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営業職の社内外連携効率化、カスタマーサポートのチケット処理、マーケティングのイベント運営

Slack社員の活用術から学ぶ職務ごとの「デジタルHQ」実践【後編】

2022年04月28日 08時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 Slackが2022年4月20日に開催したオンラインイベント「Digital HQ 体験ウェビナー」。同イベントでは、Slack社員自身がそれぞれの職務内容に応じてSlackをどのように活用しているのかを紹介する「バーチャルオフィスツアー」が披露された。

 Slackではコロナ禍の影響で2020年3月からグローバル全社員がリモートワークに移行しているが、Slackを「デジタルHQ(デジタルな働く場所)」として活用することで、生産性を下げることなく働いている。

 マネジメント職、人事担当者の活用を取り上げた前編記事に続いて、今回の後編では営業、カスタマーサポート、マーケティングの各社員が、それぞれの職務における活用ノウハウを紹介した内容を詳しくレポートする。

マネジメント、人事、営業、カスタマーサポート、マーケティングの5名が、それぞれの職務における具体的なSlack活用ノウハウを紹介した

連携アプリを利用して生産性を高め多数のタスクをスムーズに処理する

 3人めに登場したのは、営業を担当するビジネスグロース本部 第五営業部 部長の花房洵也氏だ。

 一昨年の2020年に入社した花房氏は「Slackの営業は、社内外の接点がとにかく多い」と感じたと語る。見込み段階から受注、導入後のカスタマーサクセスに至るまで、営業は多数の関係者と協業している。その分、社内外から幅広い業務も降りかかって来るので、大小さまざまなタスクを常に抱えることになる。

 「これらをいかに効率よく、迅速に対応していけるかが、信頼や成功を勝ち取るうえで重要です」(花房氏)

Slack 事業統括 ビジネスグロース本部 第五営業部 部長の花房洵也氏

 顧客とのやり取りにも、もちろんEメールではなくSlackを利用している。会社どうしをSlackチャンネルでつなぐ「Slackコネクト」が活躍している。

 Slackの場合、メールとは違って「お世話になっております」「よろしくお願いします」といったかしこまった定型文を毎回使う必要がない。話したいときに話したいことだけを、短い文章で直接やり取りできるので、次の打ち合せを待たずに話を進められる。関係者全員をチャンネルに入れてしまえば、余計な“伝言ゲーム”も回避できる。

 Slackでは「Midas」というオリジナルのカスタムアプリを利用し、時間がかかる顧客向け資料の作成を行っているという。これを使うことで、大幅な作業時間の短縮を実現できているそう。その分、商談の質を高めることに多くの時間を費やせるというメリットが生まれている。

Slackコネクトを使い、顧客関係者と直接Slackチャンネルでつながってやり取りする

 商談後の社内報告や「Salesforce Sales Cloud」に保存されている顧客データの更新も、Slackの連携アプリから行える。モバイルアプリでも利用できるので、わざわざオフィスに戻ったり、PCを開くために喫茶店に立ち寄る必要はない。ディスカウントなど営業関連の申請や承認についても、Slackで行っている。そして、承認結果はSales Cloudにも自動的に反映される。

 「何かわからないことがあれば、Slackの中を検索します。例えば、ある業界の事例がないかとか、ある機能の技術的なことについて知りたいといったことがよくあります。Slackを使えば使うほど、ありとあらゆる情報がSlackに蓄積されるので、『知りたい情報はすでにSlackにある』可能性が高いのです。そのため、人に聞くよりもSlackを調べる方が早く答えにたどり着ける場合がたくさんあります」(花房氏)

 もちろん、検索してもわからないことがあれば、質問専用のチャンネルを使って社内に質問する。個別の宛先を指定したメールやDMではなく、オープンなチャンネルで質問することで、そのときに対応可能なメンバーがすぐに対応してくれる。答えを知っている人を捜し回る必要がないわけだ。

 ちなみに質問チャンネルの名前は、例えば「#jp-light-question」のように「何でも気軽に聞いてよい」雰囲気にしておけば、質問する側の心理的ハードルも下がる。さらに、オープンなチャンネルなので質問と回答は他のメンバーも読むことができ、メンバー全体の知識も向上させることができるので「まさに一石二鳥になっている」という。

気軽に質問できるオープンなチャンネルを用意することで、早く答えにたどり着くことができる

リージョンの異なるメンバー同士で働く際はクリップを活用

 4人めは、カスタマーサポートを担当するカスタマーエクスペリエンス部 シニアマネージャーの伊藤真裕氏である。

 伊藤氏はチームメンバーとちょっと会話したいなというときに「ハドルミーティング」機能を活用しているという。ビデオ会議のようにあらかじめ日程調整をする必要がなく、Slack上で「ちょっとハドルで会話できませんか」とお願いするだけで、簡単に会話をスタートできる。

 「ハドルミーティングは、オフィスで隣にいる人に話しかけるようなイメージで相談したり、質問したりできます。パッと集ってサッと解散できるので、私たちのチームでは、『コーヒーブレイクでちょっと会話したいな』というときにも利用しています」(伊藤氏)

