専用アプリ「命名くん」とBDドライブの組み合わせを提案、中堅規模にはタイムスタンプ端末も
アイ・オー、個人事業主/小企業向けの手軽な改正電帳法対応製品
2022年04月28日 07時00分更新
アイ・オー・データ機器は2022年4月27日、1月に施行された改正電子帳簿保存法(改正電帳法)対応のアプリケーション「命名くん」とブルーレイディスクドライブ「BRD-UT16D/M」を発売した。従来から提供しているタイムスタンプ専用端末、および今後提供予定のNAS用アプリケーションとの組み合わせにより、個人事業主から中小企業、中堅企業まで幅広い層に対応する電帳法ソリューションを提供する。
同社社長の濵田尚則氏は「電帳法対応で悩んでいるすべての企業に対して、アイ・オー・データ機器ならではの工夫を凝らした、かゆいところにも手が届く3つのソリューションを提供する。アナログからデジタルへの移行に貢献することで、すべての企業のワークスタイルの変革に寄与する」と述べた。
改正電帳法対応をシンプル、手軽に実現するソリューション
改正電帳法では、電子メールによる授受など電子取引された国税関係書類のデータ(請求書、領収書のPDFファイルなど)について、検索要件を満たすかたちで保存することが義務化要件となっている。ここでは「取引年月日」「取引金額」「取引先」を検索条件として検索できること、日付や金額については範囲を指定して検索できることが求められる。これを手作業で行うためには、ファイル名の変更や索引簿の作成といった新たな事務作業が発生することになる。
また電帳法の運用検討事項としてデータの保存場所を準備する必要があるが、国税関係書類は7年間(損金繰越がある場合には最大10年間)の保存が定められている。PCの内蔵ドライブなどに保存しておくと、PC買い換えの際に移行の手間がかかるほか、誤操作やPCの故障などでファイルが消失してしまうおそれもある。
今回アイ・オー・データ機器が発表したソリューションは、こうした課題を手軽に解決するためのものとなる。
まず、新製品の命名くんは「ファイル名の変更機能」と「ディスクへの書き込み機能」を持つソフトウェアだ。簡単な操作だけで検索要件の記録項目を含むファイル名に変更することができ、ファイル名変更の際に起こりがちな作業者ごとの入力の「ゆれ」も防げるという。
「手作業でファイル名を変更する場合は、PDFファイルを開いて中身(日付や取引先社名)を確認するが、閉じてからでないとファイル名は変更できない。命名くんではプレビュー画面で内容を確認しながらファイル名を変更できる。さらに『アイ・オー・データ機器』と『I・Oデータ機器』といった具合に、作業者ごとに社名表記が違っていると、取引先のすべてのデータが検索できないが、命名くんではこうした課題も解決できる」(同社 事業本部企画開発部 副部長の中村一彦氏)
ディスクへの書き込み機能では、データを定期的または任意のタイミングで書き込む仕組みとなっており、書き込み忘れを防ぐとともに書き込み作業の手間を減らすことができる。
命名くんの販売形態はパッケージ版とダウンロード版の2種類。パッケージ版の3台ライセンスは年額9504円(税込価格、以下同)、10台ライセンスは年額2万7720円。ダウンロード版の1台ライセンスは年額3960円。なお、2023年12月31日までをキャンペーン期間とし、現時点で購入してもライセンス期間のスタートは2024年1月1日からとなる。
もう1つの新製品であるBDドライブ「BRD-UT16D/M」は、BD-R/DVD-RまたはM-DISC(長寿命の特殊なBD-R/DVD-R)への書き込みに対応した製品。データの上書きや消去ができるBD-RE/DVD-RWメディアを認識しないため、誤操作によるデータ損失などを未然に防ぐことができる。
またM-DISCは高温、多湿、太陽光への耐性が強い長期保存用の光ディスクであることから、最長10年の保存が必要な電帳法データのメディアに適するとしている。なお、M-DISC(25GB版)1枚には約24万枚ぶんのPDFファイルが保存できる。BRD-UT16D/Mには、25GBのM-DISCが5枚同梱される。
BRD-UT16D/Mの価格はオープン(直販サイト価格は2万7799円)。命名くんの3台ライセンス(1年間)がバンドルされたパッケージも販売する(同 2万9799円)。
より規模の大きな企業にはNASやタイムスタンプ付与端末との組み合わせも
アイ・オー・データ機器では、上述した命名くんとBDドライブの組み合わせを個人事業主や小規模企業(社員数名程度)向けのソリューションと位置づける一方で、それよりも規模の大きな企業向けのソリューションも発表している。
まず中小規模の企業(社員数名~20名程度)向けには、命名くんで処理した国税関係書類ファイルをNASに集約し、M-DISCやBD-Rへの長期保存を行うというフローを提案している。なお、今後提供予定のNAS用アプリ「NAS用電帳法パッケージ(仮称)」では、データをマルウェアから隔離保存するとともに、命名くんとの連携によって二重処理を防止する機能も提供するという。
また中規模以上の企業(社員20名以上)に対しては、「真実性」の観点からファイルへのタイムスタンプを付与する目的で、上記ソリューションにタイムスタンプ専用端末「APX2-EVID/5P」を組み合わせて提案している。
APX2-EVID/5Pは2015年から販売している製品で、ファイルを特定のフォルダにコピーするだけで、セイコーソリューションズが提供するタイムスタンプサービスを利用した、10年間有効なタイムスタンプが付与される。PDF以外にも、OfficeやCAD、画像などさまざまなファイルに対応する。1TB HDD×2台を搭載しており、価格はオープン(直販サイト価格は67万4080円)で、5年間のタイムスタンプサービス利用料とオンサイト保守サービス料が含まれる。
* * *
濵田氏は、今回の電帳法改正について「デジタル化が進まなかった会計業務において、デジタルへの変革を促すことになる」と指摘。2023年末までの宥恕(ゆうじょ)期間があるものの、2023年10月にはインボイス制度導入も控えており、個人事業主や小規模企業まで「早期のデジタル化への移行が求められている」とした。
「これを機会に、すべての企業のペーパーレス化を進めることを提案し、オフィス環境の見直しや効率化につなげたい。またパートナーとの連携によって、電帳法ソリューションを幅広く提案していきたい」(濵田氏)
また中村氏は、同社のタイムスタンプソリューションに対する注目度が高まっており、販売実績も2021年10~12月の3カ月間で急増し「2021年の年間出荷実績の10倍にも達している」と述べた。ただし、中小企業の多くがこの法改正を知らなかったり、よくわかっていなかったりする現状もあり、販売パートナーも提案や販売の方法を模索している段階であることから、今回のソリューション提案を通じて貢献していきたいと語った。
なお、アイ・オー・データ機器は、創業者の細野昭雄会長によるMBOが成立し、今年7月には非公開企業となる予定だ。
「アイ・オー・データ機器は、この春に生まれ変わる。“部品売り”としての量を追求するビジネスから、製品、サービス、ソフトウェアなどのソリューションビジネスを拡大する方針へと転換する。今回の電帳法に最適化した製品の品揃えは、新たなビジネスへのアプローチであり、この取り組みからもアイ・オー・データ機器の新たな鼓動を感じてほしい」(濵田氏)