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30倍以上伸びるゲルを東大が開発、人工腱や靱帯の材料に

2022年04月09日 12時11分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学の研究チームは、一般的なゲルに比べて30倍以上伸ばしても破断せず、繰り返し負荷を加えても常に一定の強靱性を示すゲルを開発した。ゲルは人体の腱や靱帯を補助、置換できる材料として有望視されているが、強度が不足していた。

東京大学の研究チームは、一般的なゲルに比べて30倍以上伸ばしても破断せず、繰り返し負荷を加えても常に一定の強靱性を示すゲルを開発した。ゲルは人体の腱や靱帯を補助、置換できる材料として有望視されているが、強度が不足していた。 ゲルは、長いひも状の高分子鎖の間に橋を架ける架橋反応で作製できる3次元の網目状高分子が水を保持した物質。2本の高分子鎖を架橋すると、4方向に枝分かれした分岐点ができる。高分子材料の網目構造は4分岐が一般的であり、他の分岐数を検討した研究例は少なかった。 今回の研究では、4分岐の網目から1つの分岐を取り去り、3分岐に簡素化した3分岐構造でゲルを作製。このゲルは直感に反して、最大30倍以上伸ばしても破断しない延伸性と強靭性を持つことが分かった。4分岐ゲルや割合の異なる3分岐ゲルなど複数のゲルと比較したところ、3分岐の割合が増えると、それに合わせて延伸性が向上することが判明。3分岐ゲルは理論限界の90%まで延伸できることも分かった。さらに、3分岐ゲルの網目構造を大型放射光施設で小角・広角X線散乱測定で観察したところ、力が集中して強く伸ばされた部位が結晶化によって硬化し、クラックの発生が抑制される伸長誘起結晶化という現象が発生していることも明らかになった。 研究成果は4月6日、サイエンス・アドバンシス(Science Advances)誌にオンライン掲載された。ゲルだけでなくゴムなどのほかの高分子材料を3分岐化することで強靱化できる可能性もあるという。

(笹田)

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