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実現可能性検討の段階から支援、顧客へのノウハウやスキル移転も「Oracle Cloud Lift Services」

約半年で50社が利用、オラクルがクラウド移行支援サービスを説明

2021年12月22日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本オラクルは2021年12月16日、今年7月から提供している「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」へのワークロード移行支援サービス「Oracle Cloud Lift Services」について、日本における展開内容や国内顧客における最新動向、パートナー協業などの記者説明会を開催した。

顧客ワークロードのOCI移行支援サービス「Oracle Cloud Lift Services」の概要

日本オラクル 常務執行役員 クラウド・エンジニアリング統括の竹爪慎治氏、ビデオでコメントを寄せた伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)取締役 兼 専務執行役員の江田尚氏

日本独自のサービス拡充、「契約前」段階から顧客のクラウド移行を支援

 Oracle Cloud Lift Services(OCLS)は、OCIを初めて利用する顧客に対する支援、クラウド利用開始までの期間短縮とリスク低減を通じて、OCIを利用する顧客の満足度向上を図るプログラム。無償で提供されており、日本国内では現在までに「50社、60プロジェクト」(竹爪氏)での利用実績があるという。

 日本オラクルの竹爪慎治氏は「単に最新のクラウドサービスを提供するだけではなく、クラウド移行の専門家が一緒に移行を支援させていただくもの」だと説明する。特に日本市場においては、OCIのノウハウやスキルを持つ顧客エンジニア、パートナーエンジニアの数がまだ少ないという課題があり、OCLSを通じてノウハウやスキルのトランスファーを行うことも重要視していると語る。

オラクルが「Oracle Cloud Lift Services(OCLS)」を提供する目的

 日本市場における顧客の現状に合わせ、日本オラクルではOCLSのサービスを独自に拡張しているほか、既存システムのモダナイゼーションという観点で顧客ニーズの強い主要ワークロードにフォーカスして提供している。

 「OCLSは、グローバルでは契約後に提供するサービスだが、日本ではスキルトランスファーの重要性も考えて、ケーススタディ、フィジビリティスタディ支援といった契約前のフェーズまで拡張して提供している。またワークロードは『Exadata Cloud Service』『Oracle Cloud VMware Solution』『HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)』の3つを中心としている。さらに日本では既存システムをSIパートナーが構築/運用しているケースも多いことから、パートナー協業も積極的に進めている」(竹爪氏)

 提供サービスの中でも利用実績の多いフィジビリティスタディ支援、実機検証(PoC)支援について、具体的に内容を説明した。

 クラウド化の実現可能性を判断するフィジビリティスタディ支援は、検討段階における不安や懸念を払拭し、検討時間の短縮や検討のための人的リソース不足解消に貢献するサービス。標準フレームワークに基づいた現行システムやクラウド要件についてのヒアリング、情報整理や目標設定、ロードマップ策定といった1カ月間程度のワークショップを経て、オラクルから成果物を提供する。

フィジビリティスタディ支援サービスの概要と成果物の例

 机上の議論で確認できない項目や内容については、クラウドの実機検証(PoC)支援を行う。このPoC支援でも、オラクルがテスト環境の構築までを行う基本モデルだけでなく、顧客の人的リソースが不足している場合向けのフル支援モデル、その反対に顧客側でPoC環境構築を行うのを支援するQA支援モデルなど、顧客の人的リソースの充足度に応じて柔軟に対応しているという。

実機検証(PoC)支援サービスの概要と成果物の例

注力3領域の顧客事例:損保ジャパン、戸田建設、日産自動車

 日本オラクルとして注力している3つのワークロード「Exadata Cloud Service」「Oracle Cloud VMware Solution」「HPC」については、それぞれ具体的な顧客事例が紹介された。

 損害保険ジャパン(損保ジャパン)では、これまで利用してきたExadata Cloud ServiceのDR構成化(東京+大阪リージョン)を検討するにあたって、自社エンジニアによる構成検証の時間が取れないという課題をかかえていた。そこで、オラクルではOCLSを通じて実機検証(PoC)のフル支援モデルを提供し、PoCを支援。その結果、短期間での実現可能性検証につながったという。

損保ジャパンにおけるOCLSの活用事例

 OCIの新規顧客である戸田建設に対しては、オンプレミスの既存VMware環境をOracle Cloud VMware Solutionsへの移行検討を支援した。具体的にはフィジビリティスタディ支援、および実機検証支援を行い、戸田建設自身で構築、運用ができるまでのスキルトランスファーも実施したという。

 「OCI全般のクラウドナレッジ、スキルトランスファーを行い、支援を通じて戸田建設様自身で移行や運用を内製化できるレベルにまで達することができた。オラクルがOCLSを日本市場に展開している本来の目的を、早期に実現いただいた事例」(竹爪氏)

 日産自動車については、製品設計やテスト、シミュレーションなどに利用するHPCワークロードのOCI移行支援事例を紹介した。OCLSを通じて実機検証支援、本番環境の立ち上げ支援を提供し、高度な要件が求められる案件だったために米国オラクルの開発もまじえた共同の支援体制を構築した。

戸田建設、日産自動車におけるOCLSの活用事例

「日本市場においてはパートナーとの協業も必須」

 前述したとおり、日本市場におけるOCLSの展開にはSIパートナーの存在も欠かせない。竹爪氏は、すでにOCLSを活用しているパートナー、賛同コメントを寄せているパートナーを紹介した。全体ではすでに17社からの賛同を得ているという。

 「既存システムのモダナイズ、データ活用によるDXの推進には『内製』『自社主導』が重要になってくる。ただし、現状で企業システムをいちばんよく理解しているのは誰か、その状況をふまえた移行計画の策定をできるのは誰かと考えると、やはりパートナー協業は必須だと考えている。日本の顧客の状況をふまえたOCLSの提供という側面で、新しいかたちの協業モデルとしてパートナーとの協業を積極的に推進していく」(竹爪氏)

OCLSへの賛同パートナー一覧

 発表会では、すでにOCLSの活用を始めている伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の江田尚氏のビデオコメントが紹介された。CTCの顧客においてもクラウド移行が加速しているが、その中で課題に直面するケースも多々あり、OCLSを通じてオラクルのエンジニアが専門知識を提供することで顧客のクラウド移行も加速していくだろうと語る。

 「OCLSの対象であるOracle Cloud VMware Solutionsは当社が注目しているサービスであり、日本で初めて検証を行った。今後、CTCが検証で得たナレッジとOCLSを組み合わせ、オラクルとも協業することで顧客に安心安全なクラウド移行を支援していく」(CTC 江田氏)

 OCLSの今後についてオラクル竹爪氏は、現状のOCLSは最初のステップである「システムのモダナイズ」を中心としているが、その次のステップとして「データの活用と付加価値の創出」、さらに「データドリブンなDXの実現」も支援していきたいと語った。具体的には、AIを活用したより高度なデータ活用の支援、新規サービス開発を迅速化するクラウドネイティブアプリケーション開発の支援といったものにサービスを拡張していきたいと語った。

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