サーバー向けの機能を実装
先ほど後回しにしたS1/S2だが、以下のようになっている(どちらもオプション扱い)。
| S1/S2の仕組み | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| S1 | CARD_PWR_STABLE | |||||
| S2 | CARD_CBL_PRES# | |||||
まずCARD_PWR_STABLEだが、これはSense0/1とは逆に、AICから電源に対して「電源供給状態が良好である」ことを通知する。具体的には、電源が供給する電力枠内でAICが正常に稼働していることを通知する仕組みである。ついでCARD_CBL_PRES#だが、こちらもやはりAICから電源に対して通知する配線である。このCARD_CBL_PRES#には以下の2つの目的がある。
- 12VHPWRコネクターが正しく接続された事をAICから電源に通知する
- AICから電源あるいはホスト側のコントローラーに対して、AICが存在することと、Power Budgeting Sense Detect Registerを搭載していることを通知できる。これを利用することで、システムはどのスロットにどんなAICが装着され、どの電源ケーブルが装着されているかを認識できる
先ほど最大出力をダイナミックに変更できる機能があるという話があったが、この規定は複数スロットに消費電力が大きなAICが搭載されているという、デスクトップというよりはサーバー向けの要望に沿ったものだ。
この場合、システムが立ち上がったら電源(とシステム側のコントローラー)は、どのスロットにどんなAICが装着されているかを自動的に認識し、最適な電源出力を行なえるように調整したうえでシステムをスタンバイ→復帰させると、最適な出力になるというわけだ。一般のPCでは使われることはなさそうな機能である。
なおS3/S4の、つまりSense0/1を認識しないAICの場合、利用できるのは最小の150Wに抑えられるという規定もある。これは既存の2×4pinコネクターを2×6pinコネクターに変換するようなアダプターが出てくることを想定してのものと思われる。
ちなみに600W出力が可能な電源の要件はないのだが、普通に考えるとこんな構成になる、という例が下の画像だ。
PCIe AIC Powerは2×3/2×4/2×6のいずれか(もしくは複数の組み合わせ)でPCIeカードに供給される電力、CPU Continuous PowerはCPU(とおそらくメモリーサブシステムなどを含む、要するにマザーボード)に供給する電力、Rest of PlatformはSSDやファン、その他の周辺機器への電力の合計、PSU Rated PSU Sizeというのは俗に言われる電源容量である。12VHPWRで600Wを供給する電源は、1200W以上になるだろう、というのが1つの目安となっているわけだ。
ここまでの話はATX 3.0 Rev 2.0をベースに説明してきたが、ATX12VO 2.0についてもまったく同じである。つまり、既存のATX12VOに、この12VHPWRの規定を追加したのがATX12VO 2.0である。
今のところATX12VO 2.0に対応したビデオカードを含むPCIeの拡張カードは存在しないが、インテルはAlder LakeですでにPCIe 5.0対応を果たしているし、AMDもZen 4世代でPCIe 5.0への対応を明らかにしているので、AMD/NVIDIAともに次世代のハイエンド製品はPCIe 5.0への対応と併せて12VHPWRコネクターを採用してくるかもしれない。
むしろ問題はATX12VOの普及の遅さであるが、今回インテルはMSIのCreator P100AとMPG Trident ASがATX12VOを採用したことを明らかにしている(ATX12VO 2.0ではない)。
ただ逆にいうとこれだけという話であって、かつてのBTXみたいな雰囲気になっているのだが、果たしてこれに続くベンダーはどの程度出てくるのだろうか?

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