Slack カスタマーエクスペリエンス部 シニアマネージャーの伊藤真裕氏

 伊藤氏のチームは、日本だけでなく他のリージョン(地域)にもメンバーがおり、それぞれ働くタイムゾーンが異なる。全員が揃ってオンラインミーティングを開催するのも難しいので、情報の共有には「クリップ」機能を活用している。短い動画を簡単に作ることで、テキストだけでは伝わりにくい部分の補足やスライドを使った発表などを行っているという。メンバーはそれぞれの働く時間帯で見て、コメントやリアクション絵文字を付けることができる。

 Slackではカスタマーサポート業務に「Zendesk」を使っているが、これももちろんSlackと連携させている。例えば、新規のサポートチケットが発行されたときや、数日間対応がなされていないチケットがあるときには、自動的にSlackチャンネルに通知が飛ぶようになっている。

クリップで短い動画を撮影し、口頭で伝えたい大事な内容をシェアするのに活用している

 業務を自動化する「ワークフロービルダー」も活用している。チームメンバー間でお互いのチケットをレビューしたりフィードバックしたりするだけでなく、他のチームとも連携して使っているという。例えば、営業やカスタマーサクセス、サポートなどの部門をまたぐような依頼や確認を行っており、部門間の連携をスムーズにしているそうだ。

 伊藤氏は“おまけ”として、リモートで働くチームメンバーの会話を生み出す方法を紹介した。

 「『donut(ドーナッツ)』という、Slackと連携できるアプリがあります。ちょっと面白いトピックを投稿して、チームの会話を生み出してくれるアプリで、リモートで仕事をするときにはすごく便利です」(伊藤氏)

 伊藤氏のチームでは毎週金曜日の午後3時に、donutがトピックを自動投稿するようにセットしているという。例えば「ジブリの映画といえば?」「あなたの動物占いキャラは何?」といった“お題”をボットが投稿し、それについてメンバーがワイワイと会話を始めるので、チーム内の交流や雑談、気分転換につながる。

チーム内の雑談を生み出すボットも活用している

トピックごとにチャンネルを作成して会話を整理する

 最後にSlack活用術を紹介したのは、マーケティング担当のマーケティング本部 日本韓国リージョン統括 本部長、齋藤梨沙氏だ。

 Slackでは現在、5月17日開催の大型カンファレンス「Slack Frontiers Japan」に向けて、全社一丸で準備に取り組んでいる。プロジェクトは多岐にわたるが、トピックごとにチャンネルを作成し、会話を整理しているという。

 「例えば私はパネルディスカッションの担当ですが、登壇いただくゲストスピーカーの方が決まりました。そこで、私はその方とイベント制作会社の担当者を同じチャンネルにSlackコネクトで招待し、スムーズに講演準備のやりとりを開始することができました」(齋藤氏)

Slack 事業統括 マーケティング本部 日本韓国リージョン統括 本部長の齋藤梨沙氏

 組織が大きくなってくると、他の部署から見たマーケティングチームがブラックボックス化し、「何をやっているのかわからない」状態になってしまいがち。そこでマーケティングチームでは、「よろず相談会」という時間を月に1回設けているという。ハドルミーティングを使い、気軽にマーケティングチームに相談したり、質問できるようにしているのだ。

ハドルミーティングを「よろず相談会」に活用し、気軽に相談できる仕組みを作っている

 「私たちは、一方的な説明で延々と会議の時間を使うことはしません。担当者はあらかじめ共有事項をSlackクリップの短い動画でチャンネルに共有します。参加者が都合のいい時間にそのビデオを確認しておくことで、会議では質疑応答やフィードバック、議論に集中できます」(齋藤氏)

 Slackはチャットだけなく業務プラットフォームとして活用しており、マーケティングチームには社内外から多くの問い合わせが寄せられている。そこで、ワークフロービルダーを使って対応の定型化と標準化を行っているという。

 例えば、広報部門への問い合わせに特化した「PRリクエストチャンネル」を用意し、業務依頼や問い合わせのワークフローを作成している。社外からイベントへの登壇依頼があった場合、話を聞いた営業担当者がこのチャンネルのフォームを開き、内容を入力する。その内容は定型化された状態でチャンネルに自動投稿されるので、それを見た広報担当者がスピーディーにスレッドで回答やアドバイスを行える。

 問い合わせ対応のほか、アシスタントスタッフの業務管理にもSlackを活用している。ワークフロービルダーを使って業務の依頼を行うと、チャンネルにその内容が自動で投稿されるだけではなく、スタッフとマネージャーが使うタスク管理のスプレッドシートにも依頼内容が記載されるようにしている。

 「誰がいつどのような業務依頼を行っているのか、そのタスクの進捗状況はどうなのかを、一目で効率的に管理できるようにしています」(齋藤氏)

マーケティングチームへの依頼をワークフロービルダーで定型化し、担当部門への通知だけでなく管理表記録も自動化

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 当たり前のことかもしれないが、Slack社員のSlack活用度は半端ではなかった。まさにSlackを「デジタル本社(Digital HQ)」として利用し、完全リモートワークの環境下でも問題なく業務を遂行している。ハドルミーティングやクリップ、ワークフロービルダーなど、機能の存在は知っていても具体的にどう活用すればわからないという人は、このセッションがとても参考になったはずだ。

 まずは、このセッションで紹介された使いこなし術から1つ2つ、まねするところから始めてみてはいかがだろうか。

Slackでは「Digital HQ」特設サイトも公開している

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