

(中條)

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