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化学反応の遷移状態を「説明可能なAI」で解明する新手法=大阪大学など

2022年04月26日 12時55分更新

文● MIT Technology Review Japan

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大阪大学と九州大学の研究グループは、化学反応の遷移状態にある分子構造を人工知能(AI)を利用して説明する手法を開発した。化学反応の前と後の中間に当たる遷移状態は不安定で、実際のどの分子構造が遷移状態に対応するかを理解することは難しい。遷移状態を正確に理解することで、創薬などの化学反応による物質創成に役立つ可能性がある。

大阪大学と九州大学の研究グループは、化学反応の遷移状態にある分子構造を人工知能(AI)を利用して説明する手法を開発した。化学反応の前と後の中間に当たる遷移状態は不安定で、実際のどの分子構造が遷移状態に対応するかを理解することは難しい。遷移状態を正確に理解することで、創薬などの化学反応による物質創成に役立つ可能性がある。 研究グループはまず、タンパク質の基本要素であるポリペプチド鎖の主鎖二面角に関する異性化反応をコンピューター上でシミュレーションし、ポリペプチド鎖の分子構造を多数収集。その1つひとつの分子構造を出発点として、生成物にどの程度進行するかを確率として定量化した。次に、出発点にある分子構造の座標を入力変数、生成物に進行する確率を出力変数として深層学習で両者の関係を学習させ、反応座標を予測した。さらに、「説明可能なAI(Explainable AI:XAI)」の技術を使い、前述の確率データに対して入力変数である分子構造の座標のうち、どの変数が反応に寄与しているのかを定量化した。その結果、遷移状態において重要な変数を特定し、異性化反応をもたらすメカニズムの理解に成功した。 研究成果は4月21日、「ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジクス(Journal of Chemical Physics)」に掲載された。

(笹田)

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