日立の強みは、100年を超えるモノづくりの歴史のなかで培ってきたOT(制御・運用技術)と、50年以上にわたって蓄積してきたIT(情報技術)である。そこに、1910年に製品化した創業製品の5馬力モーターの製造を源流としたプロダクトをつくる力が加わり、「OT×IT×プロダクト」という日立ならではの掛け算が成立する。ここに顧客やバートナーとの協創を組み合わせて、課題を見つけ、Lumadaによって課題を解決するのが、社会イノベーション事業の勝利の方程式だ。
小島社長兼COOは、「2021年は、エンゼルスの大谷翔平選手の活躍に大きなインパクトを受けた。二刀流というありえないことをやってのけた」と語りながら、「日立は、OTとITの二刀流で行きたい。日立のやり方も、最初はステークホルダーから理解してもらえないかもしれないが、大谷選手の二刀流が認められたように、日立のやり方も理解される時代がくるだろう。それに向けたコミュニケーションを行っていきたい」とする。
社会イノベーション事業も、10年前には、一企業が打ち出す社会課題の解決という方法面に対して、違和感があったのも事実だ。だが、それが変化し、いまでは、SDGsに代表されるように、世界中の企業が、世界中の課題解決に向き合っている。
「社会課題の解決のために、企業は必要な能力を備え、それぞれが解決する課題に立ち向かう時代に入ってきた」と小島社長兼CEOがいうように、社会イノベーション事業の方向性は、世界中の企業が目指す方向ともいえる。
日立は、大胆な構造改革を推進してきたが、依然として総合力を発揮する企業体質を維持している。ソニーやパナソニックが持ち株会社制な移行したり、東芝が分社化を図ったりという動きとは一線を画している。これは、日立流の社会イノベーション事業を推進するための体制づくりといってもいい。
「日立は、社会課題を解決することを目指す会社である。そのために必要な能力をしっかりと揃えていく。いまの体制が、社会課題を解決するための基本的なケイパビリティである」とし、「最近では、企業は専業化しないと価値が上がらないといわれるが、それは思い込みである。大谷選手の二刀流を見ると、『コングロマリッドはありだ』と思わないこともない」と語る。
そして、大谷選手には、こんなインパクトも受けたという。
「ここで限界だとか、やれることはここまでだということを決めずに、もっと高い可能性に挑戦する姿勢を感じた。このマインドセットは、日本人が失いかけているもののひとつではないか」。
続けてこう語る。
「日本は、ほかの地域に比べて、経済成長をしないという先入観がある。それが、日本の停滞感にもつながっている。もっと成長マインドを持たなくてはならない。たとえば、カーボンニュートラルは、いいきっかけになる。自分の身に迫っている課題を解決しなくてはならない取り組みであり、多くの人が自分事として捉えることができるからだ」
日本には、みんなで成長していくという「成長マインド」づくりが必要であると小島社長兼COOは提言する。それは、大谷選手の二刀流から受けたインパクトでもある。日立の成長に向けた次の10年は、大谷選手との成長の競争になるのかもしれない。
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