革にもソールにもパラブーツのこだわりが
シャンボードは、水に強い「リスレザー」を使用しています。もちろん動物の「リス」ではなくて、フランス語の「lisse」(スムース、の意)。牛革にオイルアップをして仕上げてあり、雨などの水気に強いのがポイントで、独特のツヤ感があります。
革に含まれているオイル分のため、表面に白く色づくようにオイルが浮き出ることがあります。見慣れないと驚くかもしれませんが、ブラッシングすれば大丈夫。しっとりした見た目に戻ります。それだけオイルが含まれているということです。
このオイルがたっぷり含まれている革と、前述のノルウェージャン製法により、シャンボードは雨に強く、実際、小雨の日に履いても水が染み込んでくることはありませんでした。雨用の靴としてシャンボードを履く人さえいると聞きます。これも筆者がこの靴を選んだポイントです。
ちなみに、筆者がノワール(黒)を選んだのは、一番使い勝手がよさそうだから。マットな光沢がありますが、履き込むとツヤが出てくるそうです。
とはいえ、筆者がシャンボードを買うきっかけを与えてくれた貝塚さんは、パラブーツの「ミカエル」というモデルを購入し、色はカフェ(濃茶色)を選んだそうですが、お互いに「やっぱり、違う色のほうがよかったかな……」と言い合っています。もっとも、違う色を買っていても、そう言ったでしょう。買い物とはそういうものです。
もう一つ、パラブーツの特徴として忘れてはならないのが、ラバーソールを自社生産していること。ラテックスの輸入からスタートした歴史を持つブランドだけあり、モデルのタイプごとに違うソールを用意しています。
シャンボードのソールは「パラテックス」というモデル。内容物のコルクとアウトソールとの隙間がハニカム構造になっている、エアクッション入りのヒールです。そのため、革靴とは思えぬクッション性をほこり、濡れた路面などでもすべりにくくなっています。
ちなみに、シャンボードはノルウェージャン製法でアッパーとアウトソールを直接縫い合わせていない……と先ほど説明しました。パラブーツがソールを自社生産していることもあって、シャンボードはソールの交換も可能。ソールを交換しながら、10年、20年と履き続けている人もめずらしくありません。
履くだけでコーディネートを格上げしてくれる
シャンボードの気になる履き心地ですが、靴自体が重いのに、履きやすいのですね。さすがにスニーカーやランニングシューズほどやわらかくはありませんが、しかし、革靴特有の固い感じはあまりない。これはソールのクッション性が高いからだと思います。
アッパーのレザーもガチガチではなく、履いていくと、わりと早く伸びていきます。革靴というと、革が固くて足になじむまでは文字通り“血のにじむような”修行を強いられるものも少なくはありませんが、パラブーツはそうではない。
それでいて、タフに使える。もともと登山靴、ワークブーツを出自の一つに持つブランドということもあるのか、ジーンズやミリタリーパンツにもしっかり合うのです。多少のキズや汚れもアジに見えますし、きちんと磨けばしっかり光る。スニーカーとドレスシューズの中間ぐらいで使えるイメージ、といえばよいでしょうか。
逆にいえば、ビジネスカジュアルにはともかく、ばっちりしたスーツに合わせるには、フォルムがぽってりしすぎかも、と感じる人もいるかもしれません。基本的にはUチップの革靴ですから、ドレスというよりはカジュアル寄りです。
そう思いつつもシャンボードを履きたい……とお考えの人には、緑色のタグがなく、ソールも薄い「ドレスシャンボード」もあるので、そちらを検討してみてもよいかも。
とはいえ、パラブーツの実店舗に行ったとき、薄いブルーのスーツをビシッとタイドアップして、黒のピカピカのシャンボードを履いていた店員さんが実にかっこよかったので、それはそれでいいのかも、と思っています。
革靴といえば落ち着いた大人のもの、というイメージがあるかもしれませんが、シャンボードはむしろ、スニーカーを履くことが多い人に向いているかもしれません。ドレスシューズそのものというデザインではないので、カジュアルな服装に合わせても浮かないですし、それでいて革靴としての品を持ち合わせているので、コーディネート全体を格上げするようにまとめてくれる。履き心地もよいですし。
着るものを選ばず、気品がありながら、どこにでも履いていけるタフさを持ち合わせている。まさに大人の革靴。高い買い物ではありましたが、その価値はありました。大事に履いていこうと思います。
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。一人めし連載「モーダル小嶋のTOKYO男子めし」もよろしくお願い申し上げます。
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