インフォマティカ導入で多数のデータソースによる“サイロ化”課題の解消を
DXの「データの壁」―インフォマティカとNTT Comが示す解決への道
2021年12月06日 07時00分更新
あらゆるビジネスにおいてデータ活用が求められる一方で、その前段階にはデータの品質管理や統合といった面倒な作業や処理が発生する。また日本企業が管理するデータソースは、世界平均よりも多いという状況も指摘されている。こうした課題に対するテクノロジーソリューションを提供するのがインフォマティカ(Informatica)だ。
2021年12月1日、インフォマティカ・ジャパンが最新の事業戦略を説明した。同社のパートナーであるNTTコミュニケーションズ(NTT Com)も登場し、同社自身におけるDXとデータ活用の取り組みの進捗、さらにインフォマティカの技術をベースとしたソリューションを紹介した。
再上場、「Intelligent Data Management Cloud(IDMC)」発表などの2021年
1993年にETLツールベンダーとしてスタートしたインフォマティカは、マスターデータ管理(MDM)、データ統合、メタデータ管理などのソリューションを提供する。同社は2015年に株式非公開化し、クラウド中心のソリューション構築とサブスクリプションベースのビジネスモデルへの移行を進めた。その移行が進んだことを受けて、今年(2021年)秋に再上場を果たしている。
2020年のARR(年間経常収益)は115億ドル以上、そのうちサブスクリプションビジネスのARRは6億ドルを占めるという。
インフォマティカにとって2021年の重要な動きは再上場だけではない。春には、今後の同社主力製品と位置付けられるクラウドネイティブな製品「Intelligent Data Management Cloud(IDMC)」を発表している。
インフォマティカ・ジャパンで代表取締役社長を務める吉田浩生氏は、IDMCについて「データクラウド、アプリケーションクラウドといったすべてのクラウドを結合できる総合的なプラットフォーム」だと説明する。
吉田氏は、同社が6月に行ったグローバル調査「Global Chief Data Officer Engagement Survey」から浮き彫りになった、データ管理に関する状況を紹介した。同調査によると、日本を含むアジア太平洋地域の企業の75%がすでにDXに着手しており、世界のGDPの65%が2022年までにデジタル化されるという予測されている。日本にフォーカスすると、42%の企業が1000以上のデータソースを管理しており(世界平均は30%)、81%がマルチクラウドを利用している。
DX推進を阻むのは「データの壁」「システムの壁」「組織の壁」
こうした現状をふまえて、インフォマティカ・ジャパンでは2022年の注力ポイントを「IDMC」「パートナー」「顧客」の3点に定めている。そのパートナーの1社がNTTコミュニケーションズだ。
NTTコミュニケーションズではパートナーとしてだけでなく、自社のDX推進に向けた取り組みの一部でも、インフォマティカのMDMなどを利用してデータ活用環境を整備している。
NTTコミュニケーションズの執行役員 デジタル改革推進部長 浦宗陽氏は、DX推進で直面した壁として「データの壁」「システムの壁」「組織の壁」の3つを挙げる。
特に「データの壁」については、データドリブンなビジネスに向けたデータの民主化を実現するうえで、「そこに至るまでに必要なデータが集まらないという原始的な課題があった」と語る。さらにはデータのクレンジングが必要だったり、データのオーナーがわからないといった課題もあったという。
そこで、営業管理システムや契約管理システムなど社内に散在するデータのオリジンシステムからデータレイクに収集・蓄積したデータを、データウェアハウスに格納し、データマート向けにカタログ化する前処理(加工、コード整備・変換)において、インフォマティカのMDMを導入した。「インフォマティカのMDMは柔軟でスケーラブルな対応が可能なので、まずは一部で導入し、順次拡大していくことを進めている」(浦氏)。
「システムの壁」では、これまで業務の個別の要件に合わせてスクラッチ開発したシステムが多く、業務を簡素化するにあたって障害となっていた。そこで“Fit to Standard”方式のシステムアーキテクチャを原則とし、できるだけカスタマイズしない方針に変えた。残る既存のシステムに対しては、インフォマティカのデータ連携ハブ「Data Integration Hub」を据え、連携できるようにしているという。
社内で培ったインフォマティカによるデータ管理のノウハウを生かしてNTTコミュニケーションズが構築したのが、データ利活用プラットフォーム「Smart Data Platform(SDPF)」である。ネットワークやストレージ、IaaSといったコンポーネントで構成されるプラットフォームに、インフォマティカのデータ管理/統合製品が組み入れられている。2019年のサービス立ち上げ以後、顧客も増えており、現在も機能強化を続けている。
浦氏は「データのサイロ化などの課題は、どんな企業でも共通している」と述べ、SDPFでは収集、蓄積、管理、分析と、データ利活用に必要な機能とインフラを設定で提供するプラットフォームを構築したと紹介した。モジュラー構成であり、顧客のニーズに応じて必要な機能だけを選択することもできる。
浦氏は自社の経験から、DXにおいては小さなプロジェクトでの成功事例を重ねてスケールアップし、全社に拡大していくことが重要だと述べる。「データドリブンでDXを実現するためには、単に仕組みを導入して終わりではない。長い道のりで、段階を踏んでいくことが必要」と浦氏、データ活用のための基盤だけでなく、人材の育成なども必要と続ける。「手間がかかる部分も多く自社でやることは難しい」(浦氏)。そこで、SDPFの提供を通じて顧客のデータ基盤の構築とその先のDXを支援していきたい、と語った。
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