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山根博士の海外モバイル通信 第599回

画面が360度曲がるスマホがまもなく登場で折りたたみスマホが進化する!

2022年05月24日 12時00分更新

文● 山根康宏 編集●ASCII

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外にも内にもたためるディスプレーが登場

 横開き式の折りたたみスマートフォンは、現在の日本ではサムスン電子の「Galaxy Z Fold」シリーズしか販売されていませんが、海外を見るとシャオミ、OPPO、vivo、Honor、ファーウェイ、Royoleと多数のメーカーが製品を出しています。ディスプレーをたたむ方式は2種類あり、メジャーなのがサムスンなどが採用する谷折り式、一方Royloeは山折り式を採用しています。

 なおRoyoleは世界初の折りたたみスマートフォン「FlexPai」を出したものの、市場がまだ成熟していない状況だったことや、大手メーカーからライバル製品が次々と登場したことで後継機「FlexPai 2」の販売も不調、今では資金ショートで事業は停止している状態のようです。

5Gに対応したFlexPai 2を出すものの経営難中のRoyole

 では折りたたみ式スマートフォンは谷折り、山折り、どちらが使いやすいのでしょうか? ファーウェイは当初山折り式の「HUAWEI Mate X」を発表、サムスンに対抗して外側へ折るフォルダブルディスプレーを採用したとも言われました。

 その後マイナーチェンジモデル「HUAWEI Mate Xs」を投入しそのまま山折り式で行くと思いきや、2021年に発表した「HUAWEI Mate X2」は一転して谷折り式を採用。構造上谷折り式のほうがコストや品質で有利だったのかもしれません。しかし2022年には再び山折り式の「HUAWEI Mate Xs 2」を発表。ファーウェイとしてもどちらが消費者に受けるのか、模索が続いています。

ファーウェイの最新折りたたみスマホ「HUAWEI Mate Xs 2」は外に折る山折り式だ

 本体「板」であるディスプレーを曲げるには高度な技術が必要です。しかもスマートフォンのディスプレーはタッチパネルですから、折り曲がる部分のセンサーをどうするかという問題も生じます。それでもディスプレーを開発する大手メーカーは次世代ディスプレーとして、フォルダブルの開発を進めています。

 2022年5月にサンディエゴで開催されたSDI Display Week 2022では、TCLとLGが最新の折りたたみディスプレーを展示しました。開発中の製品ですが「谷折りか、山折りか」を解決できる、360度どちらにでもたためるディスプレーです。

TCL CSOTの360度開閉ディスプレー

 TCLのディスプレー子会社、CSOTの360度折りたたみディスプレーはサイズが8型で解像度は2480x1860ドット。世界初の「Pol-less」技術により谷側、山側、どちらに折りたたむことも可能です。ここでいう「Pol」とは偏光板のことで、有機ELディスプレーの場合は内部の反射を防ぐ目的で配置されます。この偏光板をなくしながらも反射を抑え、どちらにも曲げられるディスプレーを実現したようです。なおディスプレーの曲がる部分の半径は内側がR1.5、外側がR6.0とのこと。

360度、内にも外にも曲がる

 現状の折りたたみスマートフォンは、谷折り式の場合は閉じたときのために外側にもう1枚ディスプレーを搭載する必要があり、本体サイズが厚くなり、重量も増してしまいます。またソフトウェア側で開閉に合わせて外ディスプレーと内ディスプレーの表示を切り替える必要もあります。一方、山折り式は折りたたむと常に両面がディスプレーとなるため傷が付く恐れがあります。保護のためには袋状のケースに入れたり、乗り巻き型のカバーを付ける必要があり、やや使いにくいのです。

山折り式に海苔き型ケースをつけるとディスプレーを開きにくい

 360度曲がるディスプレーなら持ち運び時は谷側に折りたためば外側にディスプレーがあらわにならないため、傷の心配もないわけです。L字型にしてフレックスモード(1画面の半分をコントローラーにしたり、2つのアプリを使う)や、ヘの字型にして向かいの人と同じコンテンツをそれぞれ表示する、といったこともどちらも可能になります。

谷折り式ならではの使い方。L字に曲げてビデオ会議しながらメモを取る

 LG Displayの360度回転ディスプレーもCSOT同様に8型サイズ。どうやらこのサイズが次の世代の折りたたみスマートフォンの標準的な大きさとなるようです。おりたたんだ時に片手で持てる大きさとするためには、開いたときのサイズは8型がベストということなのでしょう。

LG Displayも8型の360度回転ディスプレーを開発

 LG Displayの製品は折り目を最小限とし、20万回以上の開閉操作にも耐えることができるとのこと。詳細な情報は出てきていませんが、片側折りたたみ式を飛び越え一気に360度回転式を開発したのは、ライバルであるSamsung Displayへの対抗心があるからかもしれません。LGのスマートフォン事業撤退があと2~3年遅かったらこのディスプレーを採用した製品がLGから出てきたのでしょう。どこかのメーカーが採用することを期待したいものです。

山に折っても折り目は目立たないという

 折りたたみディスプレーは他にも中国のディスプレー最大手、BOEが開発しています。またSamsung Displayは360度ではなく3つ折り式を開発中など、スマートフォンのディスプレーはこれから様々に変形するものが出てくることになるようです。次世代ディスプレーとしてはローラブルディスプレーもありますが、強度を考えると360度や3つ折り式のほうが先に実用化されるでしょう。

Samsung Displayは3つ折りを推している

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