このページの本文へ

火山大国「日本」のエネルギー問題を救えるか!?

クリーンエネルギーで再注目の北海道電力「森地熱発電所」を独占取材

2022年01月10日 10時00分更新

文● 藤山哲人 編集●北村/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 地熱発電の基本がわかったところで、実際の「地熱発電所」はどうなっているのか?を知るために北海道電力の森地熱発電所を取材した。

現在コロナ禍のため一般見学は中止されているが、特別に一部立ち入りを制限した上で取材許可をいただいた北海道電力の森地熱発電所

北海道電力「森地熱発電所」に見る地熱発電のしくみ

 函館から汽車に揺られて1時間ほど。大沼国定公園の駒ケ岳を望む「いかめし」で有名な森駅に到着。そこから車で20分ほど山に入った場所に北海道電力 森地熱発電所がある。濁川温泉としても有名で江戸時代から温泉が自噴してそこらじゅうから湯気が立ち上っていたという。それもそのはず、周りを見ると低い丘に囲まれた直径2km程度の盆地となっていて、ここは1万数千年ほど前に噴火した火口が堆積物で平地になったカルデラなのだ。

写真奥側が太平洋。中央が濁川の盆地で1万数千年前に噴火したあと。高さのほとんど同じ山に囲まれたカルデラになっているのがよく分かる

左の山の中腹に見えるのが発電所。地下から蒸気を取り出している場所はずっと右の離れた場所にある

近くには温泉旅館が5件ほどあり、個人所有の温泉も多数あるという

 駒ケ岳は国定公園のため地熱発電所を建設できなかったが、森地熱発電所は開発規制が厳しい国定公園の外にあたり、民家と旅館がチラホラと見えるだけでほかは畑が広がっている。温泉は今でも湧き出しており、旅館の温泉以外にも個人所有の温泉が多数存在するほどだ。

 つまり森地熱発電所は、濁川温泉が1万数千年前に噴火した熱源を利用しているというのだ。平時は発電所内の見学も可能だったが現在はコロナ禍にともない見学不可。しかし特別に一部立ち入りを制限した上で取材の許可を得た。さっそく地中から蒸気を取り出し、発電するまで一連の流れと施設を見ていこう。

【生産井】

地中から噴出する蒸気は熱水も含めてここから取り出す

実際に蒸気を求めて掘削するときのやぐら

地表から最大3kmほど掘削している

○の部分が生産井、□の部分が発電所。生産井のすぐ左側に先に紹介した温泉旅館がある

【セパレータ(汽水分離器)】

地下から噴出した蒸気には、熱水も含まれるためセパレータで熱水を含まない蒸気と熱水を分離する(右側3本の筒)

セパレータに地下から噴出した蒸気を通すと、高圧蒸気と熱水が分離され高圧蒸気だけが蒸気タービンに送られる

森地熱発電所は、ダブルフラッシュ型なのでセパレータの後段に「フラッシャ」と呼ばれる減圧器を設けて、セパレータで分離した高温の熱水から低圧の蒸気を取り出す。低圧蒸気は蒸気タービンに送られる。減圧のしくみは殺虫スプレーと同じ。高圧の缶の中でタプタプと音がする液体だが、スプレーすると急減圧して気化する原理を使っている

【還元井】

シングルフラッシュの場合はセパレータ下部たまった熱水、ダブルフラッシュの場合はフラッシャで低圧蒸気を取り出した後の熱水を再び地中に還元する。こうして地中の地下水が枯渇しないように循環させている

【1次・2次蒸気パイプ】

セパレータで分離した高圧蒸気(1次)と、フラッシャで分離した低圧蒸気(2次)を発電所のタービンに送る配管

森地熱発電所は、発電所まで1.5kmほど敷設されている

【発電用タービン】

タービン建屋内に引き込まれたパイプ内の蒸気でタービンを回し、直結されている発電機を回転させる

【冷却塔】

右側のタービン建屋から延びる配管が冷却塔上部に接続されている。冷却塔の上から温水を落し空気で冷却する

空気取り入れ口。金属を腐食させる成分が含まれていても大丈夫なように、冷却用の外気が入り込む空気取り入れ口は木(マツ)でできている

生産井は高温の蒸気なのでもくもくと水蒸気が出ていたが、冷却塔の温水はエネルギーがなくなり冷めているので、水蒸気は少ない

 冷却塔で冷やされた温水は、復水器の冷却水として、また還元井から地中へ戻す水として循環している。

【変圧器】

発電した電力は変圧器を通して高圧送電線に送られる

 ここまで見てきた個々の施設だが、森地熱発電所全体のシステムを見ると次のように構成されている。

森地熱発電所の全体図

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

ASCII.jpメール アキバマガジン

クルマ情報byASCII

ピックアップ