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健康寿命を延ばす代謝物質、広大などが線虫で効果確認

2022年04月11日 16時46分更新

文● MIT Technology Review Japan

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広島大学、ハーバード大学、酒類総合研究所、慶應義塾大学、東京大学の研究グループは、アミノ酸の一種であるメチオニンの代謝物S-アデノシルホモシステイン(SAH)を酵母や線虫に与えると、寿命が延びることを明らかにした。

広島大学、ハーバード大学、酒類総合研究所、慶應義塾大学、東京大学の研究グループは、アミノ酸の一種であるメチオニンの代謝物S-アデノシルホモシステイン(SAH)を酵母や線虫に与えると、寿命が延びることを明らかにした。 近年、メチオニンを制限することで生物の寿命を延長することが分かり、マウスを使った研究でもメチオニンを制限することで腫瘍の増殖を抑えられるなど、医学分野への応用が期待されている。ただ、メチオニンは肉類や乳製品などさまざまな食品に多く含まれているため、現実にはメチオニン制限食を持続することは困難と見られ、手軽な代替手段が研究されている。 研究グループはすでに、SAHを単細胞の酵母に与えると寿命が延びることを発見していたが、その仕組みは不明であり、多細胞生物でも同様の効果が得られるかは分からなかった。そこで今回はパン酵母に加えて、線虫C.エレガンスにSAHを与えて解析を試みた。 最初に、SAHの代謝への影響を調べるためメタボローム解析を実施した。その結果、酵母の細胞内メチオニンの量が有意に減少していることに加え、メチオニン制限の長寿効果として明らかになっているTOR複合体の阻害とオートファジーの誘導が起きることが分かった。線虫でも寿命延長やメチオニン制限の効果を確認したほか、エネルギーセンサーであるAMPKの活性化を誘導するなど、健康寿命を延ばす効果が得られることが明らかになった。 研究成果は4月7日、「エイジング・セル(Aging Cell)」誌にオンライン掲載された。今後はマウスでもSAHによる効果を検証するという。

(笹田)

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