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デベロッパー with アップル 第1回

アプリ経由でリアルに川を掃除!? 「FLOAT」の取組みがおもしろい

2022年04月21日 12時00分更新

文● 飯島恵里子/ASCII

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「河川ごみ」の存在の周知と現実世界への貢献

 Clean(きれいにする)+Aid(助ける)から作られた造語からなる荒川クリーンエイドは、荒川の河川敷のさまざまな場所でごみを拾いながら、「河川ごみや水質、自然回復などの問題を考えて、豊かな自然を取り戻そうとする活動」をしています。単に清掃活動に終わらず、ごみの種類と数を調査し見える化することで、気づきをもたらす「調べるごみ拾い」を実践しています。

河川ごみとは、河川に存在する人工系のごみ。清掃活動でごみを拾っても、日数が経過するとごみが漂着、堆積します

 ところが、昨今のコロナ禍の影響で2020年度の活動の90%が中止に追い込まれました。そこで生まれたのが、FLOATなのです。

 かきぬま氏いわく「海洋ごみという言葉はメディアに登場する頻度は高いが、河川ごみはあまり知られてない」とのこと。強い啓蒙や勉強臭さを出さないようにし、教育的な要素はQ & Aの部分で紹介するなど、ゲーム内のバランスにも配慮されています。

 先述したように、コロナ禍で多くの人に呼びかけて集団で清掃活動を実施するのが難しくなったため、FLOATは河川に集まることなく清掃活動に参加できる要素が盛り込まれています。それがホーム画面にある「もらえたり、買えたり」のアイコン。ユーザーが動画広告を見ることで「コインのプレゼント」もしくは、「120円(0.99ドル)の課金」または「1220円(9.99ドル)の課金」をすることで機能をアンロックし、スタッフ(NPO法人 荒川クリーンエイド・フォーラムの関係者)が現実の川でごみを回収する仕組みです。

アイコンをタップすることで清掃活動に貢献できる

 FLOATの取り組みは、社会実験の要素もあります。収益は、河川/海洋ごみ問題の解決に向けた実践やアプリ開発を含めた啓発活動に、利用されるとのこと。

 ゲーム上のごみは、拾っても拾っても終わることなく、次から次へと出現します。「なんでこんなにごみが多いの?」とゲームをきっかけに河川ごみに興味を持ったら、タッセル付きの帽子アイコンをタップするとQ & Aにたどり着き、「もらえたり、買えたり」をタップした後に「i」やリンクをタップするとアプリの目的や「FLOATを授業で活用するためのTips集」に移動しするので、河川ごみについてより深く知ることができます。

教育現場でFLOATを活用することを想定し、授業での例題やテーマなどの取り上げ方からiPhoneやiPadでテレビやプロジェクターに表示する方法など、詳しい解説が用意されている

 ユーザーは家や教室など各自の場所にいながら河川ごみの存在を知り、希望すれば活動に参加することができ、アプリのデベロッパー側はユーザーの動画広告視聴や課金から活動資金を捻出、さらに実際の河川からごみを回収する取り組みを「見える化」したFLOATは、両者がWin-Winの関係になるユニークなアプリといえるでしょう。

 

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