「アキハバラ」と読んじゃったのもあながちおかしいわけではなかった
三尺坊が修行した栃尾の蔵王堂は、その後2度移転するが、いまの長岡市蔵王に落ち着き明治になって金峰神社となった。かつては、信濃川の川港として栄えた町で長い丘が築かれたことで長岡の地名の由来の地ともされるところである。で、この金峰神社、私が小学校のとき毎日のように日が暮れるまで遊んでいたところなのだ。この縁の下に入ったり、裏にある蔵王堂城跡にあがったり。
栃尾の秋葉神社への遠足に行った私は、秋葉三尺坊や蔵王堂の話を聞いた可能性がある。しかし、それらは小学生の私の頭から風のように抜けていったんだと思う。今回のお話は、たぶん私以外の人には「へー、そうなの。よかったね」くらいの話だと思うのだが、いまやっとそれらのピースが繋がった気分である。
最後に、秋葉山における「秋葉」という言葉の由来について触れておきたいと思う。『火防 秋葉信仰の歴史』でいくつか紹介されていて、個人的には泉のそばにいたカエルの背中に「あきは」の文字が見えたという説がかわいい。それで分かるとおり、遠州秋葉山の秋葉は「あきは」と読む。とくに関東では秋葉神社を「あきば」と発音しているのだが、オリジナルは「あきは」というわけだ。「アキハバラ」という読み方は、明治時代に鉄道省が駅を作るときに間違ってつけちゃったと指摘されるが、「あきは」と読むのも必ずしもおかしいわけではなかった。
遠藤諭(えんどうさとし)
株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。プログラマを経て1985年に株式会社アスキー入社。月刊アスキー編集長、株式会社アスキー取締役などを経て、2013年より現職。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。「AMSCLS」(LHAで全面的に使われている)や「親指ぴゅん」(親指シフトキーボードエミュレーター)などフリーソフトウェアの作者でもある。趣味は、カレーと錯視と文具作り。2018、2019年に日本基礎心理学会の「錯視・錯聴コンテスト」で2年連続入賞。その錯視を利用したアニメーションフローティングペンを作っている。著書に、『計算機屋かく戦えり』(アスキー)、『頭のいい人が変えた10の世界 NHK ITホワイトボックス』(共著、講談社)など。
Twitter:@hortense667
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