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業務を変えるkintoneユーザー事例 第134回

一生懸命働く職員からの「システムなんか要りません」への答えは?

唐津への移住を支援する唐津Switch kintoneの価値はサステイナビリティの確立だった

2022年06月06日 10時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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日報アプリで市役所とも情報共有 ログが残せるから悩みもつまづきも見える

 今まで行政とはメールでやりとりしていたが、市役所の職員が自力でkintoneの中の情報にアクセスできるようになったため、唐津Switchへの問い合わせもゼロになったという。さらに、行政側の情報もkintoneを経由して提供されるようになった。

 市役所がkintoneを使ってくれるようになったのは、ログをきちんと残せることが大きな理由と考えているそう。kintoneでは誰がいつ何をしたのか、という記録を残せる。何かあったときには、それらの情報を簡単に調べることが可能だ。

 市役所のPCには勝手にアプリを入れることはできないが、kintoneであればブラウザとアカウントだけで利用できる。そのため、行政にも安心して使ってもらえるようになったそう。

 日報アプリも作成したことで、業務の進捗確認の連絡もなくなった。必要に応じて行政側が日報を見れば、誰が何をやって、どこまで進んでいるのかがすぐにわかるようになったためだ。

「日報アプリはスタッフとのコミュニケーションにも十分な効果を発揮しました。理事は普通の会社と違って、普段は自分の会社で仕事をしながら、NPO法人の活動を助けてくれていますので、スタッフと顔を合わせることがほとんどありません。日報を見ることで、スタッフが何を悩んでいるのか、何につまづいているのかがわかるようになり、スムーズなコミュニケーションを取れるようになりました」(浦田氏)

kintoneで情報共有することで、情報依頼がほぼゼロになった

kintoneの本当の価値は業務効率化ではなかった NPO法人こそkintone

 予想していなかったメリットとしては、データをグラフ化することで、今後どんな活動をするべきか、どんな層にアプローチしていくべきか、という未来を見通せるようになったという。従来は過去の情報はただ見るだけだったのだが、視覚化することで新たな気づきを得られるようになったのだ。

「もう一つのうれしい誤算は、スタッフが自分でアプリ開発をはじめたことです。アプリが使いづらいとクレームが入ったので、自分たちで好きに作っていいよ、と言ったところ、空き家の事業に関するアプリはスタッフが独自で作ってくれました」(浦田氏)

過去のデータを可視化することで、未来を照らす情報になった

 スムーズにkintoneを導入できたように見えるが、問題がなかったわけでもない。あるスタッフがkintoneに情報を入力してくれなかったのだ。彼は一生懸命仕事をする人で、今まで相談に来た人をすべて覚えているほど。そのため「私に任せれば大丈夫ですから、システムなんか要りません」と考えていた。

 そこで浦田氏は「君に“もしも”が起きたらどうするの、と言いました。“もしも”は不慮の事故とかではなく、君自身の夢のことだよ。夢が生まれた時に、今この場所から飛び立てる?」と聞いたそう。彼は一生懸命仕事をしていたからこそ、今までサポートしてきた人たちを捨てて、新しい所に飛び出すのには抵抗があるのではないか、と話をした。そのおかげで、今では積極的にkintoneに情報を入力してくれるようになったという。

もし夢が生まれたらどうする?と情報を抱えていた人を説得した

 浦田氏が一番注力したのは、情報の流れがもたらす利便性の体感だという。そして属人化しない動機付け。この2つのサイクルを回すことで、スタッフや行政側がkintoneを使うことに理解を示してくれて、最終的に属人化の沼から脱出できた。ここで浦田氏はkintone導入以前と以後で、唐津Switchがまったく別のものになっていることに気がついた。

利便性の体感と動機付けのサイクルを回して、kintoneの導入を成功させた

 kintoneの本当の価値は業務効率化ではなく、サステナビリティの確立だと、浦田氏。kintoneは唐津Switchにサステナビリティを与えてくれたという。

「NPO法人はその想いを未来につなぐことを条件に法人化が許された団体です。私に何かあっても、立ち止まることは許されません。人とNPO法人の両方が成長し、幸せになるためには、情報の共有と蓄積が必要です。NPOの思いは千差万別で、既存のシステムをぴたっとフィットさせるのは難しいことです。だから、私はkintoneだと思います。kintoneは柔軟でしなやかで、優しいシステムだと感じています」と浦田氏は締めた。

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