名作ムーブの最新バージョン!
ゼニス/クロノマスター スポーツ
ゼニスの「クロノマスター スポーツ」は同社の人気コレクション「クロノマスター」に加わった、ネーミング通りスポーティな新作。これまで「クロノマスター」の中核的モデルといえば「クロノマスター エル・プリメロ オープン」という、文字盤の一部をカットして内部機構を審美的に露出させた、いくぶんクラシカルな意匠のモデルだった。そこにアクティブな風貌の“スポーツ”が加わり、俄然選択肢が広がった格好だ。
このモデルで“スポーティ”たるイメージを担っているのが、新採用されたセラミック製のベゼル。セラミックは表面硬度が高いため傷がつきにくく、独特の艶やかな高級感が経年劣化することなくいつまでもずっと続く。近年の高級スポーツ系モデルがこぞって採用する、特徴的な仕様だ。さらに、文字盤に配されたカラーの異なる3つのインダイヤルがシンプルかつ王道的なクロノグラフ・フェイスに瀟洒な個性を与える。“スポーツ”と銘打ってはいるが、たとえばスーツの袖口からチラッと見えるだけでフワッとエレガントなオーラがこぼれるような、格調の高さもポイントだ。
しかしながらこのモデルで注目すべきポイントは、何といってもムーブメント、である。同社のアイデンティティともいえる名作ムーブメント「エル・プリメロ」の最新版をレギュラー展開の機種としては初めて搭載しているのだ。
エル・プリメロはゼニスが1969年に発表した、毎時3万6000振動を誇る世界初の自動巻きクロノグラフ・ムーブメントだ。“毎時3万6000振動”とはムーブメントの中枢で高速の往復回転運動をし、時計の精度を一定に保つ“エスケープメント”と呼ばれる部分の1時間における振動数で、一般的なモデルの数値(2万1600〜2万8800程度)よりはるかに高い。時計のエスケープメントは、(理論上は)高速になるほど噛み合って動く歯車の動きの精度が安定し、結果、表示する時間も正確になる。イメージ的には回転するこまが低速だと不安定になり、高速になるほど安定するのと似た感じだ。
このエル・プリメロは当時の時計シーンに激震を与え、一躍ゼニス社のアイコンとなった。それから50年以上。特定の時計ではなく「エル・プリメロ」というムーブメント単体での知名度を上げ、他のブランドにも多くの影響を与えたのは希少な例といっていいだろう。
このモデルに搭載される最新版の「エル・プリメロ3600」は1/10秒単位で積算経過時間の計測が可能な高精度のクロノグラフ機構を搭載し、特殊なメカニズムを採用しているため、ダイヤル中央に配されたクロノグラフ秒針は通常のクロノグラフが60秒で1周するのに対し、わずか10秒で1周する。計測が始まるやいなや高速で文字盤を駆け回るかのような秒針の動きは目にも愉しいのだ。
最新作は、クロノグラフのパイオニアとして名を馳せるゼニスにふさわしい、会心の仕上がりとなっている。長年をかけて円熟したハイビートの魅力は、ハマったら容易に抜け出せない。
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