もう一人のパスファインダーが、フローレンス・ナイチンゲール氏である。
ここではデータ活用という観点から説明してみせた。
「ナイチンゲールは、データオタクだった。1854年のクリミア戦争で、戦地の病院に赴いたナイチンゲールは、2000人の病人と負傷者が長椅子に寝かされていたのを見て驚いた。コレラや壊疽(えそ)、シラミがまん延しており、兵士は同じスポンジを使って、80日に一度しか身体を洗っていなかった。戦場よりも病院で死ぬ兵士の方が多かった」とし、「当時は細菌に対する理解が進んでいなかったため、その理由がわかっていなかった。ナイチンゲールは、衛生と病気の関連性を直感的に理解し、軍や政府の理解を得るために詳細なデータを集め、ナイチンゲールローズダイアグラムとして図式化。病院では傷で死ぬ兵士の10倍の兵士が病気で死んでいることを示し、このままでは伝染病によって、英国軍は10カ月以内に全滅すると予測した。データに基づいた根気強い訴えにより、軍は新たな衛生基準を設け、多くの医療物資を送り、病院の空気と下水を清潔に保ち、6カ月後には死亡率が90%以上も低下した。何1000人もの命が救われた。ナインゲールは他の人が見ていないものを見出すことができるパスファインダーである。そして、データや統計を使って、人命を救った人物でもある」と述べた。
その上で、「いまや、私たちは計り知れない量のデータを扱い、その量は爆発的に増加している。2024年までの3年間で生成されるデータ量は、過去30年間に作られたすべてのデータ量を超えると言われている。しかも、データは多様化している。私たちもナイチンゲールのように、データのなかから、パターンや洞察を見つけだせれば、データは問題解決の考え方に革命をもたらし、あらゆる分野、あらゆるビジネス、あらゆる人の生活に変革をもたらす。ナイチンゲールはデータをメモに取っていたが、現代のデータ戦略は、動的なデータを活用しなくてはならない。データのジャーニーのそれぞれにおいて最適なツールを活用する必要がある。そこにAWSは貢献できる」などと述べた。
こうしたエピソードに触れながら、セリプスキーCEOは、「多くの企業がクラウド移行を決めたが、それはコストの節約やセキュリティ強化、パフォーマンスの確保のためである。だが、もっと大きななにかがあるはずだ。それはアジリティである。好奇心を持ち、スピーディに実験して、失敗することが大切である。そして、組織の中心にデータを据えることも大切である。AWSが提供するのは、真のトランスフォーメーションのための機会である。イノベーションを迅速に、簡単に、優れたやり方で実現できる。クラウドは、世界で最も緊急性が高い問題解決にも役立つ。クラウドはあらゆるものを再考する機会でもある。AWSのパワーをより多くの人たちに使ってもらいたい。そのために、今後もさらに多くのサービスを構築していく予定である。それぞれの業界やコミュニティで新たな道を切り拓き、パスファインダーになることを願っている」と述べた。
AWS自らがパスファインダーであり、それを活用いる人たちもパスファインダーになれるというのがセリプスキーCEOの見解だ。2020年代のルイセッティ氏やナイチンゲール氏は、クラウドとデータから生まれるのかもしれない。
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